1話

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、  、  、  、   、   、   、

Ppppppp pppp Ppppppp pppp

Ppppppp. pppp Ppppppp pppp

Ppppppp ppp(


「……ッ……ッ…ふあぁ…」


朝6時。手探りで目覚ましを止めて、ひとつ伸びをしてから情けない声を出す。


「起きるか…ん?」


ふと、目尻から頬にかけてつたうそれに気づいた。


「涙?」


そういえば何か夢を見ていた。夢見は少し悪い方で、

怖い夢というよりは朝起きたら何故か無性に虚しくなって

起きるのを躊躇いたくなることはよくあるのだ。

(なんだったかなぁ、あまり気持ちの良いものではなかった気はするけど…。)

まあいいや。誰に言うでもなく呟いてベッドから降りる。


9月6日。

昨日までが夏季休業で今日からまた学校が始まる。

とは言っても今日は始業式とホームルームくらいで終わるだろうけども。


「朝ご飯は…っと、昨日のやつと…食パンでいいか。」


僕はここ、埼玉の熊谷でアパートを借りて東京の高校に通っている。一応、一人暮らし。

昔から料理や掃除は好きな方だったから、親にも説得の上で納得してもらい今の生活をしている。ちなみに先述の昨日のやつとはビーフシチュー。

夏休み最終日ということでなんとはなしに豪勢に。


地元の高校に行かなかったのは、そもそも地元に高校とかほとんどないけど…やはり人付き合いだろうか。

昔から人と話すのは苦手ではなく、むしろ好きな方ですぐに周りと仲良くなれた。


しかしやはり僕に「友達」は向いていないようで、仲が深まるほどに、だんだん相手が僕に飽きてきて、僕もそれに気が付いては勝手に一人で傷ついて、また心の壁に背を向けてしまう。高い高い心の壁というものは、近づけば近づくほど、僕を見下ろすように聳えるのだ。


まだ短いものだけど、僕の人生はずっとそんなだった。

興味を持っては執着して、自分に才能がないと思ったら

「向いてなかった」と言って忘れようとして。

会話が上手くできなかったら相手から逃げて。

自分を衛る。

衛ってしまう自分を嫌っては自分からも逃げた。


だからいつからか、飽きてしまった。飽きることに。

誰と話しても、何をしていても、へらへらと僕を嘲笑う

未来のことを考えてしまって、心が、動かないようになってしまった。

寝覚めに涙が出るようになったのも多分それから。


「僕は、所謂メンヘラなんだろうか…。………超くだらんな…。」


そんなめっちゃどうでもいいことを考えながら、身支度を終えて部屋の鍵、腕時計、定期、財布、携帯、リュックと順に

身につけ、ドアを開ける。


ギイイイイイイ…ガチャン


(建て付け悪いなあ。)


そこそこに古いアパートなので、所々に積日の面影を感じさせるような、しみや破れたところがちらほらとあるのだ。

それでも、自分を奮い立たせるように


「吉幾三。」


と誰に聞かせるでもない三流のギャグを吐いて

徒歩5分の熊谷駅へと歩き出した。

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