第4話 狐の話


 これは「辻占 ―ニンギョウの杜Ⅱ―」の中で、ちょっとだけ使ってる話なんですけど。


 たまたま、二日続けて違うお稲荷さんにお参りしたことがありました。


 最初に行った方は、凄い観光地なんですが、遊び気分で行くと、のちのち色々ある、と噂の神社でした。


 そこの神社の話も聞いてはいるんですが、また別の機会にでも――。


 で、ふたつめの神社に行って、もう帰ろうと鳥居をくぐったときだったか。


 バシッ、と左肩だか腕だかの辺りが痛くなったんです。


 まあ、気のせいかなあ、くらいな感じで、家に帰りました。


 しかし、その夜――。


 寝ていた私は、救急車のサイレンで目を覚ましました。


 ぼんやりとその音を聞いていた私の耳に、ある声が聞こえてきました。


「あれは、駄目だよ。

 もう死んでるよ」


 ふと気づくと、顔の右横に何かが立っているのです。


 狐の面をかぶった赤い子供。


 ――ちょっとわかりにくい表現ですみません。

 でもまあ、そんな感じのなにかが側に立っているのです。


 しかも、そちらを振り向かなくても、なにがいるのかわかるのです。


 人間の霊じゃなさそうだ。


 このナニカの話は聞かない方がいいので? となんとなく思いました。


 でも、金縛りにかかったみたいに動けないから、どうにもならないな~、

と思ったそのとき、枕許にいた金魚が、ぽちゃんっ、と跳ねたんです。


 その瞬間、金縛りが解けました。


 人に怖い話をしたら、たぶん、他の話の方が怖いと言われると思うんですけど。


 私は私の体験した中では、これがダントツ怖かったです。


 なんといったらいいんでしょうね、あの感じ。


 二日つづけて違うお稲荷さんに行ったのが悪かったんですかね?


 まあ、実話なので、なんのオチもないんですが……。







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