第40話 近いっ!

「……なにやってんだ?」


呆れた声が、頭の上から降ってきた。


その声につられて顔を上げると、夜翔が目の前に立っていた。


………っ

“好き”を自覚してしまったせいか、思わず勢いよく顔をそらしてしまう。


う、わ……。今のは、さすがに不自然すぎたかも……


おそるおそるチラッと夜翔を見ると、彼は不審そうに眉をひそめていた。


「……なんだ? 俺、なんかした?」


夜翔が怪訝そうしたまま、少しだけ身を屈めてこちらを覗き込んでくる。


し、したちゃしたけど……っ

それどころじゃないっ! 距離が……近いっ!


「あっ、いや、ち、違くて……!」


慌てて後ずさろうとしたら、足がもつれてつんのめりそうになる。

それを夜翔が、反射的に腕を伸ばして支えてくれた。


「お、おわっ……」

「お前、ホントどんくさいな……」


「そういうとこは変わんないのかよ……」と言いながら呆れたように笑うその顔が、思ったより近くて──

胸の奥が、ぎゅっと音を立てた気がした。


「え、えっと、あの……」

「よく分からんが、とりあいず部屋に入るなら入れ、外で挙動不審すぎてたまらん」

「え?あ、ちょっとまっ」


反論する間もなく、引きずられるようにして部屋の中に入ったのだった。

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