第37話 その後の情報共有と考察(これ大事)①
「きゃー♡速いわー♡」
「うぉーっ!高ぇーっ!怖ぇーっ!」
二人ともはしゃいでいらっしゃる。
某遊園地の某アトラクション乗車中の仲良し夫婦ではございません。
まあ10年ぶりの地上、ってか上空。
はしゃぐのも致し方無し。
「アクトー」のギルドまで俺の飛行能力で戻ってます。
ちなみに、両親気遣って行きよりゆっくりめ。
それでも20分かからず到着。
「降りるよ!」
二人に声を掛けてギルド庁舎前の噴水広場に着地。
行きと違って人がそこそこ居たからびっくりされてしまう。
でもそこはギルド庁舎前。
魔術師奇術師やってきたとて然もありなんと言わんばかりに、スーッと皆さん道を開けてくださいます。
「早よ用のある建物入れや」って空気で。
お詫びします。
驚かせてごめんなさい。
「きゃー♡懐かしいわねー。」
「感慨深いな。」
母父それぞれ感想を述べる。
良かったな。
二人を無事連れて帰れて。
早速ギルマスに報告しよう。
ーーーーーーーーーー
受付嬢は俺を見てほんの一瞬だけ眉間に皺を寄せた。
ん?私、見間違えてる?今日一回来てた勇者さんよね?的な表情が一瞬出てしまっていた。
うんうん。
君は間違えて無いし何も悪くない。
「トール様、まだ何かご用向きがございましたか?」務めて冷静に業務を遂行する彼女。
「まだ何か」の部分に、彼女という一般的な人間の感覚が表れている。
「さっき100km先の「フィアー」の攻略に出かけたって聞いてるけど、まだいたの?どったの?」的な疑問が集約された「まだ何か」という表現。
まだ半日経って無いもんね。
君の感覚が正しい。
「ええ。申し訳ありませんが、もう一度ピルスナーさんにお取次いただけますか?」
俺も敢えてその「どったの?」を否定せず、「もう一度」の体でお願いする。
承知しましたの一言の後、ややあって姿を見せたできる男ピルスナーさん。
「「フィアー」には無事入れましたか?中はどんな様子で・・・」
言いかけてフリーズするピルスナーさん。
今回は中々戻って来れない。
後ろの両親を指差したまま瞠目している。
「ヤッホー♡久しぶりねピル君🎵」
「おお、ピル!ギルマスやってんのか?お前気遣いできるからなー。立派になったなぁ。」
父さんと母さんから声を掛けられると、弾かれる様に二人の元に飛び込んだ。
「タイさん!ベラさん!良かった!良かった!・・本当に・・・。」
ピルスナーさんが父さんと母さんに飛びついて肩を震わせている。
「心配かけたな」「ただいま、ピル君」
父さんと母さんもピルスナーさんにもう一度声をかける。
やや目を赤くしたまま、俺に顔を向けてピルスナーさんが言う。
「・・・全くなんてお人だ。10年間未解決の問題をたった数時間で最良の結果で解決して見せるなんて。見込んだ以上じゃないですか!」
嬉しそうに、何故か少し悔しそうに、でも晴れやかな顔でそう言ってくれた。
「・・・??・・・・・・。えええぇー!?もう解決ーッ!?」
半日経たないうちにもう一度盛大に驚く羽目になった受付嬢。
ちなみにお名前はプリムさん。
これからも頑張ってピルスナーさん支えてくださいね。
ーーーーーーーーーー
ピルスナーさんは俺たちを伴って執務室に向かう前に、プリムさんにもう一度デリンジャーさんにも来てもらえるよう使いの手配を指示。
幸い研究所とギルド庁舎は街の同じブロックで徒歩圏内なので、直ぐにもう一人びっくりさせてあげられるだろう。
果たして息を切らせてデリンジャーさんが現れた。
「・・・本当に・・お二人が・・いる・・・」
驚きながら、懐かしい、でも信じられないものを目にした様に呟く。
「あらデリさん。3年前の調査活動以来かしら?お久しぶりね。」
どうやら父さん母さんとデリンジャーさんはこちらも知り合いの様だ。
「・・・おかえりなさい。お二人ともよくぞご無事で。」
