第4話・起承転結の承
「物語を書くとき、
先生は、今日も今日とて唐突に部室の教壇にあがるや否や講義を開始する。
「聞いたことはないですけど、起承転結というのはわかります。要は四コママンガ的なやつでしょう?」
俺は本日、ちょうど先生に貸してもらったラノベ原作のマンガを読んでおり。
その巻末のオマケ四コマを示して、回答する。
「うむ。
「あれ? 先生。序破急って言葉があることを考えると、起承転結の承の部分はいらないという事ですか?」
「む。違う、それは違うぞ我が教え子よ。むしろ起承転結の承の部分こそ、作家の個性が光ると言っても過言ではない」
「そうなんですか?」
「まあ、確かに序破急という言葉が示すとおり、話によっては簡潔にまとめた方が、いい場合もある。あまり描写を多くしすぎると、
「まあ、マンガでもアニメでも、無意味な引き延ばしとかダレちゃいますもんね」
昔見てたバトルアニメで、アニオリキャラとアニオリキャラのバトルで数話使われたときには、さすがに苦笑いしたものだ。
「では本日は、起承転結の『承』をメインにして語ることにしようか」
「お願いします」
「よし、では昔話の桃太郎を例に挙げて話してみよう。あの話は、桃から生まれた桃太郎がお供を連れて鬼を退治して金銀財宝を持ち帰るという話だ」
「そうですね」
「ではここで問題だ。桃太郎を起承転結に分けると、どのようになる?」
先生は、普通の授業めいた感じで俺に質問をぶつけてきた。
「え? えーと。
起で桃太郎が生まれて
承で犬猿
転で鬼を退治して
結で金銀財宝を持ち帰る
という感じですかね」
先生はパチン、と指を鳴らしてみせ……
みせ……
みせたかったようだが、音は一向に鳴らず。
渋い顔をしつつ先を続ける。
「その通りだ。そこでポイントになるのが、なぜ桃太郎がひとりで鬼を退治する話ではないのか? という点だ」
「それは……仲間と一緒に鬼を倒すほうが、教育にもいいから、とか?」
「そうかもしれない。まあこの昔話を作った人にしか、その真意はわからないが。重要なのは、ぶっちゃけて言えばお供を連れなくても話は成立してしまうということだ」
「あー。考えてみれば、確かにそうですね。それが序破急のパターンになるわけですか」
「
「確かにそうですね。鬼○の刃は、そんな感じに要素が追加されていった話とも言えますし」
「まさしくそうだな。話をまとめると、起承転結の承の部分でこそ様々なことが可能になり、作者の個性が
先生は、うんうんと頷き少し自分の言葉を噛みしめているようだった。
そして改めて「さて」と前置きし、黒板を軽く叩いてわざわざこちらの意識を注目させてくる。
「そんな具合に、承の部分はかなり自由度が高く、結末への伏線などもこの部分で描写しやすいわけだが。起承転結の他の箇所で、その自由さを書いてはいけないのだろうか? という疑問がわくかもしれないな」
「そう言われると、疑問に思いますね」
「では答えよう。まず、起の部分では登場人物や世界の説明が必要になる。これはプロローグの時にも言ったな」
「はい、そうですね」
「転の部分は文字通り話の転換となる描写に集中することになるし、結に至っては話を締めなければならないため、どうしても自由度が下がってしまうのだ」
「なるほど。言われてみればそうですね。鬼ヶ島に到着してから、新しいお供とか変な設定とか追加されても困りますし。転や結の部分は、どうしても縛りが多くなりそうです」
「そういうことだ。だからこそ、起承転結の承の部分を使うのがやはり有効になるわけだ」
なるほど、と頷く俺に対し。
先生は一旦言葉を切り、鞄からペットボトルの水を取り出してごくごくと喉を潤しはじめた。
いやまて。よく見るとあれ、ただの水じゃないぞ。
なんだあれ、ラベルに
そんなに糖分が欲しいなら普通にジュース買えばいいのに、と思う俺をよそに先生は再び講義を続ける。
「とはいえもちろん、今のはあくまで基礎的なやり方を述べたにすぎない。序盤の内から予想外の展開を書いたり、最後の最後で驚愕の事実が飛び出してどんでん返しする作品も珍しくない」
「それは確かにそうですね。最初の三話で衝撃展開持ってくるアニメとか、けっこうありますし」
「そう。起承転結にしろ、序破急にしろ、それらはあくまでひとつの
「はい、気を付けます!」
ここで、下校のチャイムが鳴った。
「それでは、本日の講義はここまで!」
「ありがとうございました!」
そう言って俺は鞄を手に、部室を後にしようとしたが。
先生はちょいちょいとこちらに手を振り、静止してきた。
「ああ、ちょっと待て。我が教え子よ」
「はい?」
「明日は現国の小テストがあると事前に伝えたが、ちゃんと勉強はしているか?」
「…………」
「よし。少し待っていろ、今日は一緒に帰ろうじゃないか。なあに安心しろ、帰るまでのわずかな時間でもしっかり知識が身に着く、とっておきの勉強法があるからな」
先生、目が怖いです。
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