17.推定怪人2
その後特に用事もなかったレドは、大人しく車に乗車し、青峰に質問攻めにされていた。
「あの、レドさんは異世界から来たって言ってましたけど、ど、どういう世界から来たんですか!?やっぱり、剣と魔法のファンタジーな世界ですか!?」
キラキラした目でレドへと質問する青峰は、まるで無邪気な子供のようであった。
年齢は既に25である。
「あー、そうだな。まぁだいたいそんな感じだな」
「なるほど!それで、やっぱりレドさんって悪魔なんですか!?」
「いやだから悪魔じゃないぜ」
「えぇ〜?でも見た目は完全に悪魔ですよ!?この羽もすごい立派で…。あの、触っていいですか?」
「俺様が悪魔に似てるんじゃねぇ、悪魔が俺様を真似たんだ。あ、触っていいぜ」
「ひゃ〜かっこいい〜!すご〜、上の棘みたいなのもちゃんと骨がある…。羽もよく見たら血管が浮いてる感じ…、確かなリアリティ…。本物だぁ〜」
つんつんと慎重に突起に触り、膜になっている部分も掌でぽんぽんと遠慮なく触っていく。
触るとほのかに温かい。
「ふひぃ〜、あ、あの、握手もして貰っていいですか!?」
「いいぜ」
レドはいつものファンサのように握手をしてやる。
「ひぇ〜、お手手もおっきぃ〜。大人と子供ぐらいのサイズ感ですよこれ」
レドの指をギュッと掴んだり、遠慮なくもみもみしたりする青峰。
身長や体型は、一般的な女性の平均クラスの大きさの青峰だが、ガタイのいいレドと比べると、やはり大人と子供のようなサイズ差があった。
『先輩、一応相手は推定怪人なんですから、油断だけはしないでくださいよ?推定怪人ですからね?分かってます?』
「分かってるわよ。だから私が連れてこられたんでしょ?…ったく、なんで能力者が私しか居ないのよ。保護した他の子達はいつになったらここに配属されるの?」
『いやだって保護したの子供ばっかじゃないですか』
「なによそれ!?私も子供だって言いたいの!?確かに趣味はちょっと子供っぽいかもしれないですけどね!最近はアニメだって陽キャも見るようになってるんだからね!!」
『いや青峰さんが子供とは言ってないじゃないですかめんどくさいっすね』
「はぁーっ!!めんどくさいって言った!!!もう辞めちゃおっかなぁー!!パワハラだよこれぇー!!私パワハラされたぁー!!」
『めんどくさ…。青峰さんはいつも頼りになってとても…えっと、頼りになるなぁー』
「適当ーーー!!!もういいです!次かられんくんの仕事手伝いません!!」
『いやまじ青峰さんまじパネェっす!いっつも神っててマジリスペクトっす!可愛いし強いしなんでも出来るスーパーエリート!俺なんて足元にも及ばないカスでした!どうか許して欲しいっす!!!』
「ん、まぁそこまで言うなら?許してあげようかな?」
『チョロ…。いやまじいつもお世話になってます!今回もよろしくお願いしま…。あ、ちょっとすんません!怪人見つけたんでそっちの処理向かいます!』
「は?え?怪人?そっち1人で大丈夫そう?」
『アキラさんの方が近いんで、ちょっと連絡してみます。そっちでなんかあったら、連絡お願いしますね』
「わ、わかったわ、それじゃあ気をつけてね」
『あいーっす』
そう言ってヘリが遠ざかっていくのが確認できる。
「ところでいつまで俺様の指をにぎにぎしてるんだ?」
「あっ!すいません嫌でしたか!?」
咄嗟にパッと手を離す青峰。
「いやまぁいいんだけども」
「ほ、本当ですか!?じゃあもうちょっとだけにぎにぎ…」
(まだにぎにぎするのか)
余程珍しい感触なのか、ずっとにぎにぎしている。
「レドさんって、やっぱり魔法とか色々使えるんですか?」
「ん?まぁ色々というか、だいたいなんでも出来るぜ」
「じゃ、じゃあ異世界に行く方法ってありますか!?」
ワクワクとした表情で質問する青峰に、レドはあっけらかんと答える。
「そりゃまぁ俺様が作った魔法で来たわけだし、もちろん向こうにも行けるぜ」
「あ、そ、そうでしたね!じゃ、じゃあ私も異世界に行かせてくれたり…」
「…うーんアニメとかで異世界に幻想を抱いてるのかもしれねぇが、こっちの世界の方が普通に便利だから行かない方がいいぜ。衛生観念もこっちの方が綺麗だし…。そうだな、1回インドとか行ってみてそれが耐えれたら行くのもありじゃねぇかな。実際の冒険なんて、単に稼いで生きる為の行為だから面倒なだけだし、飯もこっちの方が美味いの多いし、ちやほやされる事も、たぶんほとんどねぇと思うぞ」
レドは悲しい現実を青峰に語る。
「うぅ、そんな現実聞きたくなかったです。私は夢見る冒険がしたかったのに…。ハーレムでイケメンの王子様達に見初められてイチャイチャして、何不自由ないモテモテ異世界ライフが送りたいだけなのに…」
(理想高ぇな…)
「で、でも、やっぱり1度は見てみたいです…。あの、今度異世界に連れてってくれませんか…?」
青峰はレドに上目遣いでお願いしてみる。
「ああ、別にいいぜ」
「い、いいんですか!?やったー!!!」
あっさりと承諾された。
「あ、あの、それじゃあうちの部署にも入ってくれたりは…」
「うーん、それはちょっと考えさせてくれ」
空いている手の方で顎をなぞり、少し悩んだふうに呟く。
「は、はい…」
青峰はちょっとしょぼんとなった。
だがレドの手をにぎにぎするのはやめなかった。
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