第24話 襲撃
救出作戦を決行する日が来た。ロニは労働者たちの体力を考慮し、比較的体力が残っているであろう朝の移動を狙うことにした。朝食を終え、これから労働場所へ連れて行かれる時間帯だ。
ロニたちは襲撃ポイントである岩場に到着し、それぞれの配置についた。ロニは岩場の上に、投石部隊は岩場の中腹に。槍と棍棒を持った近接戦闘部隊は道の両側の茂みに身を潜めた。パウはロニの傍らに控え、ベロとクロウはそれぞれ近接戦闘部隊を率いる。
じっと息を潜め、労働者たちが連れてこられるのを待つ。森の空気は張り詰め、静寂が支配していた。
やがて、遠くから足音が聞こえてきた。労働者たちが隊列を組んでこちらへ進んでくる。その姿は、まるで囚人の行進のようだ。先頭に看守が三人、その後に手を縛られた労働者十人が続き、最後尾にも数人の看守が付いているのが見えた。
労働者たちの隊列が、ロニたちが定めた襲撃ポイントの真ん中に差し掛かった、その時。
「ギャアアア!」
陽動役のゴブリンたちが、森の奥から突然飛び出し、隊列の先頭にいる看守たちの前に現れた。彼らは大声で威嚇し、看守たちの注意をそちらに引きつけた。
狙い通り、先頭の看守たちは突然現れたゴブリンに怯み、進行を止めた。隊列全体が混乱し、足止めされた。
「なんだ!? ゴブリンか!?」
「数が少ないぞ!怯むな!」
看守たちが陽動のゴブリンに気を取られている隙に、ロニは素早く行動に移した。懐から煙幕を取り出し、事前に用意しておいた火種で火を付けた。白く濃い煙が勢いよく立ち上る。
ロニは、煙幕を中列、つまり看守と労働者の間に向かって力強く投げ分けた。一つ、また一つと。二つの煙幕は予定通り、看守と労働者の間に落ち、白い煙を吹き出した。
「げほっ、げほっ! なんだこの煙は!」
「くそっ!何も見えない!」
煙はあっという間に広がり、視界を遮った。労働者と看守の間を分断し、彼らの連携を崩す。混乱に乗じるのだ。
煙幕を合図に、ロニは叫んだ。
「今だ!かかれー!」
ロニの指示と、パウの短い鳴き声のような合図を受けて、待ち伏せていたゴブリンたちが一斉に飛び出した。道の両側の茂みから、槍や棍棒、そして自らの爪と牙を武器に、看守たちに襲い掛かる。
ロニは、労働者たちに被害が出ないよう、投石部隊には攻撃させなかった。彼らは、煙幕で混乱している看守たちを、主に槍と棍棒、そして自らの肉体で攻撃した。
訓練された兵士ではない看守たちは、突然の奇襲と煙幕による混乱で、統率を失った。彼らは労働者を放置して、バラバラに襲いかかってくるゴブリンたちと戦い始めた。
「ぐあああ!」
「やめろ!化け物!」
悲鳴が響き渡る。ゴブリンたちは、数の有利と奇襲の成功によって、看守たちを圧倒した。槍が、棍棒が、そして爪と牙が、看守たちの体に突き刺さる。一人、また一人と、地面に倒れ血溜まりをつくっていった。
ゴブリンたちの攻撃は勢いを増した。彼らは、腹を空かせた獣のように、容赦なく看守たちに襲い掛かった。
「ひっ!逃げろ!」
戦況が絶望的だと悟った看守の中には、背を向けて逃げ出す者もいた。しかし、ゴブリンたちは逃げる敵も許さなかった。彼らは素早い足で逃げる看守を追いかけ、容赦なく仕留めた。
短い、しかし激しい戦闘が終わった時、襲撃場所には、ゴブリンたちの姿だけが立っていた。12人の看守は全員が地面に倒れ伏し、動かなくなっていた。
ロニは、岩場の上からその光景を見下ろした。作戦は成功した。犠牲者を出すことなく、父を救出する道を開いたのだ。
地面には、解放された労働者たちが、まだ手を縛られたまま、呆然と立ち尽くしていた。そして、その中に、ロニが探し求めていた父の姿があった。
ロニの心臓が大きく跳ねる。
父さん…!
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