文章練習
赤木入伽
地文練習
2025/12/03
優しさに満ちた微笑だった。
一点の汚れも曇りもなく、彼女は唇の端を静かに持ち上げた。すべて許し、受け入れる母のような笑みだった。
彼女は笑う。その笑みは絹のように心地よい。
2025/12/02
彼女の語尾を曖昧にぼかし、視線を泳がせていた。なんとも煮えきらない態度で、言葉が宙をさまよっている。
彼女は口を開きかけるが、結局言い淀んだ。どうにも私と彼女の間には壁があった。
彼女はもごもごと肯定と否定を繰り返し、歯切れの悪い返事をするばかりだった。
彼女はなんとも曖昧な返事しかしない。これでは実体のない霞である。
彼女は沈黙のまま視線を泳がせた。答えは迷宮入りとなったようだ。
彼女は当惑しつつも沈黙した。もはや貝のように頑として口を開くつもりはなさそうだ。
彼女は曖昧に微笑を浮かべたような無表情のような能面みたいな顔をした。
汗が吹き出た。全身からとめどなく汗が流れてくる。針の筵に座らせられているような心地だった。
捕食者に睨まれたような気分だった。顔から血の気が引いていく。足が震え、冷や汗でシャツがじっとりと湿る。
2025/12/01
鼓動が早まっている。心臓が大きく跳ねて、胸を破り、口からも飛び出しそうだった。
心拍数が上がり、息が荒くなり、頭の中ではアドレナリンが竜巻のように吹き荒れている。だがそのくせ胸が詰まって、まともな思考にたどり着かない。
心臓が、脳がどよめいていた。激しい嵐が私の体内で巻き起こり、全身の脈という脈が恐慌状態を警告する。遺伝子に刻まれた本能が危険だ危険だと大声で騒ぎ立てている。
心臓がうるさい。警告の鐘が何度もハンマーで叩いているようだった。敵襲だ、火事だ、と見張りが騒いでいる。体中が、マグマが煮えたぎったような熱を感じる。熱い、暑いと悲鳴を上げている。
心臓が激しい音を鳴らしだした。思わず荒い呼吸をしたくなるが、緊張のあまりにむしろ浅い呼吸になる。そのくせ汗は異様に出る。
2025/11/30
私はカバンを手に、玄関をあけた。
外は小春日和で、心地よいぬくみを肌で感じる。
ビニール袋がこすれる音が聞こえたので目をやると、お隣さんがゴミ出しにサンダルで出てきた。
私はつとめて明るい声で挨拶をして、大股で歩きだす。
まずはバス停まで五分ほど。
いったん大通りにでて、そこから駅とは逆方向へ。
できれば、すぐそこにバス停が欲しいが、もちろんそんなわけにもいかない。
バス停にはすでに人が列をつくっていて、私は最後尾の七人目になる。
ただ、そんな列ができるほどなので、ちょうどよいタイミングでバスが来た。
バスのエンジン音は、なんだか重い体を動かすのがだるそうな唸り声みたいに聞こえる。
私は心の中だけでバスにお礼をいって、バスに乗りこむ。
スマホをタッチして、後部の開いている席にすわる。
窓際にいたのは見知ったおばあちゃんだったので、私はまた明るい声で挨拶をする。
ただ見知った程度の関係なので、挨拶だけ。
バス内でおしゃべりするのもマナー違反かと思うので、そのまままっすぐ前を見る。
朝のバスということもあり、バス内はサラリーマンや学生といった様子の人ばかり。
それもバスが進むにつれてどんどん増えていき、駅まで停留所が四つくらいになると、だいぶ混雑してきた。
前の方ではお年寄りも立っているので、できれば席を代わってあげたかったが、この混雑で移動したり声をあげるのも恥ずかしく、そのまま。
最初から立っていたほうが良いのかなとも思う。
ただそんなことを考えてると三分もせずに駅が近づいてきた。
駅前はロータリーになっていて、他にも複数のバスやタクシー、それに個々人の送迎らしき車が連なっていた。
バスも駅前についてから停留所の前に移動するのに一分ほどかかった。
運転手さんがおまたせしましたという声とともにバスを止めると、お客はいっせいに動きだす。
後部のほうの席の私たちも、スマホをしまったり、かばんを肩にかけたりと準備をする。
そしてペンギンの行列のように、ちまちまと前へ移動。
ひとりひとりスマホ決済したりしてバスを降りていき、運転手さんはひとりひとりにありがとうございますと声がけをしていく。
ほとんどのお客さんは無言でバスを降りるけど、私はありがとうございますと返事をする。
誰もしていないことをするのはちょっと恥ずかしいけど、べつに悪いことをしてるわけでも、損もしないので毎日している。
そして私は駅前に立つ。
2025/11/28
私は彼女にキスをした。
私は彼女にキスをした。彼女の唇に。
