緑上 葉言(5)



「りっくん、今日お母さん達出掛けるらしくて…しかも私も友達と遊ぶ約束しちゃったんだけど…。お留守番お願いできる…?」

私は両手を合わせて頼んだ。

「いいよ。」

りっくんは笑顔でそう言った。

「楽しんでおいで。」

続けてそう言うりっくんの優しさにジーンとする。

「ありがとう…!でも、本当ごめんね?せっかくの祝日なのに…」

「気にしないで。気をつけてね。」



―――――と、家を出たまでは良かった。けど、駅へ行く途中、友達からキャンセルのラインが来て、家に帰ったんだ。ガッカリしながらも、りっくんとの二人きりの時間に胸を躍らせていた。


―――――のも束の間。

りっくんの部屋には見知らぬ女の子の姿。

そして、今に至る。


「…りっくん?この子…誰…?」

りっくんが口を開く。

「…この子は、紅ちゃん。俺の…」

その先の言葉が「近所の子」や「友達の妹」であってほしかった。でも、そんな希望はあっさり打ち砕かれた。

「俺の…好きな人、だ。」

何、言って…

「俺、小さい子、大好きなんだ。こう…可愛くて、甘いお菓子のような存在。はーちゃんもそう思わないか…?」


何を言ってるか分からない。

「りっくん、私、りっくんが好き…っ」

絶対今言うべきじゃない。そんなの分かってる。けど、その子より私を選ぶことをまだ、心のどこかで期待していた。

「…ごめん…はーちゃん。」


「…っ!!!!!」

私はいつの間にか家を飛び出していた。そして、気がつくといつもの公園にいた。

小さいころから、嫌なことがあったり、つらいときはこの公園に来ていた。

私はベンチに座った。


不意に涙が落ちる。

「なんなのぉ…。小さい子が好きって…。本当、最悪…。もう信じられない…キスまでしたのに…本命は私じゃないとか本当、最悪…。」


「何が最悪なの?」

私は突然聞こえてきた声のするほうへ顔を向けた。

「…白空ちゃん…。」

「珍しいね。葉言が愚痴言うなんて。…大丈夫そ?」

私は安心感と、我慢してきた感情が溢れ出てしまった。

「…っ。…白空、ちゃん…」

私は白空ちゃんに抱きついた。白空ちゃんは私の頭を優しく撫でながら、「大丈夫だよ」と言ってくれていた。


「…とりあえず、家、来る?」

「…え?」

女子同士とはいえ、急なお誘いにびっくりした。でも、よく見たら周りの人が私達を見てヒソヒソしているのが見えたので素直に頷いた。

本当に、白空ちゃんは優しいな…。


「お邪魔します…。」

「その辺に座っていーよ」

案内されたのはリビングで、誰かいないか心配したけど、誰もいなくてホッとした。こんな泣き跡だらけの顔見せたら心配させちゃうから…。

「お父さんとお母さんは…?」

そう聞くと白空ちゃんはカーテンを開けに行って、

「帰ってこないよ。」

と言った。

白空ちゃんの言い方は「もう帰ってこない」みたいな言い方だったけど、きっと、「今は帰ってこない」という意味だと考え直した。

私はリビングのソファーに座らせてもらった。



「で、」

葉言ちゃんがソファーの端に座る。

「どうしたの?何かあったの?」

「…あの、ね」


私は今までのことを話した。


「…何、そいつ。見る目ないんじゃないの?」

本気で怒ってくれた白空ちゃんに思わず笑みがこぼれた。


「あ~あ。白空ちゃんみたいな人が恋人になってくれたらいいのにな~」

軽い冗談のつもりだった。

でも、


「…それ、本当?」

え…?

白空ちゃんが段々詰め寄ってくる。

「私、葉言の恋人になってもいいよ。」

白空ちゃんは私の頬に手を当ててそっとキスをした。

「私、葉言が好き。」


一瞬、心が揺らいだ。

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