五振

マジシャンズの活躍により、皇歴2610年ついにエレメント共和国の首都マナを奪還する最後の作戦が始まった。


(首都マナ・魔龍皇の本拠地、魔龍城・王の間)

そこには苛立ちを隠せない様子の皇とその部下たち複数人がいた。部下はドラゴノイドのような姿であった。


「まさか、ここら一体にあった負のエネルギーすべてを使ってもマジシャンズの進行を食い止められぬとは思わなかったぞ。くそっ!この世界でも人類に世界征服を邪魔されるとはなぁ。しかしまだ手はある。また次の世界に行き、今度こそは世界を我のものにする。呪光じゅこう様をお呼びしろ!」

「かしこまりました、皇様。少々お待ちください。」


そう言って出ていった部下は数分後に年老いた小型のドラゴノイドを連れて戻ってきた。


「お久しぶりでございます、皇様。この呪光を起こしたという事はまた戦況がよろしくないということですね。わかりました。今すぐ時空転移の儀を始めましょう。しかし皇様、私ももう年だから多分この儀式ができるのももう最期だと思うのよ。皇様とともに次の世界へは行けないことが悲しくて申し訳ないわ。」


呪光や周りの部下、皇たちの間に寂しさを感じる沈黙が流れた。


「そうであったか、これまで幾度も我らを救ってくださったその力ももう使えなくなるのか。今まで呪光様には大変世話になった。次の世界では今度こそ必ず世界1つを手中に収めると誓おう。」


その決意を聞いた呪光は優しく微笑み皇に語り掛ける。


「我ら一族の悲願を頼みます、皇様。それでは私は準備がありますので失礼します。数分後に奥の間にお越しください。」


そう言い残すと呪光は奥の間に向かった。数分後皇が奥の間に行こうとすると、一人の部下が王の間に焦った様子で勢いよく駆け込んできた。


「皇様、ついにマジシャンズが魔龍城への侵攻を開始するようです。現在城の前がフィールドで囲まれています。」


この部下の言葉に他の部下たちに緊張が走るが、一人の部下が叫ぶ。


「皇様、ここは我らに任せて先にお行きください。皇様が次の世界に渡るまでの時間ぐらい稼いでみせます。もし、そのあとも命がありましたらまた、次の世界でもお仕えいたします!」


この部下の叫びに呼応され他の部下たちも口々に「そうだ!」と賛同していく。


「すまない、お前たち。お前たちも死ぬなよ。」


皇は目頭を熱くしながらつぶやくと奥の間に入っていった。それを見た部下たちは王の間から飛び出し、マジシャンズを討つために駆けていった。


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