私は彼女にキスをした。彼女はびくりと震えて、身体がこわばったが、すぐに私の背中に手を回してくれた。
私は彼女にキスをした。唇を優しく重ねた。彼女はびくりと肩を震わせた。身体がこわばっている。だが彼女が私の背中に手を回すと、こわばっていたのは私のほうだと気づいた。
私は彼女にキスをした。ゆっくりと静かに唇を重ねた。甘い香りがしたが、彼女はびくりと肩を震わせた。身体をこわばらせていた。だが彼女が私を抱き返すと、こわばっていたのは私のほうだと気づいた。
2025/11/21
目的もなくコンビニにやってきた。
なんとなく文房具売場へ向かってから、何か足らなくなったものはなかったかと思い出す。
だが三日前に専門店であらかた揃えたばかりだったので、当然何も思い浮かばない。
仕方ないのでペン類かノート類か、あっても困らない消耗品でも買おうかと思ったが、私のお気に入りは当然のようにない。
下手に走りの悪いペンや滑りの悪いノートを買っても、途中で捨ててしまうかもしれない。
それはエコの精神から避けたい。
となれば、買い食いみたいで少し気が引けるけど、お菓子でも買おうかと思ったが、何がどのような味か想像がつきにくい。
辛いとかビターとか高級とか大容量とか、具体的にどの程度なのか。
普段、こういうものとは縁遠いから分からない。
となれば最終的には飲み物だ。
そう、最初からこれを選んでおけば良かったのだ。
お茶なら、どんなに低品質だろうと高品質だろうとお茶である。
と思ったが、いざお茶の列を見ると、トクホとか、健康とか、体脂肪がうんぬんという文字。
お茶一つに、これほど種類があるのか。
私は愕然とする。
別に健康とかいうのは問題なさそうだが、よく分からないものは少し敬遠してしまう。
あと残る選択肢は、雑誌やパンやお弁当など。
雑誌はもってのほかとして、パンやおにぎりというのは決して悪くない。
私は巡り巡って、シャケおにぎりを手にとってレジへ向かう。
ただ最後に、店員に現金を手渡そうとして、「そちらへ投入してください」と変な機械を示され、私は混乱した。
2025/11/20
目的もなくコンビニにやってきた。
「しゃーさーせー」
自動ドアを抜けると、やる気のない店員の声がしたが、私は少しワクワクしていた。
私はコンビニに少しワクワクしていたのだ。
恥ずかしいのであまり他人に話したことはないが、田舎ではコンビニも車で五十分の距離なので、子供のころに自動ドアと巡り合うのは多くても月に二回程度だった。
しかもコンビニでは駄菓子屋にはない都会的なお菓子もあったので、私にとってはコンビニ=遊園地に近かった。
だから大人になった今でも、都会に染まった今でも、コンビニには少しワクワクする。
子供のころは一日一個までだったお菓子も今ではいくらでも買えるし。
私はお菓子売り場で仁王立ちして、品定めする。
王道はスナック菓子だが、ちょっと贅沢にチョコ系も良い。それだけの金が私にはある。いや、ここは童心に帰ってグミも良い。なんか最近の子はグミが好きだというし、グミも良い。大人でもグミを買って良い。ただお菓子というジャンルではなく、惣菜パンなんかもありだし、スナックはスナックでもスナックフードも良い。アメリカンドッグなんか、ホカホカサクサクでお腹によく貯まる。これは良い。
私は数分悩んだ。
途中、見知らぬおばあちゃんがリンゴのカードはないですかと聞いてきて、私は分からないので店員さんに尋ねたら、なんか店員さんと問答が始まっちゃったので、私はさらに数分悩んだ。
そして決めた。
二つあるレジの片方では店員さんとおばあちゃんがまだ何かやり取りをしていたが、残りのレジ前に私は立つ。
「タバコください。メビウス――あ、一番で」
2025/11/08
まずトースターに食パンを突っ込み、タイマーを三分にセットし、この間で他の準備を開始する。フライパンには油を垂らし、卵を投入し、やや強火でタイマーは二分にセット。マグカップには牛乳を注いで机に置き、牛乳を冷蔵庫に戻すと同時にバターとヨーグルトを取り出す。さらに醤油も調味料入れから出し、食器棚からは二枚の皿を出す。そうこうしていると、コンロとトースターがほぼ同時にピーと電子音を鳴らすので、目玉焼きとトーストを皿の上へと運び、それを机へと運ぶ。超高速で朝食の完成だ。
2025/11/07
雨戸を開けた瞬間、私は瞼を強く瞑った。だが雨戸はまだ半開きだったので、私も目を半開きにして雨戸を戸袋に押し込み、窓とカーテンを閉じた。まったく、季節が変わって太陽の位置もずれて、最近は朝一番にこれ以上ないストレスを食らうようになった。忌々しい。真夏ではないが太陽爆発しろと思う。無論本当に爆発されたら困るが。
