ヤンデレメアリー・スーの大罪~テンプレザマァ小説の悪役に恋した少女がシナリオを改変しまくるそうです~

アカアオ

プロローグ

改変その1『邪魔者を排除せよ』

 「は、早く魔王様に伝えなければ!!あの女は、あの女は危険だ」


 私の名前はアスタロト。

 魔王軍幹部、四天王の一人。

 知略のアスタロト。


 人間を篭絡し、蔑み、その恐怖と屈辱に滲んだ顔を肴に酒を飲むのが趣味な誇り高き高貴な魔族。

 そんな私が今、地面を這いながら人間の女から逃げている。


 「なんでそんなに速いかな~。足を叩き切ったはずなんだけど」


 女の声が聞こえた瞬間、心臓がドクンと跳ねた。

 わ、私が人間ごときに恐怖を?

 

 そう考えていた瞬間、自分の右手が切り飛ばされている事に気が付いた。


 「あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 「さっすがぁ。原作で一番情けない四天王って言われてるだけはある悲鳴だね」


 ゆっくりゆっくりと、女は歩いて近づいてくる。


 「何なんですか……そのふざけた剣は」

 「蛇腹剣だよ。この世界には無いのかな?あ~でも原作で使ってた人いなかったし、普通に考えて存在しないよね」

 

 女の剣は異常だ。

 小さな刃がワイヤーで繋がれ、等間隔に分裂して鞭のように変化している。

 その上、ワイヤーの長さがどこまでも伸びているのだ。


 しかし、真に異常なのは女からも剣からも魔力を感じない事だ。


 無限のリーチも、鞭の様になった刀身の操作も、魔力の補助無しに行っている。

 そんな芸当、魔王様でも出来るはずもない。


 「魔力も無しにその様な動きが出来るはずないでしょう!」

 「出来るんだよねぇ。だってこの武器は私の世界で作られた武器だからさ」

 「私の世界?」


 この女、何を言って。


 「私はこの世界とは別の世界から来たんだ。初恋の人に会うために」

 「こことは違う世界が存在するとでも?」

 「そそ。というか、そもそもの話ここ小説の中の世界なんだけどね」


 女はそう言うと、一つの本を取り出した。

 表紙には目に悪いぐらい鮮やかな色彩で描かれた絵。

 そして、見たこともない文字が描かれている。


 「君はこの本に出てくる登場人物。【パーティーから追放され、役立たずと言われた俺。実は嫉妬の悪魔の契約者だったらしい~今さら戻れ?どう考えてもお断りです~】って名前の小説でー」


 「そんなバカみたいな書き物の登場人物?!この私が??」


 「バカみたいとは失礼な。様式美と言ってほしいね」


 「ふざけるなよ人間の女。さっきから聞くに堪えない妄言の数々。そんな話が真実であるはずがない」


 「全人類傀儡化計画だっけ??強化薬とか適当な事言って、魔族の血を人間の体内に混入させるつもりだったんだよね」


 「は?」


 なんで、この女が私の計画を知っている。

 この計画は四天王と魔王様しか知らないはずだ。

 それをあろうことか、ただの人間の女がどうして??


 「だから、全部この本に書いてあるんだよ。君が過去に何をしたかも、これから何をしようとしているのかも」


 嘘だ……あり得ない。


 「因みに私は君の事大嫌い。君の計画のせいで、私の初恋の人は化け物になって悲惨な人生を歩む事になった訳だから」


 だったらなんだ。

 私の思考も、あの時魔王様に誓った忠誠も、あの身を焦がすような恋も。

 全部全部、誰かの考えたシナリオに沿っていただけだと言うのか??


 「そんなもの……そんなもの、認めるはずがないだろうが!!!」


 気が付けば、私は女に向かっていた。

 激情に任せて、この女を殺さんと力を振るい立たせていた。


 「あっちゃ……錯乱しちゃった」


 しかし、目の前の女はそんな私に対して焦りの顔一つ見せない。


 「やっぱり、この世界が物語の世界である事は隠した方がよさそうだね」


 面倒くさそうな顔をして、私の首に打撃を与えた。




 追放ものというジャンルがある。

 主人公が性格の悪いパーティーリーダーから追放される所から始まる物語だ。


 主人公はそこから真の仲間とも言える存在と出会う。

 反対に、悪いリーダーの方は基本ろくな目に合わない。


 このジャンルはよくできた勧善懲悪。

 反吐が出る悪役を主人公が殴ってスカッとする物語。


 「だけどさぁ。悪役の側に恋しちゃったら敵わないよねぇ」

 

 私が恋したあの人は、世界の全てから嫌われている。

 だってそうだ、彼は悪役として作られたキャラクターだから。


 物語世界の住民たちから、小説を読んでいる読者から、小説を書いた作者から、みんなから嫌われるようにと願いを込められたキャラクターだから。


 「スレドと実際に合えるって考えると……ちょっとドキドキしてきたかも」


 スレド・オールディル。


 この世界で誰よりも嫌われた悪役。

 作中の人物からも、読者からも、サンドバック程度にしか見られていない存在。

 最後にはアスタロトとか言う四天王のせいで醜い化け物になって死んでしまう人。


 だけど、私が愛して愛してやまない人。

 そして、私の初恋の人。

 

 そんなスレドを救うために、私はこの異世界にやってきた。


 『そんな願いの為に私を殺すのか?私は社長だぞ』

 『やめて、まだ子供が要るの』

 『嫌だぁ……痛いよぉ』

 『それでいい。もっと狂っていいぞ青石浅野!!どうせならこのデスゲームを楽しめばいい』

 『青石浅野、君を殺して私はゲームに勝つ。勝って願いを叶えるよ。この世界を元通りにして全部やり直す』


 まぁ、願いを叶える代償でちょっと業を背負ったけど問題なし。

 前の世界での罪なんて時効時効。

 忘れるに限るよね。


 さて、やることは沢山ある。


 「時間軸は神様に指定したし。うん、問題なし」


 【パーティーから追放され、役立たずと言われた俺。実は嫉妬の悪魔の契約者だったらしい~今さら戻れ?どう考えてもお断りです~】の第1章、10話。


 スレドは主人公に闇討ちを仕掛けるも失敗、ヒロイン達にボコされる。

 挙句の果てに魔王軍の四天王の一人に誘惑されて化け物へ落ちる。


 今私が居る時間軸はその前日。


 「まずはこのイベントを回避しよう」


 幸いにも、スレドを誘惑したクソ四天王は絞めた。

 なんとかコイツを殺さずに貼り付けにして……これをスレドに渡すプレゼントにして……うんうん、計画通り。


 「待っててねスレド。今、会いに行くから」


 後は、本人に合って話すだけだね。

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