第29話 暗躍者
ユキリナやマコルが去った島の中心部の頂きへとやって来るブロンドボブの美しき女兵士ユーリー。
「さっきまで戦いの気力を感じたが、もう決着がついちまったようだね…。」
辺りを見回すユーリーの目に地面にめり込んだ虎柄コスチュームの大娘が入る。
「ん?なんだこいつ?こんな南国の島で凍り付いてやがる…。」
ユーリーはこの娘が戦いに敗れた者である事を察し、気獣聖霊による熱で彼女の体を温めた。
「なかなか解凍しねぇな…。もっと温度上げてみるか…。」
ユーリーが熱を上げて行くと、ユーゴから湯気が上がり、身体が赤く光っていく。
「にゃ?あ、あちゃー!」
流石の高温にユーゴは飛び起きる。
「お?解凍完了だね…。」
「何にゃんですかぁ!火傷するところだったんですぅ!」
「お前…ここで戦ってた気獣士だな?ここにさ、進化の輝石と思われる神秘的なパワーが漂ってたんだけど、どこに行った?」
「ニャゲ?も、もしかしたらあのソニアって女に奪われたんですぅ…。」
「ソニア?お前を凍らせた奴か?」
聞き覚えのある名前だとユーリーは、首を傾げる。
「は、はい…。それかユキリナさん?彼女の姿も見えないので…。」
「ユキリナ?そいつも気獣士なのか?」
「いや、ユキリナさんは才能は有りましたが、ただの人間なんですぅ…。でも輝石を発見したのはそのユキリナさんで…。」
「は?普通の人間まで居やがるのか?セイヴァースは全く何考えてんだか…。」
ユーリーは、呆れながらもユーゴからの話を頼りにソニアを追い掛ける事にした。
しかし、いきなり周囲に鉄柵が現れ、ユーゴと共にその中に足止めされる。
「な、なんだこりゃ?あんたの仕業?」
「ち、違うんですぅ!」
ユーリーは鉄柵を手刀で破壊しようとしたが、それはびくともしなかった。
「くっ、こりゃ気獣聖霊が作り出したもんだね…。」
鉄柵から放たれる異様なエネルギーにユーリーは警戒を示す。
「フフッ、これは猛獣が二頭も捕獲されたようですね…。」
その場に現れる桃色長髪の黒い拳法着の男。
「あんたか?こいつを具現化したのは?」
「ええ。私の鉄麒(テッキ)は鉄分を支配する気獣聖霊ですので…。」
男の放つ気力オーラから鉄色の麒麟が現れる。
「今度は麒麟かよ…。」
ユーリーとユーゴは、その長い首の麒麟を見上げる。
「私は麟飛魯(リン・フェイロ)と申します。セイヴァースの依頼で進化の輝石とやらを取りに来ましたが、どうやらここには無いようですね…。」
「ああ。ソニアって女が奪って行ったらしいよ。」
「ソニアが?そうですか…。だったら私の標的はあなた達ではないようですね…。」
「だったら早くこの鉄柵を解除しな。」
「お願いしますですぅ…。」
フェイロに懇願する二人を目にし、彼の目が鉄色に輝き、鉄麒がユーリーとユーゴの右手首同士を鎖手錠で繋いでしまった。
「や、野郎!何しちゃってくれんだ!」
「ニャゲ!?」
「何を喚いておる?これはサバイバルゲームなのだ。邪魔となる者を陥れるのは当然の事よ…。」
フェイロは二人の手錠に気力を伝える。
「に、ニャゲ?な、何だか…力が抜けて行くんですぅ…。」
「くっ、あたしも…。野郎…今度は何を?」
「フフッ、このフェイロの鉄鎖拘束陣…。あなた方の鉄分を吸収させて頂いてるのです…。いくら気獣士と言えど血液中の鉄分が無くなれば立ってはいられないでしょう。」
ユーリーとユーゴは、酷く疲れた様子で背中合わせとなり、その場に崩れ落ちる。
「ニャ~、ひ、貧血気味に…。」
「て、てめぇ、回りくどい事してねぇで…まともに戦えっつぅの…。」
「これぞまさに一鉄二獣…。このフェイロの兵法は無敵…。クックックッ…。」
フェイロは勝ち誇ったが、二人に意識を集中するばかりに辺りを流れる風の変化に気付いていなかった。
「それにしても風が強くなって来ましたね…。」
その風圧は更に強くなり、フェイロの動きを封じるようだった。
「な?これは気獣聖霊による風圧!?」
「流石は山岳の頂上ね…。良い風だわ。」
颯爽と現れた麗蘭にフェイロは焦りを見せる。
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