20.ヒーローvs怪人
刀と銃を手に持ったヒーロー。
「ブレイカー…、お前がブレイカーか…。お前は最優先に殺せと言われたな…」
「…研究施設は潰して、研究員も死んだはずなんだが…。まさか生きてんのか?」
「俺がそんなもん知るかよ。俺はただ、命じられたどうり殺すだけだ」
「はぁ、めんどくせぇな。まぁ俺達も、どうせお前らを殺す事に変わりはねぇ。ただ、できれば弱え個体であってくれよ?今日はもう3体目なんだ…」
そう言った後ブレイカーは、銃弾を3発撃つ。
キンキンキンッ、と硬い金属音が3回鳴り、3度目に銃弾を弾いた瞬間に、怪人の視界からブレイカーが消える。
怪人はすぐさま後ろに振り向き棘棒を振る。
ガギンッと甲高い硬いもの同士が当たる音がする。
「舐めんなよ」
「面倒くせぇな」
ブレイカーがダルそうに呟く。
怪人はせめぎ合っている棘棒を大きく振ってブレイカーを飛ばして距離をとる。
ブレイカーは後ろに飛びながらも、銃弾を数発放つが怪人は全て棘棒ではじき飛ばした。
「銃は効かねぇスピードもはええ、パワーも俺並みはありそうだな…。ちょっと強え個体じゃねぇか面倒くせぇ…」
カンカンと肩に刀を当てて思案する。
棘の怪人は無言でブレイカーへと迫り、大上段から振り下ろした棘棒をブレイカーがバックステップで回避する。
その攻撃はコンクリートの地面を大きく陥没させ、威力の大きさを物語る。
「試しに撃ってみるか…。【ブレイクコード・ワン】」
刀を腰辺りに据え、抜刀するように構える。
『confirmation』
機械音声が鳴ったと同時に、ブレイカーの持つ赤い刀が淡く輝き、スパークを発生させる。
ブレイカーはそれを、斜め下から切り上げるように振り抜く。
すると刀からスパークを纏った斬撃が放たれ、真っ直ぐと怪人に向かう。
怪人はすぐさま2本の棘棒をクロスさせて防ぐ。
「オ、オオ、オオオッッ!!!」
足で踏ん張りじりじりと地面が削れるように後退するが、裂帛の気合を入れて怪人はブレイカーの放った斬撃を砕いた。
どうだと言わんばかりに目の前にいたブレイカーへと視線を向けるが、既にその姿は無かった。
ガギィン!と、凄まじい衝撃音と共に、怪人の頭にまたもや銃弾がヒットした。
また後ろかと振り返りざまに棘棒を振るが、誰も居ない。
だが遠方の空、1つのヘリから何者かが巨大なライフルを構えていた。
(さっきのはアイツか…!)
怪人が一瞬今戦っている相手の事を忘れる。
「【ブレイクコード・ゼロ】」
『confirmation』
声は真上から聞こえた。
咄嗟に頭上を見た時には既に、目の前にはブレイカーの踵が顔面にあった。
スパークを伴うかかと落としが、怪人の顔面にクリティカルヒットする。
ズガガァァアン!と数m規模のクレーターが発生し、巨大な土煙が発生する。
煙が晴れた後そこにいたのは、ブレイカーだけであった。
怪人は既に灰へと変わり、宙に舞っていた。
「す、すごい…」
いつの間にか魔法少女の姿が解除され、茶髪の学生服姿になった普通の少女は、その光景をバイク越しに眺めて呟く。
ブレイカーはゆっくりとバイクの方へ歩きながら、ベルトを外して変身を解除する。
「大丈夫だったか?」
「は、はい。なんとか…」
「そうか、良かった」
『アキラさん、俺が撃ってなかったら危なかったんスからね?危うく手遅れのヒーローになる所でしたよ』
左耳にかけたイヤーカフ型のイヤホンから男の声がして、アキラは左耳に手を当てて返事をする。
「あぁ、助かった。最後のアシストも良かった。また頼む」
『いや、アキラさんは基本自分でなんとかしてくださいよ。ここの最高戦力なんスから。俺もあんまり外出すぎると青峰さんが拗ねるんすよ』
「人員増やせばいいのにな…」
