大きな蛇が家に来た
「それで、俺がぐっすり寝ていた間に庭に蛇がいたと」
心霊写真騒ぎでよほど疲れてたんだな。気絶するように12時間以上ぶっ通しで寝続けたあと、寝過ぎによる頭痛になるという最悪な状態で雷太に問いかける。
「結構でかかったぞ。ここにきて蛇見たの初めてだったからびびっちゃってさ」
身をすくめつつ雷太が語る。霊体なんだから噛まれる心配などないだろうに、本気で蛇を怖がっている様子だ。
「で、手紙を置いていったと」
俺は丁寧に和紙でくるまれた手紙を指で摘み、ひらひらと揺らしてみる。古風な感じだが、それが何だか物々しさというか仰々しさにつながっている。呪われないよな、これ。よく考えたら人生初の本格的な手紙が蛇からってなかなかトリッキーだ。
「いやー、蛇から手紙渡されるとか経験したことないしさ。いやーびっくりした」
「でもなんで蛇が手紙持ってきたって思ったの? たまたま置いてあったとかじゃなくて」
蛇って当たり前だけど手がないからな、口に咥えてきたのかな?
「手紙読んでくださいね、って言ってたもの。だったら蛇がもってきたんだろ?」
なにを当たり前のことを、と言わんばかりだ。しかし身ぶり手ぶりがダイナミックだな。なんというか動きがうるさい。それはそれとしてだな、
「え。しゃべる蛇なの?」
「しゃべるよ-。びっくりするだろ?」
いやいやいや、でかい蛇が来たとかそんな情報よりも重要じゃないですかねそれ。
「いや、しゃべってたってのは初耳」
「あれ?」
きょとんとした顔の雷太。変なところで抜けてるよな、こいつ。
「『あれ?』じゃなくてさ……。じゃあまたオカルトの
慎重に手紙を開いてみる。ものすごい達筆なうえ筆で書かれている。なんとか日本語というのは理解できるな。それでもってこれは……。
「おおぅ、読めない」
ぎりぎりいくつかの名詞が読み取れたが。大半が読めなかった。フサ子がうんぬんということらしいが、フサ子といえば母方の婆さんだ、つまり今住んでいる家の元家主だ。
婆さん絡みの案件なのだろうか。でも蛇と知り合いとかどういう交友関係なんだか。
「うーん。なんか家を相続してくれって呼ばれた時になんか言ってた気も……」
「覚えてないのかよ」
「蛇が喋ったとか伝え忘れるヤツに言われたくないよ」
ちょっぴりイラつきつつも約1年前の記憶をたどる。任せてあるとか任せたとか言ってた気がするが、あれって家のことを自分に任せた、という意味だよな。
「まあ何かあったらまたコンタクト取ってくるだろう、きっと。ただ人間じゃないならまともにやりとりできるじゃ怪しいなあ」
「また蛇が来たりしないだろうな」
「蛇が来そうな気はするね」
うへえと勝手におびえている雷太を尻目に、今から心配しても仕方ないと食事の支度に取りかかる。
ちなみに渡は俺が寝ている間に目覚めて自宅に帰っていたようだ。一言だが謝罪のメモが置いてあったので、とりあえずは反省はしているはず。あと週末に米や田舎からの救援物資を差し入れしてくれるとのことだった。こっちの手紙はとてもありがたい内容だ。今回の件は許してやろう。
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