第39話 気のせいよね?

──だから……岬くんの気持ちには応えられない。それを、ちゃんと伝えなきゃ。


だって、私の心はもう、あの人──夜翔のことを見つめているから。

あの日、声に出せなくて泣きそうな私に、ただ一言で救ってくれた──あの人を。


でも、言葉にするのが怖い。

関係が壊れるかもしれない……


胸の奥が締めつけられるように痛む。

だけど、それで曖昧にするわけにはいかない。


その決意を胸に、私は静かにみんなのもとへ戻るために歩き出した。


辺りはすっかり夕暮れに染まっていた。



◇◇◇◇◇◇



みんな、もう帰ったかな……


どうにか部室?まで戻ってこれたけど……さっき『もう無理!!』とか、めっちゃ恥ずかしいことを言って飛び出した気がする……。


もう〜っ……なんであんなことに……

入りづらいっ……。穴があったら入りたい……。


……でも、荷物は置いたままだし………


ふう──ドアノブに手を掛ける。

……みんな帰っていますように……っ


ガラッ

小さい音がして、室内に視線を向けると、音に反応した全員がこちらを見ていた。


ヒュッ


思わず息を飲む。


ピッシャリ


そして、そっとドアを閉めた。



……………

気のせいよね?うん、そう……きっと、気のせい。


今日いろいろと起きたし、夢かも。


ほんのちょっとだけ隙間を開けて、中を窺う。


───………

うん、全員いた。


思わず、ほっぺをつねる。

……いたい……ゆめじゃない……


えぇえ、どうしよう……。


ぐるぐると頭の中で悩んでいた時だった。


「………おい」

「ひゃいっ」


声が情けないほどに裏返ってしまう。

一瞬で顔に熱が集まった気がした。

どこに目を向ければいいのかも分からず、視線が宙をさまよう。

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