『てかあの子どうします?能力者?だとは思うんすけど、戦ってたのあのうさぎなんスよね…』
「え?うさぎ戦うの?」
アキラの言葉に、やんちーがビクリと反応する。
やんちーは少女の膝に乗っかっており、少女はやんちーの反応に微笑み、思わず撫でる。
「撫でんな!」
小声で文句を言うやんちー。
やんちーは撫でられるのがあまり好きではないようだ。
『じゃ、俺は先に戻りますんで。あの悪魔っぽい奴対処しないと…。なんか青峰さんが仲良くなってますけど』
「え?あれ友好的なの?」
アキラは既に映像で悪魔(レド)を確認していたが、別の暴れている怪人の対処で忙しかったので、代わりに青峰が向かっているという話だけ聞いていた。
いつも事務仕事ばかりやっているが、能力が強いのでなんだかんだで怪人も倒せるぐらい強い。
ただパソコン作業もかなり上手いので、青峰は基本事務仕事を担当している。
『なぁんか異世界の奴らしいっスよ。んで青峰さんが異世界なろう大好きで、話し込んでました』
「なんじゃそりゃ…。まぁいいや、とりあえず俺はこっち対処するから、あとよろしく」
『あい〜っス』
そう言ってチャラい感じの同僚との通話を切って、少女達へと向き直る。
「んで、え〜っと、俺の名前は藤原晶だ。お嬢ちゃんの名前を聞いても?」
そう言いながら、未だに地面へぺたんと座り込んでる少女へ手を差し伸べる。
少女は手を取り、素直に立ち上がる。
「えと…、雛森桜です。と、こっちがやんちーです」
そう言って片手で肩に乗ったうさぎの肩を撫でる。
一瞬びくりと身体を震わせるが、目の前に人が居るので、奇声はあげなかった。
「撫でるなって言ってるだろ…。あと、俺は羽切王我だ。よろしくな、おっさん」
「おっさんは失礼でしょ!せめておじさんって言ってください!」
「んだよ面倒だな…。はぁ、アキラって呼んでいいか?」
「別にいいが…。俺はやんちーって呼んでもいいか?」
「良くねぇよ!!!」
「やんちーで大丈夫です!ヤンキーっぽい口調だけど、可愛いからやんちーです!」
「な、なるほど…」
やんちーと呼ばれてはいるが、声だけ聞けば確かにヤンキーのような荒っぽいカッコ良さのある声色をしている。
「せめてもっとかっこいい呼び方にしてくれよ!恥ずかしいだろ!」
「恥ずかしくないです!友達にも好評です!」
「好評ってお前、いい加減ダチに見せびらかすのもやめろ!女からベタベタ集団で触られるの結構恥ずかしいんだよ!!!」
「じゃあその可愛い姿辞めればいいじゃないですか」
「見た目変える魔法は魔力食うんだよ!!」
「…私はビームしか出せないですから、やんちーが羨ましいです」
「俺は感覚派だから教えるのは無理だぞ…。てか休みの日に妖精界で学んだらどうだ」
「それは…、え?そんな理由で行っていいんですか?」
「まぁこっそりだぞ。リッチの家族に見られて、移動した妖精界の位置がバレたら、今度は人質でも取られるかもしれねぇからな…」
サクラとやんちーが会話している中、アキラはずっと遠い空を眺めていた。
辺りは既に暗い。普通の一般人ならばこの暗闇の中、街灯が照らす周辺しか見えない筈だが、アキラは何かをじっと見つめていた。
「あの、何かありました?」
さくらは1度アキラの向いている方向を見て、結局何も見えず、アキラへとまた視線を戻しながら言う。
「嬢ちゃん、今ってまだ戦えるか?」
「えっと、それはどういう…」
「怪人が6体…、同時にこっちへ向かってきてる…」
「え…」
「…まじか」
アキラが見てる方向をサクラとやんちーがもう一度じっくり観察すると、少しづつだが家の屋根を駆けながら近づい来る6体の怪人が見えた。
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