2025/11/06
ぼんやりと手元のスマホを眺める。薄べったい金属の板だが、ちょっとした宝石も買えなくはない値段になる。しかもどこでも料金支払いやら身分証明に使えと来る。もはや衣類以上に生活必需品だ。ただ、だとすれば政府から補助金が出ないものかと思う。私は電気ガス水道代だって払うのがやっとなのだから。
2025/11/05
人混みを抜けたと思ったら、途端に人が消えた。どうやらオフィスエリアと住宅エリアは完全に切り分けられているらしい。ただ、ほんの数十メートルしか歩いていないのにこの変わりようは、異世界に迷い込んだようで少しだけ不気味だった。
2025/11/04
名が知れてるだけあり、美しく整った町だった。家々、その屋根瓦、窓、そして地面の石畳など、すべてが乱れなく絵に描いたように整っていた。また道沿いには何の意味があるのか花が植えられており、余計なことをする裕福さが象徴されていた。そういえば、田舎なら当然あるだろう馬糞の山など見る影もない。
王都ゆえに決して不潔というわけではない。が、裏道は裏道。家が並んでいるくせに人の気配は薄いし、妙に薄暗くて死角も多い。樽や木箱が積まれた影に、薬物中毒者や暴漢がいてもおかしくはない。あまり長居はしたくない場所だった。
よく発展した町だった。建物は三階建て以上のものも珍しくなく、空が狭かった。だがその分だけ地面の賑いは他の町では見られるものではなく、まっすぐ五歩も進めば誰かとぶつかることは間違いなかった。誰もが何かしらの商品を買い求め、大きな荷物を抱え、立派な財布袋を大事そうに持っていた。
都市というのは当然どこも城壁があって発展するものだが、町や村という規模になれば必ずしも城壁はない。どこま豊かではいられないのだ。ただこの町は違った。城壁がないくせに、とても平和だった。町の中央には、ボートで遊覧できそうな川が流れ、通りには花屋や土産屋のような人形を売る店があった。あまりに牧歌的で平和的な町だった。
2025/11/03
彼女はインテリアに気を使うようだった。棚の上や壁は様々な小物やポスターで埋まっているが、汚らしくはなく、全体的にはカントリー調でまとまっている。何の意味があるかは不明だが、電灯は五つの電球からなり、星型のオブジェが壁にかけられているが、これも特に違和感がない。
少し狭いが、落ち着いた部屋だった。八畳間の空間に、ベッド、ソファ、机、観葉植物がみっしりと詰まってはいたが、そのソファに座ってしまえば、森の中で包まれているような気分さえ感じる。
小物が多い部屋だった。整理整頓はされているが、机や棚の上には写真立て、鏡、化粧道具、文房具、間接照明、その他飾りが密集していた。またベッドの上にもクッションやらぬいぐるみがあり、寝返りに困りそうだった。しかもそのベッド脇には大きなテディベアが居座っているため、人ひとり分だけ人口密度が上がったような気がした。
2025/11/02
陽気な子だった。
太陽みたいな子だった。
元気そうなのは結構だが、それ以外何も持ち合わせていなそうな子だった。
いかにも田舎っぽい子だった。
可愛らしいが素朴な子だった。
素朴で元気な子だった。
幼児みたいに明るく元気な子だった。
綺麗な子だった。
儚げで美しい子だった。
線が細い子だった。
綺麗だが印象が薄い子だった。
文学少女みたいな印象だった。
病弱そうな子だった。
バカ元気な子だった。
小さくて、年齢を五つばかり間違えそうな子だった。
揺れるポニーテールが愛らしく、子犬みたいな子だった。
美人な子だった。
決して露出などしてるわけではないが、色気が歩いているような子だった。
色っぽいが、しかし決して近寄りがたいわけではなかった。
美青年のようだった。
男女問わず見惚れるような美人だった。
とても凛々しく、美青年のようなスマートさだが、その美しさは男女問わず魅了するような子だった。
目元こそ凛々しいが、地味な印象の子だった。
どこか明後日の方角を見ているような子だった。
可愛らしいと言えば可愛らしい。だが、取り立てて目立つ印象もない。道端の猫みたいな印象だった。
目に力はあるが、どこか親しみやすさが上回っている子だった。
2025/11/01
彼女はなごみきった春の日差しのように弾けるような満面の笑みになった。
彼女は老爺のように眉間に皺を寄せて、これでもかと気難しさを全面に出した。
彼女は顔の筋肉という筋肉が痙攣し、膨れ上がり、紅潮していた。目は力の限りにかっ開かれ、歯が威嚇するようにギシギシと音を鳴らし、今にも血管が破裂してしまいそうだった。
