第22話 便利な神さま
「一〜四は魔除けの歌
つまり、五番を相殺するための歌ってわけ!それでね?……ブツブツ」
自分のこととなると語りが止まらない妄想女子になってるよ彼女。彼氏止めないのか?
僕らは2人ともポカンだよ。どうしたら良いんよ?
「いいんじゃない?かわいいよ?」
「きゃっ//」
はいはいお決まりの流れですねー。
「次行きますよ。」
「あれ?お話しが尽きたのでは?」
「思いついたの。じゃあ行きます。」
さっさと行かないとアカンやつやこれ。
『便利な神さま』
流行り病はワクチンや薬などが普及しておらず、時間が解決するものだ。
しかしそれを解決する者がいた。
名をサファー。彼は突然現れ、「病を治す」と家々を回った。
流行り病の感染者は皮膚が黒いシミのようになり、それが広がってくる病気。
風邪に似た症状、見た目の気味悪さが人々を苦しめた。
「僕がその流行り病を治しましょう」
サファーと名乗る自称神は、患者の前に立つと
即座にまばゆい光に包まれた。
その中でまるで掃除機のようにシミや風邪症状を吸い取り、それを自分に移した。
「体が軽い…黒いのが…治ってる…!お母さん!」
「ああ…なんとお礼をすればいいのか…。本当にありがとうございます」
ああ、褒められるって気持ちいい。
僕にしか出来ないことなんだ。
だから僕がみんなの分をちゃんと受け止めなきゃ
「この調子で感染者を一カ所に集めてくれるかい?できれば日の当たらない広い場所で。」
僕はどんどん治していった。
体の光はどんどん弱くなっていくけど、それ以上に達成感がある。
救うってこんなに気持ちのいい事だったんだ。
はああ、なんで早くやらなかったんだろう。
そして最後のひとり。
もう光は出なかった。でもいい。見られてなければそれで。
「ありがとうございます。村人全員を流行り病から救ってくださって…それで、あの…お代…のほうは…?」
村長らしいひとが近づいてきた。顔のシミは老人性のものだ。
きたきたこの質問。いろんな神はモノを欲してたけど僕別にお金とか興味ないしな。
「受け取りませんよ。
みなさんが元気になればそれで」
にっこり笑って見せる。
「で、ではせめてここに泊まっていってくだされ…!特に何もありませぬが少しくらいもてなししたいのです!」
「では、誰も入ってこない部屋をひとつ貸してください。少々疲れてしまいました…」
……これだけの人数は流石に体が辛い。
“吸い取り”も中々辛いものよの。
衣服の下に隠していた本体が
誰もいない…入ってこないはずの夜闇の部屋で姿を現す。
うねうね触手が踊り出す。
ヌタヌタした動きの中に
血管が浮き出て粘膜が滴るほど
“ナニカ”
に耐えるものが5本。
全部で8本なのであと3本で
どう神様を演じると言うのか。
そんなことを知らず、ドアの向こうでは村人たちが捧げ物をしようと列をなしている。
村で採れた芋で作った餅
近くの川で取れた新鮮な魚
猟で獲れたジビエ
村では滅多にないご馳走だ。
まさに捧げ物というわけだ。
吸い取った“苦しみ”を抱えてこのあとも神を演じるんだろう。とても幸せそうだ。
「はあ…ど、どうされましたか皆さま?」
サファーはまたニッコリ笑っテ見せタ。
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