【結果発表の残酷さ】

 去年の中間選考発表日、彼女は深く落ち込んでいました。同時に私も強いショックを受けました。


 彼女は当時17歳で、その日もう次の夏を迎えられないことを突きつけられました。

 私が大人になってしまえば、彼女は存在できないのです。そう決めていました。


 ただ、もしカクヨム甲子園で賞を獲ることができたなら、延命したって良いと思っていた。

 

 だから全てを賭けたつもりで臨んだのです。


 しかし、結果は残念なもので、彼女の全てを賭けたはずの長編の名前はそこにありませんでした。

 とある短編が一つ通っていたものの、それは近況ノートと同じようなもので、かつ詩の形式でした。


 この詩は受賞しない。そうなんとなく感じていました。

 いや、もし受賞したとしても、それは彼女が望んだものではないでしょう。


 


 賞には届かないという事実を知った時、まず、「今までの時間はなんだったんだ」という想いが私達を苦しめました。

 でも、それは違うと、すぐに気が付きました。


 時間で言えば、私達はまだ全然足りていない未熟な側だったのです。それが少し前までコンプレックスでもありました。

 私が執筆をし始めたのは高校一年生の冬で、本格的に動いたのはそこからさらに先のこと。読書量も決して多くはなかった。

 

 周りに比べたら私なんて全く時間を費やせていなかったのです。

 この感性を物語に乗せて伝える才能もなかったみたいですし。


 そんな私が「今までの時間はなんだったんだ」なんて言うのは創作に対して不誠実です。

 そうして……言い訳もできなくなりました。


 


 でも、よく考えれば、時間を無駄にしたような感覚が辛かったわけではありませんでした。

 それより“他人に響かなかった”ことのほうがずっと辛かったのです。


 本気で書いたあの作品が、必要とされなかった。

 それは何よりも直視したくない現実で。


 私を覆っていた柑月渚乃という姿はそこで剥がれ落ちていきました。彼女はきっと、そこで死にました。


 全てを賭けた彼女は、それゆえにその瞬間、全てを失ったのです。

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