2025/10/31
彼女の部屋は彼女のシャンプーの香りがした。
彼女の部屋はゴミで溢れ、埃とタバコと生ゴミの匂いがした。
2025/10/30
コンクリートジャングルとはよく言ったもので、別に目立った高層ビルが並んでるわけでもないが、大量の看板が張り付いたビル群が鬱蒼としている様はまさしくジャングルだった。道を行き交う人々もまるで虫だ。量が多くて鬱陶しい。
明るい、というのが第一印象だった。空こそ狭いが、ビルにかけられた看板はどれもこれもアメリカのお菓子みたいにビビットで、さらに大型モニターが目を忙しなくさせる。また道路は灰色のアスファルトだけど、そのすぐ上を覆う人々がまたオシャレな明るい服を着た人が多い。赤、黄、青、紫、緑が無作為に蠢き、まるで現代アートだった。
2025/10/29
城は悠然とそこにいた。
城は威風堂々と偉丈夫のように立っていた。
ちょっとした山のように、木々などより天高く、小さな村くらいはすっぽりと収まりそうなほど巨大な城は、しかし壮大さよりも美しさが際立っていた。
2025/10/28
彼女は研ぎ澄まされた刃物みたいな鋭利な睨みを効かせていた。
彼女は日本刀みたいな物騒な睨みをしていた。
彼女は今にもバスケでもしそうな爽やかな好青年のようだった。
彼女は好青年のように短髪がよく似合っていた。
彼女はスマートな高身長に加えて爽やかな目元は好青年のようだった。
2025/10/27
彼女はケタケタと悪魔みたいに笑った。
彼女はボリュームマックスで笑った。
彼女は壊れかけのラジオみたいにケッケッケッと悪魔みたいな笑い声をあげた。
2025/10/26
彼女は髪は後光のようだった。
一本一本が宝石のようだった。
ガラス細工のような細やかな美しさだった。
爆発的な美しさだった。
魔術的な美しさだった。
ガラス細工のような魔術的な美しさだった。
2025/10/25
彼女は苦笑する。
彼女はいたずらっぽく苦笑する。
彼女は頬を赤らめつつ苦笑する。
彼女は白い歯を見せて苦笑する。
彼女は苦笑しながら顔を上げた。
彼女は困ったように笑った。
彼女はいたずらっぽく困ったという眉の曲げ方をしつつ笑った。
彼女は溜め息まじりに笑った。
彼女は深い溜め息まじりに、しかし白い歯を見せて笑った。
2025/10/24
私は自嘲気味に笑う。
私は足を机に放り投げつつ笑う。
私はケラケラと笑う。
2025/10/23
彼女はダイヤモンドが輝くように笑った。
彼女は猫みたいなあざとさが香る笑みを浮かべた。
彼女は悪人みたいな不敵な笑みを浮かべた。
2025/10/22
彼女は頷いた。ただ魂が抜かれたように虚脱していた。
彼女は人形のように無表情だった。だが、その目は相手をまっすぐに捉えていた。無表情のくせに殺意がこもっていた。人形は人形でも、殺人人形のようだった。
私に殺意とか敵意とか曖昧なものを察知する能力はない。おそらく足音や衣スレの音を感じただけだ。だが、背中に立つ彼女の圧に私は背筋がぞわりとした。
2025/10/21
彼女は富士山が爆発したようなバカ笑いをした。
彼女は隕石でも降ってきたようなほど愕然としていた。
2025/10/20
彼女は買ったばかりの電球みたいに眩しく笑った。
彼女は小春日和の太陽みたいに朗らかに笑った。
彼女の笑みは、春先の太陽みたいに温もりがあった。
彼女は急にエンジンがかかったように吹き出し、アクセル全開で笑った。
2025/10/19
彼女は大地が揺れるほど激怒した。
彼女は怒りのままに雷霆を轟かせた。
彼女は大蛇の如く憤激した。
彼女は鬼の形相になり、今にもこの世すべてを食らわん剣幕で咆哮を上げた。
彼女は怒声が津波となって耳に押し寄せてきた。
2025/10/18
彼女は楽しそうにしていた。今までは縁もゆかりも無いというようなクラスメイトたちと、普通の友達のように、普通に楽しそうにしていた。
私が遠くから口パクで良かったと伝えると、彼女は笑顔で応えた。ただ、その顔には少し影が見えた。
俯く彼女の顔に私は手を差し出した。そして怒鳴り声を上げた。
2025/10/17
私はそのあまりの光景に仰天したが、すぐに何事か察し、十歩の距離を全力で駆けた。
私は怒鳴るが、彼女は笑いながら背を向けて歩き出した。
私は息切れし、なんとも言えない羞恥心で顔が熱くなったが、彼女は屈託のない笑顔をしていた。
彼女は普段こそ凛々しい顔だが、その尖った目も、とても愛らしく見えた。
彼女は驚いていた。信じられないことを聞いたように。ただその表情は、私には酷く淋しげに見えた。
