その43:目を見て言ってみよう!

帰り道。

夕焼けが、ふたりの影を長く引き伸ばしていた。


今日は、なんだか少し静かだった。


手をつないでいるわけでもない。

だけど、ずっと隣にいる。

その安心感が、逆に私の胸をざわつかせていた。


(……最近、私、ちょっと欲張りになってるのかも)


隣にいるだけじゃ、足りない。

声が聞こえるだけじゃ、足りない。

たった一言、あの子だけに伝えたい言葉が、胸の中でぐるぐるしていた。


そして、私は歩く足を止めた。


「……かな」


「ん、なに。どうしたの?」


振り返る彼女の瞳が、夕陽に照らされて、琥珀みたいに透きとおっていた。


その瞬間、もう我慢できなくなって――


私は、彼女の手を握った。


「かなのこと、誰にも渡したくない」


「……っ」


言った瞬間、彼女の目が大きく見開かれる。


「ずっと一緒にいたいし、かなが他の子と楽しそうにしてると、ちょっとだけ胸が苦しくなるの。変かな?」


「へ、変じゃ……ないけど……っ。な、なに、いきなり……」


夏奈は下を向いて、顔を隠すように髪をかき上げた。


「……そ、そんなの、あたしだって、同じよ……っ」


「え?」


「……さほが他の子に甘えてるの、見てられないし……なんで、あたし以外にそんな顔するのよ、って思うし……」


「……かな」


「っ、だから、さ……っ、言わせんな、もうっ……!!」


私は夏奈の手をぎゅっと強く握ったまま、ほんの少しだけ距離を詰めた。


「かな。ほんとに、好き。……独り占めしたいくらい」


「…………ばか」


でも、次の瞬間。

彼女は私の制服の裾をそっと掴んだ。


まるで、引き止めるように。


まるで、「あたしも同じだよ」って言ってるみたいに。


『技その43:「誰にも渡したくない」って目を見て言う』

→ 恋は独占欲の中にこそ“本気”が宿る。目を逸らせなくなったツンデレの瞳がすべてを語っていた。

成功度:最深部到達♡

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