第5話 爆乳勇者パーティーをギスギスさせてみた





「――というわけで、彼女たちはスクロールを使って外部に助けを求めようとしていた模様です」


「あの爆乳勇者ども、ちっとも反省してないな!!」



 僕はシリルさんから報告を聞いて激昂した。


 どうやらルナティアのマイクロビキニアーマーには隠しポケットがあり、そこに緊急時の連絡手段たるスクロールが隠されていたようだ。


 シリルさんがそのスクロールの送信先を書き換えたからよかったものの……。

 もしシリルさんが気付かなかったら一大事だった。



「これはお仕置きしなきゃですね」


「おや、遂にあの人間たちを組み敷いて乱暴するのですか」


「い、いや、そこまでは、まだしない」


「……そうですか」



 何故か少し残念そうなシリルさん。


 しかし、僕を奴隷にするとか魔法の実験台にするとか宣ったあの爆乳たちはタダじゃおかない。



「何か奴らを分からせるいい方法はないですかね?」


「何々? 何の話?」


「ああ、アークさん。どうやって生意気な爆乳女たちを分からせようかなって話してた……ところ……で……アークさん!?」


「やっほ、陽向君。遊びに来ちゃった」


「ちょ、シリルさん!! お茶!! あとお茶菓子出して!!」


「すでにご用意してあります」



 流石はシリルさん、仕事が早い。



「ついさっきね。それで、何の話してたの?」


「ええと、実はかくかくしかじかでして――」



 僕は爆乳勇者パーティーの動向について、アークさんに話した。


 アークさんが僕の話を聞いて頷く。



「じゃあいっそ媚薬漬けにして手足を拘束、従順になるまで放置してみたら?」


「え?」


「俺の妻にも最初は反抗的な子がいたけど、それやったら一発だったよ。生意気なメスガキサキュバスが『もう我慢できないのおっ♡』って懇願してくる姿にはゾクゾクするものがあるぞ」


