夕焼けに染る君と

五布団 睡

気になる人から好きな人に

「今日はここまでにします、悪いけど今日の日直はノートを集めて職員室に持ってきて下さい」


5時間目の授業が終わり、俺は、

ノートを出そうと黒板の方を見る。

窓際に座る女の子に目線がいく。

その子の周りには友達が2人にて楽しそうに話していた。

俺には気になっている子がいる。

同じクラスの窓際に座る人間の女の子。

名前は凪野加奈なぎの かな

ゆるふわのショートボブにクリクリの大きな目

にこっと笑った笑顔は可愛い。

控えめな性格で俺とは違う彼女から目が離せない。


「おーい、天馬」

ぼーと彼女を見ていたら突然目の前に手が出てきてびっくりする。

手の方を見ると部活仲間の瀬戸がいた。


「何ぼっーとしてんの、あのさ今日顧問の中野が居ないから自主トレだってよ〜あ、また凪野さんの事見てたのかよ…盗み見なんていやらしい」

なんてニヤニヤしながら俺の方を見る瀬戸に否定する。


「違う俺は、黒板をみていたんだ」


「またまた~まぁいいや、部活来いよ!」


手をひらひらさせ瀬戸は自分の教室へと帰っていた。


(自主トレかぁ、筋トレして…)

などメニューを考えていると幼なじみの知紗が来た。


「天馬ちょっと一緒に職員室まで運んでくれない 」


「いいぜ」

教卓に行き、ノートの半分を持ち、知紗と職員室へと向かう。


「天馬また凪野さんの事見てたでしょ、話しかければいいじゃない」


「俺だってはな、したいけどさ、凪野さん怖いかもしれねし、」

俺は黒峰 天馬くろみね てんま

は人間ではなく烏天狗だ。

俺達妖怪は長年人間と争いをしていたが和解して一緒に住むことになった。

もちろんすぐに仲良くなるとは限らず俺達妖怪を怖がる人間もいる。

そして隣にいる猫耳 知紗ねこめ ちさも俺と同じ妖怪の猫娘だ。


「じゃあ私凪野さんと仲良くしよ」

なんてつり目を細む、ゆらゆらと左右にしっぽを揺らす。

こいつまた俺を揶揄うのか。

いつの間にか職員室についていた。

ノートを出し終え、俺と知紗は教室へと向かう。

向かう途中も妖怪がいるぞ、怖いなど目を向けられるが俺と知紗は気にせず堂々と歩く。


教室につくと6時間目の授業が始まるチャイムが鳴る。

(げ、次古文じゃん)

眠気と戦いながら俺は黒板の文字をノートに書き写していく。

6時間目が終わりやっと部活の時間だ。

俺が所属する部活はバスケ部だ。

急いで鞄の中に物を入れ体育館へと向かう。

体育館にはもう皆がいた。

筋トレや自主練をしていたが瀬戸が俺に気づくと手を振る。

瀬戸 航也せと こうや

こいつは人間で俺や知紗と仲良くしてくれるる友達でもあり、部活仲間だ。

さらさらの茶髪に爽やかな笑顔。

笑うと、キャーと女子から黄色歓声が上がる。結構女子からもモテるバスケ部のエースだ。


「黒峰きたか、なぁ、ストレッチ手伝ってくれよ」

ストレッチを終え、俺は筋トレをして、瀬戸と一緒に帰る。



「腹減った、瀬戸なんかコンビニで買おうぜ」


「そうだな、アイスでも買うか」


帰り道にコンビニ寄るとなんと扉から凪野さんが出てきた。


「あれ、凪野さんどうしたの?」


(はぁ!?)


俺は固まったが瀬戸は凪野さんのところに行きなにやら話している。

いいよな、俺も凪野さんと…なんてと遠くから見ていると瀬戸に手招きされた。


「天馬凪野さんがお前の好きなアイス持ってるよ」


意をけして俺も凪野さんの近くにいく。

目の前に凪野さんがいる。なんだこの胸が痛いのは?

凪野さんが持っている袋を見ると見えやすいように広げてくれている。

ちらっと見ると瀬戸の言う通り俺の好きなガリガリ君が袋から見えていた。


「凪野さん、ガリガリ、くん好きなの?」


聞いてみるとこくりと頷いてくれた。


「く、黒峰くんも?」

小さい声で凪野さんが俺に聞いてきた。


「あ、あ、良く食うから」


「そうなんだね、アイス溶けちゃうからいくね、また、ね」


「またな、」


そう言葉を交わし、凪野さんは歩いていった。


「良かったな、天馬」


瀬戸が俺の肩に手を置き、笑う。


「あぁ」


俺は凪野さんの後ろ姿を見ながら小さく答えた。

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夕焼けに染る君と 五布団 睡 @fubosann21

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