第7章 — 藤宮……どこにいるの
「同じ時間ね」って言ってた。
でも今日はいない。
二回もひどい返事をしたっけ。
部屋はぐちゃぐちゃ。
「ぎゅうぎゅう」って言われた。
洗面所の鏡を見る。
見ろよ、陸翔。
誰もお前なんて欲しがらない。
また期待しただけ、無駄だった。
ブラシで髪をとかす。
意味ない。
床に投げる。
どうして信じたんだろう。
床に座り込む。
父さんは僕を嫌っていた。
一番の友達にも憎まれた。
母さんは仕事の後、家に戻らない。
本当に分かってくれると思った?
ばかだ。
ばかだ。
ばかだ。
腕で膝をぎゅっと抱える。
また期待した罰だ。
部屋のほうから鈍い音。
彼女か?
部屋に走る。
床に卵が落ちている。
「モリヤぁ、オレたちのこと忘れてた?」
クソ。
山田たち。
よくも忘れてた。
毎週土曜の11:30に来る。
窓を閉めに走る。
べちゃっ。
「アハハ、山田、もろかかった!」
「水鉄砲も持ってこーぜ!」
最低。
あわてて顔をぬぐう。
両手を窓にかける。
羽音。
聞こえるだけじゃない、見える。
「目標確認。
隊長、コンビニ強盗発見。」
藤宮だ!
あいつらの上で回ってる。
「なんだよ、これ」
山田が見上げる。
一瞬飲み込めていない。
「確認した!一人は銃を持ち民間人を脅している。
直進して確保!」
みんな止まる。
本物かどうかわからない顔。
「なぁ山田、本当に…本物かも?
オレらただのガキだぞ、強盗じゃねえ。」
「でも銃を民間人に向けてるよね」
「おもちゃだって。水が——」
遠くでサイレン。
だんだん大きくなる。
近づいている。
あいつら、猛ダッシュで逃げた。
「行け行け!
森谷のクソ野郎。」
ドローンはみんなの背中を見送って、
その後こっちに来る。
汚れた顔を見ている。
「……クズ。
見て、こんなにひどい。
ごめん、陸翔。想像してなかった…」
袖で顔をこする。
「だめ、それだと余計悪化する。
卵は残るよ。
洗面所、行こ。」
窓を閉める。
ドアのことを考える。
文字のことも。
「藤宮、ごめん。
自分でやる。
今日は家が散らかってる。
見せたら、母さんに怒られる。」
何か隠してると分かってるはずだ。
でも彼女は追求しない。
「わかった。ここで待つ。」
ドアを少しだけ開けて出る。すぐ閉める。
ドローンはドアを開けられない。
「出ていけ」がでっかく見える。
飲み込まれるみたい。
洗面所へ走る。
顔を洗う。
水と涙が混ざる。
あの子は戻ってきて、みんなを追い返した。
いろんなことが頭に浮かぶ。
僕はずっとやられっぱなしで、壮真も一緒だった。
本気で守ったことなんてない。
耐えるだけ。
母さんが置いていった中から、きれいなTシャツを取る。
このシミ、母さんにどう思われるだろう。
本当に、友だちになれるのかな。
部屋へ戻る途中、
「出ていけ」。
あの言葉を怒りで書いたけれど、今は違って見える。
ドアノブに手をかける。
ぎゅっと握る。
新しい何かが始まる気がした。
開ければ、きっと——
…たぶん。
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