俺たちYOEEEEEEE?のに異世界の迷宮に居るっぽい
くまの香
第1話 ダンジョンと言うより迷宮
前回のあらすじ
『俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?』
ある日、地球のどこかの国で行われた実験により、無数の小さなブラックホールが世界中へと弾け飛んだ。
そのホールは、最初は遠い次元との間に扉を開いただけであった。だが穴はすぐに合体して膨れ上がり、やがては地球を丸ごと飲み込むのであった。
人類は地球とともにジ・エンドを迎えるはずであった。しかし神々の介入により人は命を繋ぐ事になった。それもほんの一部にすぎないが……。
と言うわけで物語は、『神の救い』により別の世界へと飛ばされた人々と、その中に居た引きこもりニート27歳と疲れたサラリーマン27歳の、頑張る話である。
ひきニート:
サラリーマン:
『俺よえー、異世界?』では、謎の地に飛ばされた清見や大島が、同じように異世界へ飛ばされてきた人達と合流しつつ何とか生き抜こうと
巨大な樹木や大きな虫、危険な獣が
遺跡がある事から、この世界にも大昔には人型の生物が居たのではと推測される中、居た。地下に居た、人型生物。
彼らは人(地球人)と変わりないように見える上に、言葉が通じる!(謎の自動翻訳)
地下にある都市や街。地球から来た被災民達はようやく安全な場所に移る事が出来るのだ。
メデタシメデタシ(この辺で終わった)
『俺たちYOEEEEEEE?のに異世界の迷宮に居るっぽい』(略して『俺よえー、迷宮)
ここからです。
-----(清見視点)-----
自衛隊と一緒に地下都市『デスエヒンイン』を訪れた。
生まれも育ちも日本の俺の耳(脳?)に入ってきたこの都市名が『デスエヒンイン』だ。
面倒くさいから『デスエ』でいいや。……地元民に怒られるかな?
俺はいつも自衛官達の背に隠れている。今日も部屋で留守番だ。
「清見くんは民間人ですから。危ない事は我々にお任せください」
自衛隊の隊長さんがそう言ってくれたのでありがたく留守番をさせてもらう。
デスエに一緒に来た大島氏も民間人だが、彼は『完全防御』なんてレアスキルを持っているので、自衛隊と行動を共にする事が多い。大変だなぁ。でも自衛隊の皆さんも大変だ。いつもいつも、俺たち民間人のために身を粉にして動いてくれている。
だってさ、コレが『異世界転移』かは知らないけど、地球じゃないどこかに飛ばされてきたのに、彼らはまだ日本人としての責任とか義務を背負っているんだ。
俺はもう、民間も公務員も関係ないと思うんだよね。
けどまぁ、適材適所で結局色々と出来る彼らのお世話になっちゃってるわけなんだ。
だからね、俺がこの宿屋?に残っているのも、「民間人だぞ」と、怠惰を貪っているわけではなくて、ついていっても足を引っ張るのがわかってるから、俺は大人しくしている。
ただこの部屋……、押入れはない。
仕方ないよな。今時、押入れがあるのは旅館くらいだ。日本でも和風のホテルにも押入れはない、って、兄貴が言ってた。
仕方がないから部屋の隅で膝を抱える。あ、ベッドから剥がした布を頭から被る。うん、いい感じだ。
ところで、この世界……?この都市?の宿屋のベッド。大きな布が何枚もかかっていた。
シーツなの? 毛布なの? 大小合わせて5枚あったんだけど、昨夜は悩んだ。5枚ともシーツと考えて、その上に寝る? としたら毛布とか掛け布団はどこだ?
