文明と崩壊、そして

第22話 手を離れた“自然”

 幾つもの陸地に生態系の基礎を築いて周り、やっとの事で旅を終えてもとの大陸に戻ってきた。


「えっ、うわあ…!俺が旅立った時と、だいぶ変わってる…!」


 小さかったはずの花畑は、今や広大になり、柵でぐるりと囲まれている。

 その柵の周りを、元冬眠スライムらしき姿をした、装甲をまとったスライムが巡回していた。


「ええ……、俺がいない間に、一体何があったんだよ……」


 本当にここは俺が知っている場所なのか?と近付くと、巡回スライムからビシッと槍と化した触手を突きつけられた。


(おまえ、はな、あたまに のせてない! どこのスライムだ?!)


 どうやら俺自身から分裂した子スライムではなく、孫かその先のスライムだったようで、敷地入りを拒否される。


「あー、俺は“ハジメ”だ。セカンドは居るか?」

(ハジメ…? っさいしょのスライム、か…?!)

「そうそう」


 巡回スライムがじっと俺を見つめる。触手の槍をゆっくり下げると、後方の花畑に向かって思念を飛ばした。


(セカンド、セカンド! ハジメってやつがきた! ほんとに、あの“はじまり”の?)


 しばらくして、森の奥からぴょんぴょんと跳ねる気配。

 多肉植物を頭に生やし、大きく美しく育てたスライムが、軽やかに駆けてくる。


(ハジメ——!)


「セカンドっ!? お、おまえ……大きくなったな……!」


 セカンドの体は、かつての面影を残しながらも、一回りも二回りも成長していた。

 頭に咲かせた花は鮮やかで、まるで“冠”のようだ。

 その周囲には、俺の帰還を知った子スライム達が、続々と集まってくる。


(おかえり! ハジメ、ほんとに、かえってきたんだね!)

(そとのせかい、たのしかった? なにがあったの?)

「ああ……。山に木を生やすのは思ったより難しかったし、俺が想像もしてなかった“進化”をしてる生き物もいたよ」


 旅の概要を語って聞かせる。

 セカンドたちの、こういう興味旺盛なところはあまり変わっていないらしい。


「それにしても驚いたよ、こんなにこの場所が変わってるなんて……。おまえら、ずっとここを守ってたのか?」

(うん。ハジメが作ってくれた、いのりのばしょも、はなばたけも、だいじにしたくて)

(でもね、むしも、さかなも、たくさんきて……。たまに ぜんぶ、たべられちゃいそうで、こわされそうで。なくなっちゃうのが、こわかったから……)


 セカンドの思念には、誇らしさと、わずかな悔しさが混ざっていた。


(だから、ぼくたち、かんがえたんだ。どうしたら、まもれるか。どうしたら、そだてつづけられるかって)

「……それでおまえたちは、“文明”を築いたんだな」


 セカンドは、照れるように体を揺らす。


(うん。でも、まだぜんぜん“はじまり”だよ。ハジメがいないあいだに、いろんなこと、しった。いっしょに、また、つくっていこう?)


「ああ……もちろん」


 俺の知らぬ間に、スライムたちは世界と向き合い、知恵をつけ、戦い、守り、歩き続けていた。

 もう、俺のひとりよがりな世界じゃない。


(——これが、俺の手を離れ、彼らが築いた“自然”なんだ)

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