ことリテ、らしぃ!?
海先つむぎ
01 現代ダイナマイト
『スウェーデンの化学者および発明家のアルフレッド・ノーベルは、トンネル工事などの土木工事を、安全かつスピーディーに進める目的でダイナマイトを作りました。』
とあるまちの高層ビルの屋上。水色髪の少年は、宙に足をぶらぶらさせながら本のページを静かにめくった。
『しかし、ダイナマイトは戦争が起きると、武器として利用されました。自分の発明品が不幸の道具になってしまった現状にノーベルは深く悲しみ⋯⋯』
バタンッと少し大げさ程度に少年は本を閉じ、ため息をつく。
「こんなにも分かりやすい前例があるのに⋯⋯なんで人は気づかないんだろう? 便利なものは必ず、危険がつきものだってこと」
独り言をいいながら、ゆっくりまちを見下ろす。
赤信号になって止まる人、タクシーの後部座席に座る人、駅のホームで電車を待つ人⋯⋯少年は彼らの姿をはっきり見ることができた。
その人々は皆、顔を上げることはなかった。
「⋯⋯気づいてる人も多少はいるのかな。ま、とりあえず⋯⋯」
少年はポケットから赤い何かを取り出した。手鏡に近い大きさであるソレの反対側は真っ黒で、
「はやく、見つけ出さないと。これを起動できる、あの子を⋯⋯!」
* * *
「⋯⋯よし!! こんな感じでどう?」
セミの声が元気に聞こえてくる、昼休みの教室。
パレットに広がる、混ぜ合わせてできあがった黄緑色に、同級生は思わず目を大きく開けた。
「⋯⋯そう、これ! こういう色、ほしかったの!」
「サップグリーンっていう色に、レモンイエローをちょびっと加えたの。葉っぱに似合う色はやっぱりこれかな⋯⋯って思って」
「ほんとに色マスターだよねー。あと少しで完成だから助かったよ。ありがと、ここねちゃん!」
彼女はそう言って、せっせと自分の席に戻り、図工の作品を色塗りを再開した。
⋯⋯名前、呼んでくれた。
あの子とも、同級生から友だちになれる日が来るのかな。友だちってのが、まだよく分かってないんだけど⋯⋯
ここね―――
ミディアムヘアに真っ黒なひとみ。あの事を除けば、どこにでもいるような小学五年生の女子。これといった好きなことやシュミはない。けど、得意っていえることはひとつだけある⋯⋯と思うの。
「あ! ここね⋯⋯ちゃん、こんな色作ってくれる?」
窓の外に広がる青空をぼーっと眺めてた時、また別の子から声がかかった。
今日の昼休みもずっとのんびりはできないみたい。残念って思うと同時に、心の底からうれしいって感じる部分もほんのちょっとあった。
知ってるいろんなことから、うまく情報を混ぜて生かす。得意なことはこれだと、今は信じている。
絵画制作のなかで「色マスター」っていわれるようになったのも、色に関して詳しいってよりかは、多分そのことが得意だからだと、うまくいえないけどそう感じているんだ。
「なにが『色マスター』よ。絵の具の組み合わせなんて、今の時代検索したらイッパツじゃない?」
「それなーそういうので人気者になってるの、マジで笑える」
「だいたい、なんで記憶パーなのに、あんなに色には詳しいわけ? 絶対仮病みたいなこといって注目集めてるよね、あいつ」
また一人の色悩みを解決した時、後ろからそんな会話が聞こえた。
それって⋯⋯わたしのこと、言ってるよね。
振り返ると案の定、教室のスミで
人気者になりたいわけじゃないし、記憶がパーってのは本当だし。プイっと背を向けて、今日も頭の中で会話に反論しながら無視することにした。けど⋯⋯
「ねぇ、鈴野さん。いいもの、見せてあげる」
後藤さんがいつのまにか真後ろに立っていて、声をかけてきた。
驚いたけど、もう振り返らない。相手にする必要もない。
後藤さん、そんなの見なくて大丈夫。
そう言わないと、声をださないと。その時だった。
「じゃーん!! ほら、いいでしょ?」
彼女が手を伸ばして、わたしの目の前に「いいもの」を出してきた。
コワい。
何よりも最初にそれを感じた。
予想外だった。学校だから絶対にソレは存在していないって確信してた、わたしがバカだった。
突然のソレの登場で頭が真っ白になった。しばらくして我に返った時、叫び声が教室に響いていた。
「ひぃ、ひゃああああああああああああ!!!!!」
叫んでいたのはわたしだった。頭、あたまがクラクラする。
ごとうさんの笑みも、コワいっておもった。右手にあるソレ⋯⋯スマホよりかは何倍もマシだけど。
ひとつくらい、なにか言い返せた。スマホがその場になかったら。
いや、スマホがあれのゲンインじゃなかったら。
きっと。
もう、めのまえが、わからなくなった。
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