「寒くないならいらないじゃないか?」
昨日同室だった大島氏に言われたけど、うちじゃ腹こわすからちゃんとかけて寝ろって兄貴も言ってたし、裕理(甥っ子)にも必ずタオルケットをかけていた。
色々と試して、結局4枚目と5枚目の間に入って寝た。正解が知りたい。
今日は自衛隊の絹田3佐、あ、今のところ自衛隊を束ねているのが絹田3佐というおっさんだ。俺が隊長と呼ぶのは、3佐とは別の人。
この世界に来たばかりの時に最初に知り合った自衛隊の人。その人を『隊長』と呼んでいたので、俺の中ではそれがしっかりインプットされてしまったのだ。
「清見君、自分はそんなに偉い立場ではありませんよ」
何度か笑いながら言ってたけど、最近は諦めたように苦笑いしている。
俺の中では『隊長』というより、『タイチョー』というあだ名に近いんだけどな。あ、勿論、尊敬と親しみを込めたあだ名だ。
『シャチョー』とか『センセー』とは違うぞ。
今回のツアーは絹田3佐と隊長の両方が居て、俺が呼ぶと一瞬、周りが混乱する。が、諦めて対応してくれている。
で、3佐を含む前衛スキルの隊員さんと、あと大島氏もだが、『踏破済み』ダンジョンへと向かった。
ええと、この世界の自動翻訳だと、ダンジョンというより『迷宮』に聞こえる。聞こえるが、異世界ファンタジー派としてはつい『ダンジョン』と言う言葉を使いたくなる。
それはともかく、大島氏や3佐達が向かった『踏破済み』迷宮。
ここデスエから近く、以前に踏破した迷宮だそうだ。ちなみに踏破すると迷宮にはもう魔物は出現しないそうだ。
そして、それほど大きくない踏破済み迷宮は、ゴミ置き場として使われる事が多いそうだ。ゴミ置き場、と言うかまぁ、放置されるそうだ。
踏破済み迷宮も、かなり大きいものは街や都市になる場合もあるそうだ。他所から移り住み、街が出来る。
今、自衛隊が向かっている迷宮は、そこまで大きくない。中途半端な大きさとデスエからの近さゆえに、他所からの移民が街を造るのは反対が出ていて、結局はゴミ置き場的な放置になっていたそうだ。
昨夜、大島氏からその話を聞かされた。
「それって大丈夫なの? 俺らってそこに住まわせてもらうために見にいくんだよね? 俺らって流民……か移民か、どっちにしても歓迎されないんじゃないの?」
「ああ、うん。普通の……この世界でよく言われる流民って言うのか、そう言う人達が新たに街を造る場合は、近隣の街や都市の負担が大きいから、反対の声もあがるんだと」
「だったら、俺らなんてもっと抱っこにおんぶしまくりになりそうじゃん? デスエの人達は歓迎しないどころか大反対なんじゃない?」
「それがそうでもないらしい。俺らが特殊すぎて、ある意味歓迎の意見が大半だと」
なんて話を大島氏とかわした。よくわからないけど、俺らはデスエ民にとって利用価値があるって事なのかな。
それはそれで怖い、気もする。
けど、利用されようが何が起こるかわからないけど、危険な地上に居るよりは……って考えているそうだ。
それで、その、俺たちの住処になる踏破済み迷宮を大島氏や自衛隊の人達が、今、見に行っている。
「清見君、お昼を食べに行きませんか? この宿屋に食堂があるんですよ」
隊長が俺の部屋のドアを叩いてから顔を覗かせた。
迷宮ツアーへは参加せずに残った隊員達はデスエの街の探索をしているそうだ。
隊長は俺の護衛と言う事で残ってくれている。知った顔があるのは人見知りの俺には嬉しい。
隊長にくっついて食堂に顔を出す。奥の広いテーブルには迷彩服が数人腰掛けていた。
俺達を見ると声をかけてきた。
「適当に注文しときました。けっこういけますよ」
テーブルの上には、焼いた肉や煮込みのようなもの、粉系の平たい何か(ピザのパンの部分みたいなもの)があった。
それを適当な大きさにちぎり、焼いた肉を乗せて巻いて食べたり、煮物につけて食べたりしている。
他のテーブルをチラ見すると、同じような食べ方をしていた。あっちは普通の(普通の?)服だったので、地元民か旅人だろう。旅人とか居るのか知らんが。
美味しい。なんかどこかで食べたような味。コンビニでたまに見つける海外の何かみたいだ。