「アンタ結構えぐいプレイしてんですね」



 いや、魔王らしいと言えばらしいが。


 少なくとも童貞の俺にはそこまでのことをやる勇気はない。

 そもそも俺はあの四人を妻にしたいわけじゃないのだ。


 俺がやりたいのは、あくまでも復讐だ。


 奴らが自分から許しを乞う姿を見下ろし、ただ理不尽な目に遭わせたいだけ。


 そういう意味では反抗してきたことが喜ばしくもある。

 すぐに参りましたと言われても、こっちは面白くないからな。



「それがダメなら……あっ。ちょいとお耳を拝借」


「何です?」


「……ひそひそ……ひそひそひそ……」



 僕はアークさんの話を聞いて、思わず絶句してしまった。



「ア、アークさんって、悪魔ですか?」


「魔王だよ?」



 あまりにもえぐい絆の壊し方を教えられた僕は、その場で震えた。


 いや、でもその方法なら効く。


 マリーを優遇して仲間割れさせる作戦以上の効果があるだろう。

 僕はアークさんにお礼を言って、早速試してみることにした。


 向かう先はルナティアたちがいる狭い部屋だ。



「邪魔するぞ、お前ら!!」


「「「「!?」」」」



 ルナティアたちが僕を警戒して睨む。



「……何の用だ?」


「そう睨まないでよ。今からゲームをしようと思ってさ」


「ゲームじゃとお?」



 胡乱な眼差しを向けてくるテレシア。


 マリーすらも急な僕の言葉に困惑しているようだった。



「名付けて『正直に言えたらご褒美ゲーム』だ」


「……ご褒美ですって?」


「ルールは簡単。今から一人ずつ別室に呼び出して、何か俺に隠していることがないか答えてもらいます」


「「「「!?」」」」



 一瞬だけルナティアたちの表情が強張る。


 きっと彼女たちは救援メッセージのことを思い浮かべたに違いない。

 しかし、それが僕にバレていることを知らないルナティアたちは必死に平静を装っていた。


 僕を出し抜こうとしたと知った時はムカついたが、こうして見ると滑稽で少し可愛らしく感じるから不思議だ。



「で、正直に話した者にはご褒美として奴隷化の古代魔法を解いた上で、身柄を解放する」


「ほ、本当ですか!?」


「ホントだよ、マリー。ただし、正直に答えた者が二人以上いた場合、このご褒美はナシだ」


「は、はあ!? 何よ、その意味分かんないルール!!」


「ルール説明は最後まで聞け、メイ。またお尻ペンペンするぞ」



 僕の言葉にメイが咄嗟にお尻を守る。尻尾もペタンとしていた。



「で、だ。もし誰も正直に話さなかった場合、屋敷の中を自由に出歩く権利を全員に与える」


「な、何だと?」


「まあ、つまりは全員で黙秘して屋敷内でのちょっとした自由を得るか。あるいは一人が裏切って本当の自由を得るか。それとも二人以上が裏切って何も変わらないか。そういうゲームだ」



 これを即座に思いついたアークさんは、本当に悪魔みたいだ。


 だってこのゲーム、僕が『ルナティアたちがスクロールで救援を求めた』と知っている以上、彼女たちは自由を得られないと決まっている。


 仮に全員が黙秘したとしよう。


 それでも僕が『二人以上の正直者がいたので自由にはなれません』と言えば、ルナティアたちは疑心暗鬼に陥る。


 もし自分が黙秘したとしても『最低でも自分以外の誰か二人が裏切った』ことになるのだ。


 絆は絶対に壊れる。


 ひょっとしたら救援メッセージがこちらに筒抜けだと気付く者もいるかもしれないが、それはそれで助けは来ないと絶望させられる。


 どう転ぼうと、ルナティアたちに待っているのは絶望と疑心暗鬼なのだ。


 本当に、アークさんは怖い。



「じゃ、まずは誰に秘密を話してもらおうかな?」



 結論から言おう。


 ルナティアたちは誰一人として救援メッセージのことを話さなかった。


 流石は勇者パーティー。


 彼女たちは固いきずなで結ばれていて、自分だけ抜け駆けしようなどという者は一人もいなかったのだ。


 正直、意外だった。


 誰か一人くらいは自分だけ抜け駆けしようとする奴がいるはずだと思ったのに……。


 ま、本当のことは言わないけどね。



「結果発表〜!! 残念ながら今回のゲーム、ご褒美を受け取れる人はいませ~ん!!」


「「「「!?」」」」



 ルナティアたちが目を瞬かせる。


 まるで僕が何を言ったのか全く理解できない、という様子だ。


 一拍置いてメイがニャーニャー騒ぎ始める。



「ちょ、ちょっと誰よ!! アイツに話した奴!!」


「わ、わたくしじゃありません!!」


「妾でもないのじゃ!! どいつとどいつなのじゃ、裏切り者は!!」


「っ、お前たち、仲間を信じろ!! ヒューガが出任せを言っているに決まって――」


「ルナティアの鎧に隠してあったスクロールでこっそり救援を呼んだんだろ?」


「「「「!?」」」」



 僕の一言にその場が凍り付く。


 ああ、いい。ルナティアたちがとてもいい表情をしている。



「……楽しそうですね、ヒューガ様」


「あ、シリルさん。超楽しいですよ。アークさんは?」


「先ほどお帰りになられました。また折りを見て遊びに来ると」


「今度お礼をしなくちゃな」



 ギスギスした雰囲気の爆乳勇者パーティーを見ながら、僕はニヤリと笑うのであった。






―――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイント小話

アークはつるペタロリッ娘サキュバスを見つけたら人妻子持ちだろうと力ずくで自分の妻にする。そうでない女には全く興味がない。


お知らせ

現在、週間ランキング25位、日間ランキング27位。面白いと思ったらおらに★を分けてくれぇ。



「えぐいゲームで草」「魔王が魔王すぎる」「あとがきで笑った」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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