第2話 アイヌの大地

ストレンジャーから狙われる一人の男を救ったエクシード・チルドレンの一人、カイル。

男は彼に礼を言いながら自分達の村に来てくれるよう願った。

「やはりまだ生きている人々が居たんですね?」

日ノ本の最北端に位置するアイヌと呼ばれるその地をカイルは仲間達と共に探索している途中だった。

「ああ、この地は広い。まだまだ生き残った人間や各方面から避難してきた者が集まっている村もあるはずだ。しかし…。」

言葉を詰まらせた男にカイルが告げる。

「ストレンジャーか…。」

「ああ、北の海を渡って奴らはこの地に上陸してきた。日ノ本とは違う国から…。」

「凶兵部隊とはまた違うストレンジャーがここを嗅ぎ付けていたようだな…。」

カイルが男と歩いていると、一台のジープが通り掛かった。

「カイル!」

運転するのは赤い髪を無造作に伸ばした女。

黒いタンクトップとカムフラージュパンツ、軍用ブーツを履いたその女兵士の助手席に同じくカムフラージュのジャンパーとズボンを履いた茶髪の少年。

「カイル!やっぱりまだ人間が居たんだな?」

女兵士と少年が車を降りてカイルの方に歩んで来る。


「リシェルと火ノ丸…俺と同じくエクシード・チルドレンの者だ。」

警戒する男にカイルは説明を述べる。

「女と子供までいるのか?」

男の言葉にムッとしながら応える火ノ丸。

「おっさん、ガキだからって舐めてもらっちゃ困るぜ!」

火ノ丸は指先に炎を灯して男を驚かせるが、すぐにリシェルのゲンコツを頭に受けた。

「痛っ!」

「調子に乗るんじゃない。」

呆気に取られる男にカイルが話を進める。

「まだ近くに新手がいるかもしれない。あなたの村まで送らせてもらう。」


カイルは男をジープに乗せ、リシェル、火ノ丸と共にそこから東の農村へと向かう。

寂れてはいるものの、村にはまだ活気が残っている。

「へぇ、辺境の地だと思ってたが、ちゃんとした村だぜ。」

「いちいち一言多いんだよあんたは…。」

今度はリシェルに頬をつねられる火ノ丸。


「おお!ヨシオが帰ってきたぞ!」

村人が帰ってきた男に手を振る。

「残念だが、西の町には既にストレンジャーが縄張りを占めていた。我々の移住には危険過ぎる…。」

ヨシオは、村人達に近隣の現状を伝えていた。

「しかし、このままじゃいずれここも奴らに占領されてしまう…。ワシら老いぼれはともかく未来のある若者までが殺されては…。」

「安心しろ。偶然だが、彼らが来てくれた。」

ヨシオはカイル達三人を村人に紹介する。

「おお!この方達が噂のエクシード・チルドレン様か…。」

「こんな忘れられた大地にまで来て頂けるとは…。」

老人達は手を合わせて三人を拝む。


「へへ、まるで神様にでもなった気分だな。」

胸を張る火ノ丸を押し退けてリシェルが前に出る。

「この大地にはまだ自然が生きています。この大地のエネルギーを私のエクシード能力で他の土地にも分け与えられれば、荒廃した世界が元に戻るんです。」

「その為に俺達は、この大地を救いに来た。」

リシェルとカイルの話を聞きながら村人達は、他の日ノ本の大地が荒れ果ててしまっている事に驚き、悲しんだ。

「元はと言えばワシらの祖先が地球のエネルギーを文明の為に使い過ぎた結果じゃ…。」

「まさかそこまで他の土地が荒廃してるとはねぇ…。」

嘆く老人達にカイルは、厳しい表情で続けた。

「確かに人類は地球の恩恵にあやかり過ぎたのかもしれない…。だが、それを復興させようとする人間を死滅させようとしているのがストレンジャー達なんです。奴らは人間を食料にし、新人類として地球そのものを占拠するつもりだ。」

「地上の生物以上の繁殖力で増えていく…。」

「そんな害獣達に立ち向かうのが俺達エクシード・チルドレンってわけよ。」

カイルに次いでリシェルと火ノ丸も言った。

「ストレンジャー達から村を守ってくれるならここの大地のエネルギーってのをいくら使ってもらっても構わない。」

「ああ、何ならいっそこの地にまだ残ってる人々にも力を貸してやってくれんか?」

ヨシオ達は快くカイル達に協力を惜しまなかった。


それから数日、村を襲って来るストレンジャーが何体か現れたが、カイルとリシェル、火ノ丸の前に駆除されていった。


日ノ本最後の理想郷とされるその大地から更に海を渡った大地にストレンジャー達の集落があった。

かつては露国と呼ばれたその地もストレンジャーの支配によって荒廃させられていた。


集落となる港には総勢三千体にも及ぶストレンジャーが集まっていた。

「ヴァイハム様!南にある広大な大地へと向かった先遣隊からの連絡が途絶えました。」

防寒の為の毛皮のような衣装を纏ったストレンジャーの男達がモヒカンヘアーの凶悪そうな髭面の巨漢に報告を述べる。


「何だと?あんな人間も無さそうな大地で何があったって言うんだ?」

「先遣隊が一人も戻らぬ為、確かな事は分かりませんが、もしかすると…エクシード・チルドレンが居るのではないかと。」

ヴァイハムの顔が強張り、猛獣の目と牙を剥き出す。

「エクシード・チルドレン…。噂じゃ凶兵部隊をも殲滅させたって言う奴らか…。」

「あの大地を狙うのは止めておきますか?」

「馬鹿言うんじゃねぇ!今やエクシード・チルドレンには懸賞金まで掛かってるんだ。このヴァイハム様の力を見せるには絶好の機会よ!」

グリズリーのような凶獣と化したヴァイハムが三千のストレンジャーの軍勢を率いて理想郷へ進軍しようとしていた。

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