その13:服の裾をそっと掴んじゃおう大作戦!

「……な、なんで私がこんなとこ来てるのよ」


「え〜、だって、かなが“別に怖くないし”って言ったんじゃん♪」


「言ったけど……こ、こんなの、ただの仕掛けじゃん。あたしは別に……っ」


そう言いながら、夏奈の声はほんの少し震えていた。

でも──震えてたのは、私のほうだった。


(やっぱり、ムリかも……! こういうのほんと、ムリ……!)


ぐらっと暗がりの中で照明が点滅し、どこかで女のすすり泣く声が響いた。

肩が跳ねる。心臓がばくばくする。無理、これもうムリ。

私は思わず、隣を歩く夏奈の――


「っ!? な、なに、いきなりっ……!」


制服の裾を、ぎゅっと握っていた。


「……ご、ごめん……っ。でも、ちょっとだけ、こうしてていい……?」


「……あんた、怖いの?」


「…………すっごく、怖い……」


目を潤ませて言うと、夏奈は一瞬だけ、息を飲む音を立てた。

そのあと、私の手に気づいたように振り向いて――


「……そんな顔、すんな。しょうがないわね……っ」


「え……」


夏奈の手が、そっと私の手に重なった。


「……ちゃんと、前、歩いてやるから。掴んでなさいよ」


「かな……!」


「う、うるさい。調子に乗るな。お化けより、あんたの方が手強いわよ……!」


それでも私は、笑ってしまった。

怖さよりも、夏奈の手の温かさが、ずっと大きくて優しくて。


──『技その13:服の裾をそっと掴む(しかも甘えつき)』

→ 効果:ツンデレ保護本能全開。主導権逆転の可能性アリ♡


「かな、だいすき……♡」


「言うなって言ってんでしょ、もう……っ!!」


でも、夏奈は最後まで、手を離さなかった。

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