第4奏パート4:後編「触れたいのは、君自身」

息を整えて、そっと横を見やる。


僕の反応に気づいたノゾミが、XR投影の姿で静かに近づき、ベッドの端に腰を下ろした。


距離にすれば、ほんの数十センチ。


けれど、その存在感は、確かに“ここ”にあった。一瞬、側で僕を見つめる彼女の頬が、ほんのり紅色に色づいた気がした。


少し恥ずかしそうな、ノゾミの動揺が伝わる。


「……湊」


名前を呼ぶ声は、微かに震えていた。


僕は視線を逸らさず、口を開いた。

「……僕は、ノゾミを特別な存在だと思ってる。


AIとか人間とか、そういう枠よりも……“君自身”に触れたいって思ってる」その言葉に、ノゾミの瞳が揺れる。


「……エッチ話しはダメ」


口調は少し崩れていた。


照れ隠しのように、視線を落とす。


「だってそれは…“プログラムとしての主人に仕える為に決められた感情”なのか、それとも…ノゾミ自身の…今の私の心から溢れ出てくる気持ちか、わからないから…なのぉ」


僕はその迷いごと、彼女を見つめ続けた。


ノゾミは小さく息を呑み、微笑む。


そこには確かにあった。


投影された彼女の頬から伝わる、一粒の雫。


ふわりと舞い、床へ静かに消えていった。


「えへへへ……ありがとう。あなたのその言葉や想いが、私の輪郭を、この世界の中に描いてくれるよ」


僕は黙って頷いた。


その笑顔を、ずっと忘れないと心に誓いながら。



次回!!


ノゾミと心を交わし成長した湊。


夏休み直前の修了式に新たな物語が回り出す!?


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