第3話
西部エデンについた。
サラグリア王国付近には小さな村や街が点在している。
的が多いと思いきや、旅に不慣れなミルグレンにとってこれは長時間疲弊しないために、都合は良かった。
王家の姫として与えられ、それまであまり顧みもしなかった、かさばらない装飾品を持って来たため、それを正しくは彼女には鑑定出来なかったものの、相当な時を普通に暮らして行くだけの蓄えにはなるということは分かっていた。
旅の道中人と必要以上接触を持たず、極力口数少なく旅を続けた結果その装飾品は追い剥ぎもされず残っている。
眠る時は教会を使った。
ミルグレンの周囲には幼い頃から教会や修道院関係の人間が多かったため、旅の際に旅人が教会を頼れることを、彼女はちゃんと知っていたのである。
金も結局、宝石を三つほど、神父に鑑定してもらった。
自分の存在の為に争いが起きないようにと国を出て、国を出た後は各地を旅して人助けをしていると、サダルメリク・オーシェの話を話せる範囲でしたら、それは立派な人がいるものだと神父が感心して、ぜひ彼の力になってあげなさいと助言をくれたのだ。
だが彼は若い娘が立派に一人旅をしているものだと感心しても、その娘がただ一つの恋のために、親と国を捨てた不孝者だということは知らないため、ミルグレンはどんなに有り難い言葉をもらっても、居心地が悪いままだった。
……国にいる時は人の親切を、いつも大らかに当然のように受け取っていた。
でも国を出てから、自分は人を警戒し拒絶するようになっていると彼女は思った。
自分にもそういう一面があるんだなと月を見上げながら考える。
メリクも……国を飛び出した当初は、こんな気持ちだったのだろうか?
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