九振
彼女たちは自分たちが何者で、どういった状況であるかを教えてくれた。
「わたし達は皇を討ちたい。けど、そのためにはあなた達の力が不可欠なの。」
「貴方たちの命が危険に晒されてしまうってことも含めてよく考えてほしい。それでもいいというなら私たちに力を貸してほしいの。」
そう言って頭を下げた。僕と蒼空は顔を見合わせた。初めから答えは決まっている。
「もちろん俺たちは協力するぜ。こんな日々に憧れていたんだ。」
「あぁ、僕らでよければ手伝わせて欲しい。他じゃ経験できないよ、こんなこと。」
その返事に彼女達は安堵と喜びを見せた。もう一度頭を下げる。
「「力を貸してくれると言ってくれてありがとうございます。これからよろしくお願いします。マスター。」」
「「こちらこそよろしく。」」
「ところで、マスターじゃない呼び方の方が嬉しいんだけど、いいかな?」
「僕もそう思う。それに君たちの名前も長かったし、君たちと同じように、ティルとレヴィって呼ぶけどいい?」
この問いに彼女達はうなずいて同意したが、少し恥ずかしそうにしていた。
「急に名前呼び出来るのね?」
「そりゃ、呼びやすいように呼ぶだけだから。」
そう言われるとこっちも少し照れるような気がする。
「じゃあ、私たちも名前で呼ぶ…」
全員が照れ隠しできなくなったため蒼空が話題を変える。
「…なぁ、寝泊りってどうするんだ?」
その問いに対して、彼女達は「あ。」と声をもらした。どうやら考えていなかったらしい。
「一応博士からお金はもらっている。どこかに住む分には問題ないはずよ。」
「いや、君達、僕らと多分年齢同じぐらいだよね?それに戸籍とかないから賃貸契約なんてできないぞ。」
「どうします、レヴィ?」
「宿屋行く?野宿セットも一応持たされたはずよ。」
彼女たちは二人でひそひそ話している。
慌てふためく二人に蒼空が提案した。
「じゃあとりあえず、ここに住むか?」
「ちょっ、それはヤバいって!」
と言いかけたときには、彼女たちが
「「お言葉に甘えて、お願いしたいです。」」
と言ってきた。あっ。いいんだ、意外~。
こうして突然僕らは美少女二人と住むことになった。なんかすごいことになってしまった。
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一旦僕らは隣にある蒼空の部屋に行った。
「おい、蒼空。これ大丈夫か?母さんたちに何か言われるぞ。」
「いや、別に俺らが俺の部屋で、あいつらが悠羽の部屋なら大丈夫じゃね?部屋が違えば鍵もかけられるし、一応二人でもこの部屋は狭くないだろ?」
どうやら僕の勘違いだったようだ。危ない危ない。勝手にラブコメ展開にしていた。
「まぁ、俺らはこう思っているけど、あいつらがどう部屋割りするかは期待してもいいんじゃね?一応あの時あえて言及しなかったんだから。」
前言撤回、僕の親友はめっちゃ期待していた。
「でも、とりあえずは後回しでしょ。まずは母さんたちに連絡しなくちゃ。」
「そうだな。マジで、今日が週末でよかったぜ。明日一回家に帰れるからな。」
僕は母さんに電話をかける。数コール後にとに母さんが電話に出た。
「もしもし悠羽?珍しいわねぇ。そっちから電話かけてくるなんて。なに、彼女でもできたの?」
当たらずとも遠からずの内容にびっくりした。さすが親である。ちょっと動揺しながら続ける。
「い、いや、違うよ。でも今から一旦家に帰ろうと思うんだ。蒼空とあと二人連れていくけどいい?」
「今から⁈まぁでも、悠羽。ついに蒼空以外のお友達を連れてきてくれるの!楽しみね!けど、これからはもっと早くいいなさい。」
そう言われたので謝ってから電話を切った。そして僕らは僕の部屋に戻った。
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