第10話 自分の立ち位置①
おはようございます。
「業平透」改めまして「トール」です。
前世で「透」だったから「トール」を名乗ってんの?安直じゃね?と思ったそこのあなた。
これは全くの偶然ですよ。
詳しく書かれてはいませんが第3話ご参照ください。
まあ俺にとってはめちゃくちゃ都合が良いんで何の不満もございません。馴染んだ名前だし。
新しい人生、自分の最高到達点を目指す!
そんな決意を固めつつ気づいた。
額に違和感がある。
あと、人の気配とは別に、なんというか周囲にモヤモヤしたものを、何かまとわりついているようないないような違和感を感じる。
理由は思いつかない。何だこれ?
額の違和感の原因を確かめようと、まずは触ってみた。
あれ。石っぽい感触がある。
額に石?
・・・。
この世界で額に石ついてるやついた?
・・・。
昨日は気づかなかったな。
周りも誰も何も言わんし。
・・・。
他の子たちは額に石無かったね。
でも特に何も言って来んね。そんくらいは騒がんレベルか?あたり前田さんなのかな?そこら辺はまだワカラン。
体に感覚が馴染んできたのとは裏腹に、幼少期の記憶、特に親や家族の記憶がはっきりしない。むしろ思い出せない、ボンヤリしていて、ではなく記憶に無い。
俺はどういう経緯で孤児院のお世話になっているのかな。聞いてみっかな。ここはRよりはミコさんだろ。
「ん?聞きたいこと?何で僕は
ミコさんに問うてみる。
「んー。わかんないなー。」
とミコさん。
「だって、アタシ来たとき、もうトールちゃんいたもの。」
そりゃワカランな。
「
マイルドヤンキーから極道の妻への進化を確認。
「はいはい私はここですよー」
「
ミコさんの悪態が留まることを知らない。
「何だか呼び名が殺伐超えて人権侵害レベルな気がするけど何かご用かな?え?トールくんが
聞くなり神父の雰囲気が変わる。
珍しい。てかちゃんと考えてるとこ初めて見た。
「どうしても今聞きたいのかな?」
俺は頷く。
「楽しく聞ける話じゃないんだけどな。」
重いのか?
「私としては、もう少し時間をおいて、然るべきタイミングでお話ししてあげたいんだが。」
俺も少し真面目に考えて答える。
「いつかはわかることだけど、俺、今聞きたいんです。知った上でここでお世話になりたいし、この後を生きていきたい。決めたんです。」
暫く
そして、
「なら私が知っている限りを話そう。立ち話じゃなんだから、私の部屋で話そうか。」
そう答えた。
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質素という単語が相応しい部屋だ。
真面目を具現化したような、ボロボロになった経典が1冊、作業机の上、天板の真ん中に縦横を天板の向きと正確に合わせて置かれている。
他には神学の本も無ければ、私物の類もほとんど見当たらない。
神父としての職務を果たす上で必要な衣類と小道具、同じくらい粗末なベッド。
一組の椅子と部屋に見合わない小さなテーブルのセットくらいしかない。
正直意外だった。
「まあ、楽にして。」
俺の傍にはミコさんが座る。神父は作業机の椅子をテーブルまで持って来る。
「君のご両親は冒険者だ。」
いきなり話が始まった。
「ここからは君が聞きたいことの核心であり、少し刺激の強い内容だ。もう一度聞く。本当に、今ここで聞きたいかね?」
・・・。
初めて「神父」の素の顔を見た気がした。
怖くはないが、今から話すことはオブラートに包めないし包まないから覚悟して聞いて欲しい、私も腹を括るから、とでも言いたげな表情をしている。
「はい。」
カンヌ神父の覚悟を受け止め返答した。
「分かった。まずは君のご両親の人となりについて。私は君のご両親と面識がある。」
「!」
・・・知ってんのかよ。いきなり核心だな。
「ダンジョン攻略を目的としてしばしばパーティを組んだ間柄だ。私は職業的にはパラディンとして、お父さんは名の知れた頑強鉄壁のタンク、お母さんも並び立つものの少ないくらい有能な攻撃魔法の使い手だった。
他にもパーティメンバーはいるがここでは割愛する。
かなり相性の良いパーティだったと自負しているよ。」
・・・
「あるとき、ご両親は攻略難易度の高いダンジョンに挑まれた。
私はたまたま別の任務で国を離れていたため、残念ながらその攻略戦に参加できなかった。
君がこの施設に預けられたのは丁度そのときだ。」
施設に来た経緯は分かった。でも、話の雲行きが怪しくなってきてる。気を引き締める。
「ご両親は見事「ダンジョン・コア」破壊に貢献し、その使命を果たされた。」
そうか。戦果を挙げたんだな。見たこともない二人なのに何だか誇らしい。
「だが撤退戦で予期せぬ不幸が起きた。」
だよな。この話の流れは。
「ダンジョンの「魔核」は破壊されるとき、稀に悪あがきのようなことをする。
意思が宿っているかのように。
攻略難易度が高いほどその傾向が強い。」
「魔核」は破壊してそれで終わりにできないのか。
ここで話を区切って一つ間を空ける神父に視線を強めて続きを促す。
何が起きたんだよ。
「このとき、「魔核」が起こしたことは、特殊な事例の一つとして記録されることとなった。」
だから何が起きたの。
「君のご両親は「魔核」が破壊される間際に放った強烈な呪いを受けて、ダンジョンに縛られる存在に変質してしまった。」
え?
「今もなお、そのダンジョンに存在している。
ダンジョン・コアも元通り再生されている。
最もわかりやすく言えば存在としては「人」ではなくなってしまった。」
何だそりゃ・・・
「私も手を尽くしてみたのだがね。人間に戻すには至っていない」
ここで話の流れからあることに気づいた。
俺は尋ねる。
「父さんと母さんには会えるってことですか?」
「そうなるね。」
いきなり魔物化してるのにはびっくりしたけど、少しホッとして、希望のようなものが芽生える。
「君がこの事を知ることになったとき、伝えてほしいと君の両親から頼まれていることがある。」
「父さんと母さんから?一体なんですか?」
俺は急かすように先を促す。
「「成長し、力を付けたら会いにきて良い。少なくとも一対一で目の前の男を負かすくらい強くなれ」だそうだ。」
なんだか普通だ。
でも、会えるのか。
良い目標じゃないか。
ん?
目の前の男?
打倒パラディンが最低条件ってことか・・・。
・・・良いね。燃えてきた。
「なら私からも」
シスター・ミコが参戦してきた。
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