彼女は笑った。その目元には涙が浮かんでいたので少し驚いたが、彼女の笑みは明らかに心からのものだった。だから私も笑って言う。
2025/10/16
彼女は少し言葉を選ぶように、しかし端的に答えた。私がさらに問い詰めると彼女はまた言葉に迷い、言った。そして笑顔を作ってみせた。愛らしい、友達の少ない私でも分かるような、わざとらしい笑顔で。
彼女は部屋を見渡した。綺麗で片付いた部屋だ。棚を見れば流行りの漫画が並ぶが、その最下段には埃を被った箱があった。
彼女は顔を覆った。突然の反応に私はいつもどおりあっけらかんとした態度を取るが、彼女は言う。
2025/10/15
彼女は鋭い目つきをそのままに、しかし声の調子はわずかに弾んでいた。
彼女は、彼女を見つめて、言った。
彼女は小さく笑うように息を漏らしした。
彼女は先程までの涙をぬぐい、ただ悠然と言った。
彼女は突然声色を変えて言った。まるで呪詛でも発したような低い声で言った。目も、どこを見ているのか定かではない。
2025/10/14
彼女は笑顔で、実に柔らかな笑顔で、実にほがらかな笑顔で、口を大きく開けて、団子を食べた。
彼女は首を振ってあたりを見回した。と、急に姿勢が後ろに倒れた。足に力が入らなくなったのだ。彼女はさすがに最近の疲れが溜まったかと思った。だが、彼女は倒れる直前に、足に力が入らなくなる直前に、何かが弾ける音がした。彼女は倒れながら理解した。足を撃たれた。
2025/10/13
別段変わらない私の町であるが、曇り空だからか、いつもより風景も灰色に見えて、妙に不気味に感じる。
2025/10/12
そのとき私はハイヒールを履いていた。いつもは同じ目線の彼女が、今は少し下にいる。しかしその顔はとても美しく凛々しいものだった。
2025/10/11
新聞の一面に彼女の勇ましい顔がでかでかと貼られていた。
2025/10/10
刀身は厚く、幅もあり、美しくはあれど鎧のような厳つさを持つ剣だった。あれならば象の足とて安安と切り落とせるだろう。
異様な禍りを持った剣だった。柄から刀身に至るまで赤と黒で染まり、さらに切れ味にはまったく寄与しないだろう湾曲が刃にあった。だがその刃に皮膚が触れたら、傷口から呪いでも吹き出そうな不気味な圧があった。
闇に浮かぶのは刀身に流れる赤色の魔力の光のみで、そこに剣があると気づくのに少し時間がかかった。ただそれは剣というより呪具のような代物だった。剣にしてはあまりに人を切るという意思が感じ取れてしまう。少なくとも、まともな人間が持つものではない。
刀身そのものが輝いているのではと思うほどの芸術的な剣だった。あるいは槌で簡単に折れてしまいそうなほどの繊細な印象もあったが、その気品は何人も寄せ付けない聖人のようでもあった。
2025/10/09
スマホへの通知が来た。また来た。さらに来た。なおも来た。もっと来た。
彼女は涙を流しながら絶叫した。
彼女は少しこわばった顔で苦笑した。
私は驚くが、彼女は回想する。一字一句丁寧に。
2025/10/08
彼女は天を仰いでいた。いや正確には天にスマホを掲げて、その変わりのない綺麗な液晶画面をただ眺めていたいた。
言いながら彼女は電話を手に取った。が、十歩ほど先にある物体の影を見て動きを止める。その不審物とも見紛う人物を眺めて、少し観察して、声をかける。
黒ジャージがデフォルトの彼女だが、今日は鮮やかな色味で、さらにはスカートを纏っていた。
2025/10/07
彼女は実に嬉しそうに、とろけるような溜め息をついた。
彼女は感情の読めない黒い瞳で、しかし丁寧に頭を下げた。
彼女は子供みたいに両手を広げてみせた。
彼女はやはり丁寧に言いつつ、頭を下げつつ、片手を上げて去っていった。
そう彼女は深く頷いた。そして輝く目で言う。
2025/10/02
彼女らは呑気に会話を終える。隣では喧嘩が続いていたが、彼女は笑って新聞を閉じた。
彼女は寝転び、笑った。
彼女は大口を開けて、笑い泣きをしていた。
彼女は注意するように言う。
指摘され、彼女はやっと眉間に皺を寄せた。
2025/09/30
彼女は演説するように喚き散らした。
彼女は今にも悲鳴を上げそうなほど顔を赤らめていた。
私は、どことなく彼女の喜びに共感した。なぜかは自分でも分からないが。
私は靴も脱がずに大声を上げたが、ガン無視された。睨みつけもしたが、視線が合わなかった。
彼女は小さく、けれど本当に安堵した声を出した。
私は大きな音で手を合わせて、大きな声で言う。
2025/09/29
