第17話 不完全だからこそ

 不完全な形での創造は、新たな“進化”を迫るものでもあるらしい。


 食べられる水草が多い方が生き残れた魚は、より多くのエサを探すために視覚と嗅覚——つまり目と鼻を発達していった。

 泳ぎが下手なものから淘汰され、泳ぎが上手く、息継ぎの手間を無くした——エラ呼吸を取得したものが生き残る。

 一方で、エラ呼吸を取得するのではなく、ヒレを足のように使って競争者の少ない陸に上がってきた個体も出てきていた。

 今はまだ水辺と陸を行き来する、両生類みたいなものだけど、その内完全に上陸する生き物が現れるんだろう。


(“進化”だなぁ……)


 こうして野山を駆け回る生き物が現れて、少しずつ陸地も賑やかになっていくんだろう。


(その前に作るべきは、——昆虫か、森か?)


 実はつい先日、海から陸に上がってきた生き物を見つけた。

 ダンゴムシのようなその生き物は、俺が関与していない内に、海中で節足動物へと至る進化をしていた事を物語っていた。


(節足動物ができているなら、昆虫に進化していくのも時間の問題か……)


 けれど、花の受粉を助ける“飛ぶ”昆虫が出てくるには、流石にまだまだ時間が掛かりそうだ。


 空を飛ぶ必要性に迫られるのは、どういう時なんだろう?

 そんな事を考えながら空を仰ぎ、ふと気付く——今、空を遮るような高い植物はまだ存在していない。


(生き物の多様性を求めるんだったら、もっと多くの環境が必要だろうな。海のクラゲと同じように、陸でも“襲う・襲われる”の関係が出てくるなら……きっと“隠れ場所”になる森が必要になるはず)


 今はまだ、どの植物も育つのに充分な日光を得ている事もあり、競争の必要がない。そのせいで、上へと伸びようとする進化はまだ始まっていなかった。

 でもこれが、その内地面近くの草花が動物に食べられるようになるともなれば——。


(“食べられない高さ”まで枝葉を伸ばす、“木”が出てくる時が、きっと来る)


 今はまだ草花だらけの陸地。

 ここにいつか訪れる多様化した生き物たちが現れて、命の循環が生まれる。

 そんな未来を想像して、俺の心はじわりと熱を持ち始めるのだった。





 ハジメ!ダンゴムシが、はな、たべてる…!


 あれっ、はな、なくなってない……。じゃあ、こいつ、なにたべてたの?


 ……多分、蜜を吸ってたんじゃないか?

 クラゲも海藻の花から魔力の蜜を吸ってたしな。




***




 コポコポ。

 地中深くで音が鳴る。


 それはまだ、神さえ気付いていない、全ての生命を脅やかす、破滅をもたらす音だった。

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