第26話 猛虎襲撃

虎の気獣聖霊を発揮したユーゴの肉体が更に引き締まる。

「この虎はハリーやクリストファーが持っていたのと同じ奴か…。」

ユキリナは猛勇虎に警戒を示しながら逃げようとする。

「ニャ~、逃がさないんですぅ!」

ユーゴの気力によって猛勇虎がその能力を発揮した。

地面を揺らす凄まじい振動がユキリナの足元を掬う。

「うわっ!」

更にユーゴが拳を突き出すと空気中に振動波が伝い、凄まじい衝撃が横からユキリナを吹っ飛ばした。


「あわわ、ユキリナさんお気の毒ですハイ…。ユーゴさんはただの怪力娘ではないのです。セイヴァースの聖霊移植実験によって気獣士となった彼女は、振動を自在に操る事が出来るのです!」


マコルの解説染みた話を耳にし、ユキリナはよろめきながら立ち上がる。

「振動を…操るだって?この娘も人間じゃないの?」

「ニャゲ!私は人間を超越した存在なんですぅ!」

ユーゴは中国拳法のような構えと共に振動波を連発した。

「振激烈波拳ですぅ!」

ユキリナの周囲に振動のうねりが現れ、それが四方八方からユキリナに炸裂した。

「う、うわぁぁぁっ!」

吹っ飛ばされたユキリナは、手にした輝石を落としてしまう。

「あうう…ど、動物達が…。」

ユキリナは這って輝石に手を伸ばすが、ユーゴは力いっぱい大地を踏み締め、地を這う振動波が更にユキリナを吹っ飛ばした。

「地烈振動撃…ですぅ。」


「およよ…このままではユキリナさんが死んでしまいますハイ…。もはやこれはただの虐待…。ユーゴさんは最低ですね…。」

わざとらしくハンカチで目を覆いながらマコルは、それをただ見届ける。


「ニャ~、私も弱い者苛めする気は無いんですぅ。これさえ手に入れてしまえば…。」

ユーゴは地に落ちた輝石を拾い上げるが、背後から飛んできたユキリナのドロップキックを背に受けて再び輝石を地に落とす。

「ニャゲ!?地烈振動撃をまともに受けて立ち上がるなんて…。」

「くっ、それはあたしが見つけたんだ…。渡すもんか…。」

全身痣と土にまみれながらもユキリナは、輝石を取り返そうと闘志を露にする。


「ややっ!?気獣士の攻撃をまともに受けてるのに…どうしてユキリナさんは立ち上がれるのか?」

マコルはユキリナの異様なタフネスぶりに疑問を覚え始める。

「ユーゴさん!さっさとユキリナさんを楽にしてあげちゃって下さい!」

「ニャ~!!」

ユーゴは振動でユキリナを転ばせ、そこへ空中からの肉弾落としを仕掛けた。

「これで終わりなんですぅ!」

「くっ、立ち上がんねぇと…。」

ユキリナは何とか立ち上がろうとするが、転んだ衝撃で足を挫いてしまっていた。

そこに気力オーラを纏ったユーゴがボールのようになって落下して来る。


万事休すのユキリナを疾風のように脇から救う白銀の影にマコルは目を見張った。

「ややっ!あれは確か…ソニア・シャラポワさん!?」

ユーゴはそのまま地面を陥没させながら自爆し、憤慨した表情でユキリナを救った長身ロシア美女に目を向けた。


銀髪の髪を無造作に伸ばし、黒い虎柄のタンクトップに黒いスポーティーショーツと膝までのレッグウォーマーとブーツの戦闘スタイルとなったソニアがユキリナに冷たい視線で物申す。

「帰りな…。ここはあんたみたいな娘が居て良い場所じゃない…。」

「ううっ、でもあの輝石を持って帰んねぇと…。」

「だったら戦って勝つしかない…。」

ソニアは言いながらユキリナの挫いた足首を掴む。

「痛ッ!」

「転んだ程度で挫いてるようじゃ尚更だ…。」

ソニアの手が白銀に輝き、ユキリナの足首を一気に冷やす。

「つ、冷たい…。でも、痛みが麻痺してく…。」

「暫く休んでれば痛みも引くだろう。だからこの舞台から降りろ…。」

「ううっ、あんたも気獣聖霊ってのを持ってる人なんだね?」

「ああ…。同族の匂いを感じてここまで来たが…。」

ソニアは鋭い視線をユーゴに向ける。


「ニャ!?何ですかあなたは!何か嫌な感じがするんですぅ!」

「それはこっちの台詞だ…。」

二人の長身美女は、互いに殺気を放出しながら相手に向かって歩んでいく。


「ユーゴさん!その方も纏めて倒してさしあげなさい!」

マコルの声でユーゴは黄色のオーラと共に猛勇虎を背後から出現させるが、ソニアも白銀のオーラと共に雪原の猛虎シベリアンタイガーを出現させる。

「ニャゲ!?白い虎!?」

「虎の気獣士は二人もいらない…。私の『デッドリー・タイガー』がお前の虎を喰らう…。」

「そ、それはこっちの台詞なんですぅ!」

二人は隙を伺いながら横に移動し、睨み合う目と目から発する電撃が火花を散らした。


ユキリナはただ二頭の虎の戦いを見届けるしかなかったが、二人が睨み合う先に輝石の輝きを目にする。


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