肩を叩かれ振り返ると、彼女は大きく長いため息をついた。
彼女はゆるりとソファーに座っていた。なんとなく、その長い足に目が行ってしまい、私はついと目を逸らす。
私の言葉に彼女は面食らった様子で、わずかに笑みが浮かんだ。が、目線が少し外へズレた。一応、彼女はお礼を言ったが、曖昧な態度だった。
彼女は私を見つけると、子犬みたいに愛らしい顔をして駆け寄ってきた。
慌ててお礼を言う。が、その人の顔を見て、また相手も私の顔を見て、互いに固まった。彼女は確認で私の名前を呼ぶ。だが私はわずかに口を開いただけで、何も言えなかった。ただ目の前の人物を見て、昔を思い出して。一気に冷や汗が全身から吹き出てきた。全身の脈が激しく鼓動を打った。気づけば、服の裾を意味もなく握りしめていた。
2025/09/24
口元は人懐っこい笑い方だったが、蛇みたいな冷たい目で、感情が分からない女だ。
小さな体躯の少女だった。髪は澄んだ翡翠色だが、いかにも自信がなさそうな怯えた目をしていた。
フードの中には、まだあどけなさが抜けてない黒髪の少女の顔があった。ただ、その彼岸花色の目は、戦士のそれだった。
弾ける笑顔の少女だ。目も顔も丸く、髪も短く幼気な印象に写る。
まだ小学生かと思えるような小さな少女だったが、その若草色の長髪の艶めきは、どこぞの王妃のようだった。
桃色のツインテールヘアの少女は、実に、実に実に邪気がなさそうな笑顔をしていた。
その貴婦人は、不健康そうなほどに白い肌に、艷やかな黒髪をして、黒のドレスを身にまとっており、やや不気味な空気感を漂わせていた。ただ、その空気の中にも、品のある所作が見えた。
2025/09/23
顔を真っ赤にしながら彼女は猛抗議をした。
彼女は呑気そうな、子供の駄々を温かい目で見守るような顔をしていた。
彼女は歯を食いしばり、三白眼になって奇声を上げていた。
2025/09/21
私はコーヒーを口につけ、即座にすべて口から吹き出した。
言うやいなや、音速のごとく彼女は過ぎ去っていった。
彼女は助けてと言いながら足をバタつかせ、私はため息をつく。が、すぐさま彼女の足元から目を逸らした。
大声に振り向こうとした瞬間、バレーボールが飛んできたのかのような衝撃に私は倒れた。地面に伏した私が首だけ後ろに向けると、彼女が私の背に跨っていた。
2025/09/20
妙に高揚した彼女が駆け寄ってきた。
あ、と思った。だが誰も微動だにしていなかった。何事もないような顔をしていた。まして彼女は端正な顔立ちのまま綺麗な顔をしていた。
彼女は笑っていた。柔らかな、朗らかな、安心できるような、とても怖い笑みだった。
私は彼女を睨みつけた。私の顔では覇気なんて出ないだろうが、それでも力いっぱいに眉間に力を入れた。
2025/09/19
激しい歓声の中だというのに、私は呼吸も忘れてしまい、ひたすらに見つめて、聞いていた。彼女の歌う様を。
私は驚いた。これが一目惚れなのかと。
桜舞う、その校門を前にして、私は一人小さな歓声を上げた。
彼女は片手を上げて挨拶をしてきた。
私は両手を上げて彼女に飛びつく。
彼女の言葉に私は全力笑顔になった。
彼女の言葉に私は嬉しさ全開になった。
彼女は手を合わせて言った。
私は拳を握りしめ、体を揺らした。
2025/09/18
私は、落ち着いて言った。落ち着いて言った。努めて笑顔で。
すると彼女らは少しあっけに取られたようにして、私が倒れると大声を上げて大パニックになった。
彼女は夢うつつのように、いかにも酔っ払いな発言をする。
彼女は赤ん坊のように身を委ねてきた。
彼女の言葉に、私は普通に返事をした。ただ、少し考え込んだ。
カウンターの向こうでは、いつになく談笑が盛り上がっていた。
彼女は水を一口飲むと、私の膝に頭を委ね、そのまま眠ってしまった。まるで赤ん坊のように、私に抱きついてきていた。
私は彼女の顔を覗き込む。いつもとは違う、ある意味では安らかな顔。ただ、それを見て、言い知れない不安感に襲われる。
2025/09/17
彼女は頬杖をつき、おそらく自分でも知らず口をとがらせていた。
彼女は逆向きに座った椅子をギッタンバッコンと揺らし、目を輝かせていた。妙に高揚している。
私は少し考えて、なんの気なしに言ったが、その回答が意外だったのか、彼女らは一呼吸置いて口を開いた。
あっけらかんと無邪気に言い、彼女はその笑顔のまま頭を撫でてくれた。
怒った小鳥みたいな彼女が想像つく。
彼女は頭を抱え、猫みたいに丸くなった。
彼女は遠くを見ながら言ったが、その顔はやたら嬉しそうだった。
2025/09/16