以前とある二組のパーティーが「魔物の間引き」依頼を受けた際、依頼には奇妙な特記事項が付されていたことを覚えているだろうか。
タイタン・ガーベラ夫妻が魔物化した当初は、生前の功績が高かった二人の、その冒険者としての実力の高さが災いした。
魔物化したことによる存在の不安定さを危惧し、即座に討伐すべきとの声とが大きくなっていったのである。
討伐はの声は、特に国内からも少なくなかった。二人の人柄を知らない者からすれば、魔物に手に落ちた過剰戦力という認識だったのである。
そこで、少なくとも実態として実害が有るのか無いのかについて、魔物化した元ホモ族の生態把握をするということになった。
研究者としての知見を背景に、こちらから手を出さなければ実害無しのお墨付きを与えて「フィアー」における対ガーディアンのルール作りに尽力したのが、誰あろうデリンジャー氏なのである。
「デリさん。これまで本当に世話になったね。ずいぶんと助かったよ。」
父さんも礼を言う。
「・・・私なんてそんな。
素晴らしい、すでに世界に誇るべき英雄であるお二人の息子さんが全て解決してくださったことですよ。」
デリンジャーさんテラ謙遜。
まさかカーリーさんのお父さんであるデリンジャーさんとうちの両親が見知った間柄とは。
まあ同じ国で「ダンジョン」で繋がるから必然的な結果か。
久しぶりの良い知らせであり、良く知る者同士が無事を祝い、交友を温める光景。
良いものではあるけれど。
まだ終わりじゃない。残念ながら。
ここからだ。
「さて皆さん。」
ここは俺が取り仕切る。
「まずは俺の両親を無事今日救出できたのは、間違いなくこれまで皆さんがご尽力くださったお陰です。改めてお礼を言わせてください。」
深々と頭を下げる。
そして続ける。
「その上で、厚かましいとは知りつつお願いします。「魔物の王」討伐に向けて、引き続きご協力をお願いしたいんです。
まず、今日俺は間接的にではありますが、奴と対峙しました。なんなら宣戦布告してます。」
両親含めて全員びっくりしている。
更に俺は続ける。
「いくつか分かった事を共有します。
まずはダンジョンについて。
これまでダンジョンは、「魔物の王」出現の「兆し」を示し、内包する濃い魔素で魔物を生み出し、時に生物を捉えて「ガーディアン」に仕立てて自らを守る、一説には魔物の一種ではないかとされていました。
デリンジャーさん、ここまでは間違いないですか?」
念のため専門家であるデリンジャーさんに確認する。
デリンジャーさんが頷き答える。
「間違いありません。
お二人から補足はありますか?」
俺の両親に補足の有無を確認する。
母さんが答える。
「皆さんご存知の通り、私たちは囚われ、「ガーディアン」として10年もの長きに渡り使役されるという屈辱を味わいました。
まず、体内に「魔核」を作られてしまい、そのため「魔物」の一種とされました。まあ、仕方がないですね。
加えて、ダンジョンから脱出することが出来なくなりました。ダンジョンから出ようとすると強制的にダンジョン内に引き戻されます。
「転移」の魔法が強制発動するからです。
また、コアに近づくものを排除するように行動を強制されます。
残念ながら「強制転移」と「侵入者排除」の二つの行動、これには完全に抵抗ができません。
原因は分かりませんでしたが、我々は侵入者を無力化して実害を与えないという回避方法を編み出しました。
結果、幸にして10年の間、冒険者の命を奪わずに済みました。
もちろん皆さんのご尽力があって成し得たことですが。
実際に、「フィアー」に意志があったのかと聞かれると、そのようには思えませんでした。
残念ながら、私たちが知り得た「ダンジョン」に関する情報は実はこの程度です。
トール、貴方何か新しい気付きはあったの?」
母さんが俺の発言を促す。
「はい。ここからが新事実です。」
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