第9話 嵐の鉄球と破壊の剣
鉱山の坑道に風が唸る。
ヴェパルの従者が鉄球を振り、鎖がバスタを狙う。
少年はモノクルのレンズ越しに敵の動きを追う。
フルカスの老執事のような声が響く。
「若様、ヴェパルの鉄球は海の嵐を操ります。鎖の軌道は予測不能。常に動き、懐に飛び込みなさい!」
バスタは剣を構え、跳ぶ。鉄球が坑道の壁を砕き、破片が飛び散る。
(くそ、めっちゃ重い! 一撃くらったら終わりだ!)
「お前、ただの従者だろ! 主って誰だ!?」
従者が笑い、鉄球を振り回す。
「へへ、ガキに教える義理はねえ! 俺の主はレガリアを山ほど集めてる大物だ。俺みたいな従者を数従えているのさ、てめえのモノクルは俺が有り難く頂いてやる。そして主に献上してやるさ!」
(大物? 組織のボスか…?)
バスタは剣を握り、突進。
鎖が横に薙ぎ払うが、少年はしゃがんで回避し、剣を従者の腕に狙う。
だが、従者が突然足を踏み鳴らす。
坑道の地面から水が湧き出し、足首程度の小さな津波がバスタを襲う。
少年は跳んで水をかわすが、足場が濡れて滑り、バランスを崩す。
「何だ、この水!? お前、ヴェパルだろ? こんな内陸の坑道で水の力なんて持ち腐れじゃねえか!」
従者が舌打ちし、鉄球を振りながら叫ぶ。
「うるせえ、小僧! 道に迷ったんだよ! 本当なら海辺でなら腰まで水をかぶせてやるぜ!」フルカスが冷静に補足する。
「若様、ヴェパルの力は海の嵐を操るもの。隷属されていないレガリアならば、水の豊富な地域では腰の高さの津波を起こせます。ですが、隷属ゆえに能力は6割程度。坑道では力も制限されておりますな。油断せず、戦いなさい!」
(道に迷った? ハッ、情けねえ奴!ハンデもいいところだ。 なら、なおさら負けるわけにはいかねぇな、ぶっ倒す!)
バスタは剣を握り直し、突進。
従者が鉄球を地面に叩きつけ、衝撃波と小さな津波が同時に襲う。
バスタは壁を蹴り、跳んで剣を鎖に叩き込む。
金属音が響き、鎖がわずかに緩み従者が舌打ちする。
「ちっ、ガキ、動きがいいな⋯子猿め! だが、これで終わりだ!」
従者が足を踏み鳴らし、再度小さな津波が湧き上がる。
バスタは濡れた地面を滑りながらも、モノクルで敵の動きを捉え、剣を振り上げる。
従者が鉄球を振り上げるが、坑道に嵐のような風が吹き荒れる。
バスタは風に押され、壁に叩きつけられる。
(くそ…レガリヤの能力より男の筋力との差、ヤバい! でも、俺はリズにも食い下がった! こいつもぶっ壊す!)
「フルカス、鎖を切る方法は!?」
「若様、鉄球が振り回される瞬間、鎖の連結部に剣を突き刺しなさい! ヴェパルの力は隷属化で弱っております。狙いを定めれば破壊可能です!」
バスタは頷き、風と水の中を突進。
従者が鉄球を振り下ろす瞬間、少年は剣を鎖の連結部に突き刺す。
火花が散り、鎖が軋むのを見て従者が叫ぶ。
「てめえ、ふざけんな!」
バスタは剣をひねり、鎖を切断。
鉄球が地面に落ち、嵐と津波が止む。
従者が後退し、鉄球を拾おうとするが、バスタが剣を振り上げる。
「終わりだ! その鉄球、ぶっ壊す!」剣が鉄球に直撃し、赤い光が砕ける。
ヴェパルの力が消え、従者が膝をつく。フルカスが満足げに言う。
「見事、若様! ヴェパルのレガリア、破壊に成功いたしました。奴の主も、これで一歩後退ですな」
バスタは息を荒げ、剣を構える。
「お前、主の名前を吐け! どんな組織だ!?」
従者は笑い、血を吐く。
「へへ…主の名は…てめえみたいなガキには知るのすら早え…だが、覚えとけ…レガリアの戦いは…組織が支配する…」
従者が倒れ、動かなくなる。
フルカスが思案げに語る。
「このヴェパルのレガリヤ使いは、もしかすると体の何処かに刻印が施されてるかもしれませんぞ」
「どうゆう事だフルカス、分かるように説明してくれよ」
「そうですなぁ、ヴェパルとの繋がりが切れた途端にこの者は、生命が絶たれました。」
「確かに致命傷は俺も与えてないし、ただレガリヤの鎖と鉄球を破壊しただけで糸が切れたように倒れたよな」
「この亡骸の主とやらは、情報が敗戦した時に拡散しないよう手を打ったのかもしれません」
「手を打ったか、それが刻印に繋がるわけか」
バスタは剣を鞘に収め、坑道の奥を見る。
フルカスが咳払いをして言う。
「その線が強いでしょうな、奴隷を従者に仕立てて禁則事項で縛ったのやもしれませんな」
「まだ何人も居るみたいな事を言ってたよな、敵だが無理矢理の死は嫌になるぜ」
(組織…リズもこんなのに絡まれてるのか?だが 3年もあれば俺も強くなる、俺が全部ぶっ潰す!)
「フルカス、次のレガリアは?」
「若様、ヴェパルの破壊で気配が乱れておりますが…南の港町に新たな力の揺らめき。休息後、向かうのが賢明ですな」
バスタはニヤリと笑う。
「休息? んなもん後だ。フルカス、行くぞ。リズも、組織も、俺が全部倒して王になる!」
坑道に風が吹き、少年の野心が響く。
悪魔の王への道は、さらなる試練へと続く。
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