私が教室に入ると彼女は机に腰掛けながら挨拶をしてきた。
少し気まずそうに言葉を選ぶように彼女は言う。
言われて、私は言葉に詰まった。たぶん、瞳孔が開いた。
彼女は頭を掻きながら言う。
私は、ただそれだけ尋ねた。
彼女は目をまっすぐに、ドンっと壁に身を委ねた。突如あっけらかんとした。
彼女は自分で尋ねておきながら、面倒くさそうな表情をした。
私は彼女のバカみたいな日常的な仕草に、脱力しながら笑った。
彼女は俯いた。
2025/09/15
彼女は眉を大きく歪ませ、目を細めていた。
彼女は眉間に皺を寄せ、大きく吠えた。
彼女は額に手を当てた。
彼女はなぜか寂しそうに呟いた。
彼女は不思議そうな顔をした。
彼女の一声で、班のメンバーが一斉に立ち上がった。
なぜか彼女は小動物のような顔で、小動物のように餌付けされていた。
私が言うと彼女は、はて? という酷くムカつく顔になった。
2025/07/19
その少女は人形のようだった。
日本人形のような少女だった。
まだ十歳かそこらだろうか。しかし絹のような髪は大人の美しさを持っていた。
黒曜石みたいな黒髪の幼い少女だった。
人形みたいに冷たい表情の少女だった。
烏みたいな黒髪と対をなすような白い肌の少女だった。
黒曜石のように艷やかな黒髪の少女だった。
一本一本が美しい黒髪。
腰まで流した黒髪は、上質な絹のようだった。
淋しげな黒髪の少女だった。
寂しさが映ったような黒髪の少女だった。
蛇の艷やかさを思わす黒髪の少女だった。
アオダイショウの艷を思わす黒髪の少女だった。その色に、絡め取られそうな気がした。
光をすべて吸い取ったような黒髪の少女だった。
漆黒を吸い込んだような黒髪の少女だった。
上質な黒い絹糸が風に揺られているのかと思った。だがそれは少女の黒髪だった。
2025/07/15
教室に入ると、賑やかでありつつも、まだ眠気と戦っているのも幾人かいた。
教室に入ると、おはようという声があちこちから上がる。
教室には既に大半の生徒がいて、グループごとに会話が盛り上がっていた。
教室は相変わらず耳障りなほどけたたましかった。
教室は耳障りな声ばかりだった。
教室は相変わらず戯言ばかりが行き交っていた。ゲームやらメイクやら、あるいは人間関係の悪口やら、学校だというのに勉学に関する話題は一声も聞こえてこない。
教室は相変わらずボリュームのノブが壊れたかのような馬鹿大声ばかりだった。
教室は、わずか数メートル四方の広さだというのに、馬鹿みたいな大声の数はパチンコ屋みたいなけたたましさだった。
教室には既に多くの生徒がいた。みな一様に同じ制服を着ているが、髪型や着崩しやアクセサリーで存外バラバラの存在と分かるのが不思議だ。
教室には既に多くの生徒がいた。ただ、全員が全員とも真っ黒なセーラー服で、着崩しもせず、髪も誰一人として染色せずに真っ黒で、コピー・アンド・ペーストを連打したような光景だった。
教室は私立と言えど、存外普通であった。広さこそ、いくらか公立より広く思えるが、それは築三年の新校舎だからだろう。机も教卓もホワイトボードも、特に変わったことはない。ただ、生徒たちの顔つきは少し違った。誰もが聡明そうな目で私を見ていた。
2015/07/14
教室に入ると、いつもの喧騒が聞こえてる。
教室に入ると、いつも通りの喧騒があった。
教室に入ると、あいも変わらずやかましかった。
教室には既に九割の生徒が揃っていたが、席についていたのは五割程度だった。ほとんどは他の生徒とやかましくして、立ち歩いていた。中には教卓を占拠しているやつもいた。
教室はやかましい賑やかさがあった。
教室はガキどもの甲高い声で響き渡っていた。
教室の中はサル山とさして変わらない騒々しさだった。
教室はけたたましかった。
2025/07/13
「いってらっしゃい」と背中に声をかけられる。
「いってらっしゃい」と声を聞きながら、家を出る。
「いってらっしゃい」と妻の声を惜しみつつ、家を出る。
「いってらっしゃい」との声に私は「いってきます」と返事して玄関を開けた。
「いってらっしゃい」との声に背中を押され、軽い足取りで歩みだした。
「いってらっしゃい」その声には返事せず、私は家を出た。
「いってらっしゃい」と彼女は見送ってくれた。
「いってらっしゃい」と手を振ってくれた。
「いってらっしゃい」と扉が閉まる直前に聞こえた。
「いってらっしゃい」と大きな声が響いた。
「いってらっしゃい」とやる気ない声が聞こえた。
「いってらっしゃい」と寝室からだらけた声が聞こえた。
「いってらっしゃい」と忙しない声が聞こえた。
