第43話 ん?
「砂漠を通じて国外に逃がすしかなかった余の不徳を許してほしい」
あの生き地獄はてめぇのせいかぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!?
なんて、ノリでブチ切れる場面ではないことは騎士や文官たちの表情を見れば明らかなので話を聞いてみることにした。
「なぜ?」
「うむ。お前にはあまり伝えていなかったな……」
長かったので要約するとこうだ。
俺はとある貴族の娘と若かりし日の国王がはっちゃけた結果生まれた子であり、幼い頃は王都にある王家の別邸で育てられていた。しかし、それに気付いた王子の母親……つまり王妃が俺を殺そうと企んだ。
当然、国王はそれを察知して阻止しようとしたが、王妃が雇ったものが予想以上にやばいやつで、泣く泣く俺を砂漠を通じて国外に出すことで生かそうとした。
涙ながらに語られ、国王にハグされた。
加齢臭はんぱないからやめてほしい。
「そんなことがあったなんて……」
「うっうっ……」
「陛下……レオフェルド殿……いや、レオフェルド王子……」
それを見ている騎士や文官たちまで『お辛かったでしょう』などと泣いているが、それって王妃様大丈夫か?
いくら地位があっても、王子の命を狙うなんて……と思ったが、サーシャがこっそり教えてくれたことによると、王妃は既に死んでいるらしい。
つまり、死人に口なし。
ほぼ全部嘘だってことまでサーシャが俺の心の中で囁いていて、目の前で繰り広げられるお涙頂戴な展開とのギャップに唖然としてしまう。
まぁ、結論としては、俺には王子としてこの国の将来を託すとともに、結婚相手として聖女……なんて提案は全くなく、クリスフェリア・ラッシュベルトと結婚することだった。国王はわかってるなって思った。つまり、問題ない。
しいて言うなら将来国王になってしまうこの状況をどうしようかってことだけど、あのクソ王子よりもまともである自信はあるし、俺が国王になったらあいつどんな顔をするかなっていう、ちょっとしたささやかなざまぁ心はある。
改編、ここに極まれり、だな。
『あっ、ごめん……たぶんその王子ってのはチューチューしちゃったの~』
「お前……」
『だって~、魔神の力で消えていくところだったからぁん』
「別に怒ってないから、すり寄ってくるな。もう手一杯だ」
『いつの間にこんなに増えたの~~~。きぃ~~~~~~。ちゃんと見張ってなさいよ、この引きこもり聖獣~~~~~~~~』
『なんだと、このむっつり悪霊め!』
どうでもいいけど、ここで戦い始めるなよ?
ということで、そこで今日のお話はお開きになった。
サーシャとフェルノアは適当にどっかに飛ばしておいたが、余計な方向に思考を傾けたせいで反応がおざなりになった俺の様子を見た国王が、話しを打ち切った。
国王が言うには、しばらくの間は魔王を倒した俺たちは休暇のような形でのんびりしていればいいらしい。その間に王城を修復したり、魔神の被害を確認して体制を整えていくとのことだ。
葵はここにいるけど、そもそも人間側で魔王だと知って直接見たことがあるのは国王と王子と聖女だけだから問題ないよな?
そして……
「魔神を……あの強大な敵を完全に倒したってことよね? さすがだわ、レオ」
フェルノアがいなくなった左側からまるで歴戦の友のような態度で聖女が何か言ってるけど、お前、あんまりわかってないだろ?
まぁ、俺を狙い始めたこいつはちゃんとわかってるみたいで、左腕を取ってきた。
うまうま。
でも、そんなことはどうでもいい。
「「あっ??」」
俺はわずかな距離だけ転移することで右腕に寄り添っていた葵と左腕を取っていたエルから解放される。
よろめいてあわあわってなったのはまぁ、ちょっと可愛かったけど、今は悪いがお前たちじゃない。
俺は国王の話を一緒に静かに聞いてくれていた最愛の相手に向かい合う。
ん? 誰が静かに聞いていたのかって?
聞いてただろちゃんと。
全部ばっちり理解したから問題ない。
そして……。
「リア……」
「お義兄さま……?」
明るい茶色のゆるふわな髪に、穏やかで明るい表情がめちゃくちゃ可愛い。
ちょっと首をかしげてるとこなんてもう最高だ。
ここに笑顔なんて加わったら悶絶してしまうこと間違いなしだ。
なぜ今、俺の手元にスマホがないのか?
「俺は君を守りたかったんだ」
「……守ってくれました」
言葉を交わすと、あの悲惨な光景が一瞬頭に浮かぶ。
「君は知らないだろうけど、もっと酷い結末がありえたんだ」
「……はい……」
永遠にこの子を失ってしまった悲しい記憶……。
二度とあんな思いはしたくなかった。
同時に、この子に悲しい思いなんかさせたくなかった。
「ここに来た時からずっと、それを回避することだけを考えてた」
「……はい」
ゆっくりとリアに近付くと、彼女は優しく抱擁してくれた。
温かい……。
守れたんだな。
その温かさが、実感させてくれる。
2人揃って生きている。
俺は、ちゃんと未来を変えることができた。
胸が熱くなった俺はリアの頭に片頬を預け、彼女を優しく抱き返した。
「好きだよ、リア……俺と、結婚して欲しい。絶対に幸せにするから」
「はい。……ありがとう…………
「ん?」
fin.
***
お読みいただきありがとうございました。
このお話はゲーム世界転生を真面目に(?)書いてみようと思って書いた作品でした。いかがでしたでしょうか?
もし、面白かったと思って頂けたら、作品フォローや星評価、および作者フォローを頂けるととっても嬉しいです。続編、外伝は……検討中です汗汗
今後もたくさんの作品を書いていきたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。(作者フォローしていただければ、新規公開時などに通知が行くと思いますので、ぜひよろしくお願いします)
蒼井星空
追伸)
一昨日(2025/9/1)から開始した新作のご案内をさせて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします。
■タイトル:『チュートリアルで魔王に殺されるはずの高スペックな第三王子に転生したので、持てる力の限りを尽くして魔王を消し去った件』
■キャッチ:推しの奥さんとスローライフを満喫したいんだけど、邪魔しないでくれる?
■URL :https://kakuyomu.jp/works/16818792438876479360
■あらすじ:
チュートリアルで魔王に殺される……。
そんな「やられ役の第三王子」に転生した俺は、予定調和をぶち壊して全力で魔王を撃破する。
えっ?
どうしてそんなことができたのかって?
最推し、かつ、最愛の婚約者ミルフィナちゃんを悲しませないため。彼女と一緒に明るく楽しく生きていくために頑張ったんだ!
色々とイチャコラ……じゃなかった、努力したり準備したんだぜ?
この世界で俺しか持っていない特殊魔法……"創造"の力で。
そして、残念ながら荒廃した世界で俺たちは俺たちなりに生きて行こうと思う……♪
クソゲー転生~世界を救ったのに待っていたのは【恋人の裏切り】と【義妹の悲惨な死】……『ふざけんな! こんな物語、絶対に改変してやる!』 蒼井星空 @lordwind777
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます