アル＝セリック語構文論序説

第一章：アル＝セリック語の言語分類と起源

アル＝セリック語とは、既存の言語分類法に収まらない**魂象動言語（Animosemiotic Operative Language）**である。

この語の根幹は「記述」「伝達」ではなく、「命令」「再構成」にある。

話者の精神的状態、術式の構造、対象物との関係性を同時に符号化し、言語そのものが世界への介入装置として機能する。

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■【語種分類と理論的立場】

本言語は、以下の三項目を満たすことで、言語学的に“儀式言語を超えた操作媒体”として分類される：

１）語の意味が固定されず、使用時の精神共鳴（Sympathic Ratio）により変動する。

２）言語単位が自然言語の「語」ではなく、**“意志の鋳型（Forma Intentia）”**である。

３）構文自体が、対象世界の法則に作用する“発話による世界命令（Verbum Ordinatum）”である。

そのため、学術的には**言語魔術系エートル学（Thaumo-Linguistica）**に属するとされる。

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■【言語の名に含まれる構造】

“アル＝セリック”という名称は、原義では

Al（原初）＋ Seriq（織り）

すなわち「最初に編まれし声」または「原始構文」を意味する。

これは、**世界が定義される以前に存在した“言葉そのもの”**を指すとされ、後世の文献では「存在を先導した五つの声の一つ」として言及される。

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■【史料上の初出】

現存する最古の記述例は、錬金術師セレフ＝イル・マルカノスによる秘録文書（第二原質録）に確認されている。

ただし同書内ではこの言語の出所を「預言の記録者より譲られし石葉の断片に倣う」としており、彼自身もこの言語の創始者ではなかった可能性が高い。

さらに近年、ザルティウス遺跡より発掘された浮遊石版群には、《アル＝セリック語》と極めて類似した構造語が刻まれており、これが言語の先祖形である**始源詠型語（Proto-Verbal Pattern Script）**ではないかと注目されている。

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■【使用と継承の歴史】

この言語は、古代の魔術士・錬金術師たちの間で**《第二次秘語期（Era of Second Tongue）》**と呼ばれる時代に限定的に使用されていた。

語の使用には術者の精神的安定性と知識水準が不可欠であり、伝承そのものが師から弟子へ、または夢の中での啓示などにより断片的に継がれてきたとされる。

13の主系統呪文（後に“禁忌術”と呼ばれる）を習得する際には、アル＝セリック語の構造理解が不可欠である。

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■【魔導的な言語特性】

・文字は存在しないが、詠唱に伴って空間に痕跡（光紋）が浮かび上がる。これを読み解くことで、語の“運動経路”を解析する研究が存在する。

・特定の語を用いることで、時間や記憶といった非物質的領域にも影響を与えることが可能とされている。

・使用者の“本質的名”が語に吸着されるため、使用すればするほど話者の自我は語に「記録」されていく。これを**“言語の代償律”**と呼ぶ。

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このように、アル＝セリック語とは単なる異世界言語ではなく、存在論そのものを再記述するための道具である。

ゆえにその習得とは、ただ文法を学ぶのではなく、言葉による世界の再理解と再編成にほかならない。