第33話 無我夢中
ヒロノスケが一気に粉塵火薬に気力を流し、手榴弾を造形する。
「銀影特製のパイナップルをたっぷり味わえ!」
ヒロノスケの繰り出す手榴弾がソニアの直前で爆発する。
爆撃をかわしながらソニアは宙に舞うと、氷のダガーを無数に造形し、それをヒロノスケに乱射した。
残像を残す程のスピードでダガーをかわすヒロノスケだが、その隙を狙って背後へと回り込むソニア。
「もらった…。」
正確無比の力強い蹴りが彼の脇腹に炸裂したが、銀のオーラによりそれをしっかりとガードするヒロノスケ。
「なかなかのパワーだ…。まともに喰らったら肋骨何本かでも済まなかったかもな…。」
「次はそのオーラごと打ち抜いてやる…。」
ソニアも白銀のオーラを放出し、冷気混じりの鋭い拳を連発する。
対するヒロノスケも銀のオーラと共に拳を繰り出し、ぶつかり合う拳と拳が火花と結晶を二人の間に舞わせる。
ドガガッ!ズガガッ!バシッ!ビビッ!ガシッ!
先の爆撃と二人の打ち合いの衝撃が大地を伝わり、その感覚を大地から感じたユキリナがそこに到着する。
「わ!あのソニアって人が誰かと戦ってる…。す、すげぇ戦いだ…。」
ユキリナの眼下では銀の人影と人影が高速で移動しながら拳と蹴りを激しく打ち合わせている。
ソニアの超人的な力は先ほど目にしたが、対する日本人青年は初見だった。
「あの人誰だろ?あのソニアと互角だ…。」
ぶつかり合った影が左右に散り、人の姿へと戻ったソニアとヒロノスケは、それぞれの気獣聖霊の力を利用した大技を繰り出す。
「デッドリー・ブリザード…。」
ソニアの両手から繰り出された冷気のエネルギー波が辺り一面を凍らせながらヒロノスケに迫っていく。
「銀影爆吐…。」
ぶつかり合いの衝撃で周囲に舞った粉塵火薬がヒロノスケの気力によって一気に火を噴いた。
ソニアの凍結した空間を破壊しながら凄まじい爆風が彼女を吹っ飛ばしたが、冷気のエネルギー波の勢いは止まる事なく、寛之介の右足に直撃していた。
「くっ、デッドリー・ブリザードの直撃を避けるとは…。でもその右足が使えなくなってはちょこまか動けなくなったな…。」
爆撃を受け、全身の所々を焦がしながらもソニアはヒロノスケに向かって来る。
「貴様こそ…何てタフな女だ…。爆撃をかなり受けたはずなのに…。」
「瞬間冷気で身を守らなければ危なかった…。」
「じゃあ、まだ敗けは認めねぇわけだな?」
「そういうお前も…だろ?」
両者は互いの肉弾の射程距離まで近づくと、一気にオーラを放出して殴り合った。
冷気と硝煙が飛び交い、二人を包み込んでいく。
果たしてどちらが優勢かも分からない状況で打撃音が山林に響き渡る中、二つの銀のオーラが左右に散る。
「どうした?今さら敗北宣言か?」
「馬鹿を言うな…。勝てる勝負を…。」
打ち合いから先に退いたのはソニアだった。
ヒロノスケとの戦いに夢中だったソニアは、先の爆撃を受けた際に輝石を懐から落とした事に気付いたのだ。
「わ、私とした事が…。」
「う、嘘だろ?子供じゃあるめぇし、ロシアのスパイ活動家が大事な報酬を落とすなんてよ…。」
ヒロノスケも失笑する思いだった。
「私のせいじゃない…。お前の技のせいだ…。」
「この期に及んで銀影爆吐のせいにしてんじゃねぇよ!」
「と、兎に角…あの石が無くてはお前と総力戦をする意味が無い…。」
「チッ、楽しくなってきたってのに…。」
ヒロノスケもオーラを解除し、肩を落とした。
まさかの試合中止に監視カメラ越しの富豪達も騒然としたが、戦いに夢中になるソニアとヒロノスケの隙を突いて木々の間から進化の輝石を拾い上げるユキリナ。
「わ!こんなとこにあったのか…。」
輝石を手にするユキリナにソニアもヒロノスケも目が点になる。
「な、何なんだあの娘は?」
「ユキリナ・エヴァンス…私を追って来たか…。」
二人に対して向き直ったユキリナは、凛と言い放つ。
「こんな石の為に喧嘩は駄目だよ!ちゃんと話し合おうよ。争いじゃなくて…みんなが上手く行く方法を話し合うんだ…。」
ユキリナの言い分にヒロノスケとソニアは、思わず顔を見合わせる。
「フッ、面白い小娘だ…。ライザス・ウェルザーはこんな平和主義者まで参加させてやがるとはな…。」
「ユキリナ…お前の理想通りにはならない…。この島のルールは弱肉強食…。強い奴がその石を手にする価値がある…。」
「わ!ま、待って!話を聞いて!」
ソニアとヒロノスケは、同時にユキリナに飛び掛かり、その輝石を奪い取ろうとしたが、更にそこに現れた金髪ボブショートのアメリカン美女兵士。
「貴様はユーリー!?」
「ユーリー・ヴェンフォード!?」
「真打ち登場だよ!」
ユーリーの気迫が辺りを熱気に包んでいく。
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