第14話 魔力がこみあげて、びくびくして、落ち着きました♡

翌朝。診療所の一室。


朝日が差し込む中、アスリナは診察用のベッドに全裸で横になっていた。


昨夜のうちに、湯浴みと魔力調整を終えている。

発情期の竜族は、魔力が皮膚表層に滞留しやすく、触診による経絡調整の際には、

衣服を介すとかえって症状が悪化する。


……要するに、全裸での診察は“理にかなっている”。


濡れた赤毛が頬に張り付き、紅潮した肌に湯気が立ちのぼる。

鱗の浮かぶ身体は神秘的で、下腹部の鱗だけが他と異なり──

魔力が滞留したように濃い紅を宿している。


その色は本能の名残のようで、目を逸らしたくなるほど艶めいていた。


「──では、始めるぞ」


彼女の視線はまっすぐ俺を見据えている。

ただ、信頼だけがそこにあった。


まずは額に触れ、軽く息を吸う。

経絡の乱れを整えるため、古医術の技を使う。

掌から流し込むのは、人間由来の魔力と呼吸法によって調整された気の流れ。

アスリナの肌がびくん、と小さく震えた。


「っ……ぁ……♡」


その声に、ラナが壁際で口を押さえたが、無視する。


触れるごとに、魔力の渦が少しずつ収まっていく。

鱗の下、肉体の奥で暴れていた熱が、ゆっくりと静まっていく。

だがその一方で、アスリナの息は荒くなり、声を抑えられなくなっていく。


「は、あ……んっ、せ、セレン……っ、な、なにか、こみあげて、あ、ああっ──♡♡」


魔力が一点に収束し、そして解放された瞬間──

アスリナの体がびくん、と大きく跳ね、脚先まで震えが走る。

数度の痙攣ののち、力が抜けたようにベッドへ沈み込んだ。


……静寂。


俺はそっと額の汗をぬぐい、アスリナの様子を確認する。


「……もう、大丈夫だ」


アスリナは、ふう、と安堵の息を吐いて目を細めた。


「……治ったのか」

「発情期による魔力の滞留だったんだ。

放出がうまくいかずに、渦になっていた」


ラナがぴょこんと顔を出す。


「ということは……もう平気?」

「うむ」


そう言って、アスリナはゆっくりと起き上がり、厳かに俺の手を取って言った。


「セレン。わしは、貴殿を“番(つがい)”として認める」


その声音には、力強い決意と、どこか神聖な響きがあった。


「はあ!?」

「儀式は済んだ。あとは、形式だけだ」

「ちょっと待て、そういう意味でやったんじゃ──!」


ラナが割り込んできた。

魔力香が少し強くなっている。


「えっ、待って!せんせぇはあたしのなのに!」

「ふむ……そうだったな。どうする、セレン?」


(俺に聞かれても)


「でも、せんせぇが同じぐらい愛してくれるなら……アスリナなら」

「わしもそれでよい」


……いや、そんな記憶はないが?

……これは、治療なんだが。


俺はしばらく黙ったあと、深く長いため息をついた。

誰にも届かない独り言が、静かに診療所に消えていった。


***


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