四振

僕らは後ろめたさを感じながらも、僕らの担任に噓の体調不良を訴えた。それから他の生徒達に生徒じゃない美少女を連れているとバレない様に剣の状態にして隠しながら、なんとなく家に着くまで剣状態のまま急いで帰って来たが、途中で元に戻してもよかったと思った。学校を出た。多分めっちゃ怪しい動きをしていた気がする。


(悠羽の自室にて)

部屋に入ってから、彼女らは僕の部屋をなめまわすように見ていた。別に、SF小説とか気に入ったCDぐらいしかないぞと思いながらも、僕は話し始めた。


「ちゃんとした自己紹介がまだだったね。僕は調月悠羽。よろしく。」

「俺は鷹司蒼空だ。よろしく」


そう言って僕らは手を差し出した。しかし、彼女らとは普通に握手ができないことを思い出した。何とも言えない微妙な雰囲気が流れてしまった。重くなった流れを断ち切るようにティルフィングが口を開く。


「まずはわたしたちについてと、私たちがいた世界についてお話します。」

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ここは君たちがいる世界とは別の平行世界のお話。この世界には4つの大きな国家があった。みんながよく知っているメルカトル図法で説明すると、大陸は北半球側の西半分と南半球のほとんど覆う超大陸がある。その大陸の北部にエレメント共和国、中部にノヴァ連邦、南部にフェノメ共和国がそれぞれ存在する。そして残った北半球の東側には大きな島国のレガシー王国で存在する。

皇歴2605年エレメント共和国の首都マナが突如宇宙から襲来した皇(すめらぎ)と名乗る、謎の魔龍とその軍勢によって、壊滅的な被害に陥る。人々の負のエネルギーを吸収し勢いに乗った軍勢は、わずか半年足らずでエレメント共和国を手中に収めた。もちろんこの世界の人々もやられるのを黙ってみているだけではなかった。連合国軍が編成され反撃に出るも、敵の軍勢に対して、通常兵器の類はほとんど効果がなく、少々軍勢の進行を遅らせる程度であった。唯一効果のあった核などの戦略兵器は環境影響によりなかなか使用できない問題もあった。

そんな中、皇歴2607年にフェノメ共和国の研究者のイノベ博士により希望になる発見があった。ドラゲニウムに耐性のある遺伝子とドラゲニウムを自在に操れる遺伝子のそれぞれの配列の発見である。ただ残念ながらこれらの遺伝子配列は人工的にしか生成できないものであった。

(※元々この世界の大気中にはドラギニウムという粒子が存在していて、これを人工的に凝集させ、ドラゲニウムにすることで莫大なエネルギーを生み出し、世界で広く利用していた。この技術は軍事転用が長年研究されていたが、人体に有害で精密機械を狂わす性質が影響してなかなか進んでいなかった。)

しかしイノベ博士の発見によりこれまで禁忌とされた人類の創造が合法化し、各国の研究者はドラゲニウムに耐性があり、自在に操れる少年少女達を生み出していった。

彼らの登場により戦況は一変し、一時ノヴァ連邦の首都シンセサイズにまで迫っていた前線を一気にエレメント共和国との国境まで押し上げることに成功した。

彼らは人々からマジシャンズと呼ばれ、英雄のように扱われた。

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