トルティーヤほど薄くないけど、カレーのナンよりは薄い。
俺が異世界現地料理に舌鼓を打っている横で、皆は探索した街の話に花が咲いてた。
その後、少しだけ隊長と街を回った。
デスエのお金を持っていないし、そもそも日本でもショッピングなど行った事がない。
ひきニートだし。働いていた時は疲れ切った毎日だったし、学生時代は人間関係で疲れていたし、彼女いないし。
「買い物ではなく、異世界の街を楽しみましょうよ」
隊長、流石だ。よく(俺を)わかってる。ふたりでキョロキョロとおのぼりさんになった。一応背中のバッグにポヨン君はいる。
ひとりだと迷子になりそうで怖いが、隊長と一緒なので安心して観光できた。
「日本っぽくない街並み。海外旅行にきたみたいですね。あ、俺、海外って行った事ないですけど……」
「海外超えて、地球外旅行ですね、我らは」
隊長も楽しそうに笑っていた。半年前、この世界に来た時から本当に辛い毎日だったからな。自衛隊の人達は、俺よりもずっとずっとずっと。
「アイスとか、売ってないですね」
「そこまで暑くない国なんですかね」
観光中って何故かソフトクリームとか食べたくなる謎。地元じゃ全く食べないのに。
なんだかんだで2時間ほどぶらついて、疲れたので宿に戻って昼寝をした。
揺さぶられて目が覚めたら大島氏だった。
「清みん、夕飯食いにいこうぜ」
「もうそんな時間? あ、大島氏、おかえりなさい。ご苦労様でした」
「おう。飯食いに行こうぜ」
またこの宿の食堂かなと思っていたが、大島氏に連れて行かれたのは宿屋の屋上に設けられた食事処だった。
迷彩服しか居なかったことから、俺ら貸し切りの屋上レストラン(ただの屋上)なのか。
俺はただ食べながら皆の話に耳だけ傾けていた。
「良さそうでしたね」
「ただ、何も無い場所ではあるから、これからが大変だ」
「深度は100メートルほどでしょうか。デスエと繋がる階層に俺らの街を造る予定になりますよね」
「そうだな。地下10階層に造る予定だ。今まで居たあの遺跡と違い、地上への石段も壊れずに存在している。あの石段を要に街を創造していきたいな」
「しかし地上への石段があると言う事は、地上から魔物の脅威もあると言う事ですよね」
「そうだな。そこはしっかりと防衛していかなければならないな」
「それにしても、迷宮とは謎ですね。あれで踏破済みなんですよね」
そう、耳から入ったみんなからの情報。
迷宮はまるで鍾乳洞のように複雑な洞窟が四方八方に伸びている。ダンジョンと言うよりはまさに迷宮そのもの。
基本は中央の巨大な石階段。通常は中央に壊れていない螺旋階段がある。それは普通の螺旋ではない、謎螺旋。繋がっているようで繋がっていない?
どの通路も進み続けるとやがてはそこに出ると言う。複雑だがある意味一本道。
「迷わないのに迷宮なのか?」
「十分迷いますよ? 同じ様な通路、似た広場が延々と続くんです」
そのうちの一本は確実に迷宮コアへと続く、ただ脇道が多く必ず行き止まりなので戻る事になるのだが何度も引き返すうちに混乱する。そして迷宮内は魔物が居る。
地上程ではないがそれなりに強い。特にコアに近づくとそれらは一気に強くなる。
そして最深部のコアの前に居るルーラー(支配者)を倒すとコアが解放、踏破済み迷宮として安定する。
つまり魔物は出現しなくなる。そして螺旋階段も繋がる。
俺らがこれから住もうとしている迷宮は、そんな迷宮だ。魔物は出ないが十分に複雑な迷路だそうだ。
勿論、街を造るのは、中でもかなり広い場所になるそうだ。
俺ら全部で500人くらい居るよな? 500人が入れる広場……あるのかな。
「大丈夫ですよ、清見君。想像以上に、迷宮は広いです」
ところで、屋上からみた地中の天井。
地中にいるのだから、勿論、夜空など見えない。だが、天の川みたいにものすごく綺麗だった。
あ、俺、日本でも天の川なんて見た事なかった。
「清みん、あれは光鉱石なんだってさ」
光鉱石……なんぞや。
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