掃除機の吸い込み音に負けない大音声で「いってらっしゃい」との声が聞こえた。
「いってらっしゃい」といつも通りの弾んだ声に私は背中を押された。
「いってらっしゃい」と笑顔で言われ、「いってきます」と私は背筋を伸ばし、家を出た。
「いってらっしゃい」という声に見送られ、私は家を出た。
「いってらっしゃい」と優しい声のお見送りに頷き、私は外に出た。
「いってらっしゃい」との声に私は黙って手を上げ、そのまま出発した。
「いってらっしゃい」といつも通りの穏やかな声に返事をし、学校へ向かった。
「いってらっしゃい」との声を無視して、私は家を出た。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
笑顔で言われ、笑顔で返して私は家を出た。
「いってらっしゃい」との優しい眼差しを受けて、私は家を出た。
「いってらっしゃい」という穏やかな声に私は軽く手を上げて応えた。
「いってらっしゃい」と手を振る母に、私も小さく手を振り返し、私は自転車を漕ぎ始めた。
「いってらっしゃい」と背中越しに彼女の声がして、私は小さく手を上げるとそのまま家を出た。
「いってらっしゃい」と彼女は笑顔で穏やかに手を振り、私もそれに応えて家を出た。
「いってらっしゃい」との声に私は小さく手を上げて応えて、暑苦しいアスファルトの上へと足を進めた。
「いってらっしゃい」と彼女はこちらを見ずに手をブラブラと振っていたので、私も小さく手を上げて応え、そのまま家を出た。
「いってらっしゃい」との声に振り向くと、彼女は背中を向けたままだった。だから私も背中を向けたまま家を出た。玄関が閉じる直前に、小さく「いってきます」と言った。
「いってらっしゃい」との声を無視して、私は学校へと向かった。
「いってらっしゃい」との声に押され、私はいつもの通学路へと歩みを始めた。
「いってらっしゃい」との声が聞こえた気がしたが、私は既に玄関扉から離れ、通学路に立っていた。
「いってらっしゃい」と優しく言われたが、私はランドセルを慌ただしく背負って走り出した。
「いってらっしゃい!」と半ば怒鳴るような声に、私も「いってきます!」と大声で返し、急いで学校へと走り出した。
「いってらっしゃい」という小さな声に、「いってきます」と私も小さな声で、小さく手を上げて、そのまま玄関扉を開けた。
通学路は春らしく温かな風が吹いてた。
学校への通学路は、その大半が住宅地であった。
並ぶ家々は決して古くはないが、細い道が入り組んでいて迷路のような旧市街という様相だった。
直線的な道はほぼなく、うっかり道を間違えればすぐに行き止まりにぶつかる。
閑静なエリアと言えなくもないが、既に寂れが見え始めているとも言えた。
学校への通学路は、住宅地を抜け出ればバス通りの一本道である。
ただ通り沿いも住宅と街路樹が並び、車の通りも多くはなく、閑静な町並みであった。
むしろ学校へ向かう生徒らの声で賑やかさが出ていた。
2025/07/12
巨大な芸術品というような城だった。
巨大な大理石のようだった。
雪山のようだった。
太陽を燦々と浴びて、とても眩い城だった。
悠々と立っていた。
巨大な白鳥のようだった。
そこだけは神話の世界のようだった。
絵本のようだった。
光り輝く神が鎮座しているようだった。
目が眩みそうな輝きだった。
白亜の城、そのものだった。
見る者を威圧するような美しさだった。
壮観な城だった。
煉瓦製の雲かというほど巨大で優美だった。
汚れ一つない白亜の城だった。
圧巻たる巨大で、そして美しい城だった。
益荒男のような雄大さと天女のような優美さを併せ持った城だった。
2025/06/30
鉄のような少女だった。
髪こそ長く美しい金色で、顔立ちも綺麗だが、腕組みをした佇まいは何者も寄せ付けない貫禄があった。
加えて長身で、目は猛禽みたいで、纏っているのがセーラー服でなければ、自分と同じ生徒とは思えなかっただろう。
少女は無表情で頭を下げた。
いわく、この屋敷のメイドとのことだが、本職のメイドは初めて見たので思わずしげしげと観察してしまう。
上下ともに濃紫色の装いに、白エプロンというシックな装いだ。ただエプロンに加えてカチューシャはフリルつきで、上着の肩も膨らみ、ささやかだが人形のような可愛らしさがある。
しかし表情はずっと変わらず無のままで、整った顔立ちながらも、それだけに精巧なマネキンであると言われたら信じてしまいそうではある。
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