第3話「すてふりっ」
冒険者たちの集会所、酒場≪ハラペコ亭≫。
ここは冒険者の王国に数多存在する、冒険者酒場の一つ。
そんな酒場の一角に、広いテーブルをいつものようにと陣取っている、四人の冒険者たち。
剣を腰に携えた少女、剣士のソド子。
盾と鎧とで身を包む少女、盾騎士のタテ子。
幅広のとんがり黒帽子をかぶった少女、魔術師のマジョ子
白金の僧服に両手でアミュレットを握る少女、僧侶のクスリバ子。
4人の女冒険者たちのパーティーです。
彼女たちのテーブルには、サクサクの細切りポテトとベリージュースのセットが。
チーズがたっぷり乗った大きなピザも。
おいしそうな料理とドリンクを囲んで、今日も女子冒険者会が始まっているようです。
「えっ? あの技? あれは膝にドンって技ですわムハハ」
「足払いでいいでしょ。ま、転ばせてくれたのは助かるわ。今回は足ひっぱっちゃったわね」
「盾ガードしてたって言っとこ! でも今日のタテ子、戦闘中なんかワタワタしてたけど、あれなんだったの? 尻もち?」
「尻もちというか、重みに負けたというか……」
「引き上げられたちんぼつせん。床が腐ってた」
「あら~うっかり踏み抜いちゃったのねー」
「伝説の船っていうからやる気でちゃうじゃない。フル装備しちゃうじゃない。言わないでよ、もう」
「なんとかしてんのーの氷ダンジョンでも同じこと言ってたやつだ! 見たかったな~その瞬間!」
「私が悪うございましたわね!」
人が落とし穴にはまる姿ってなんでこんなに面白いんだろう、とソド子が笑っています。
マジョ子が一つまみのポテトを口に運びました。
ほら、見てください。両手にポテトを構えて、とてもきれいに食べていますね。
ポーテム……人よ、芋を食べし時も作法を守れ。
「マジョ子ってポテト食べる時、その祈りを捧げるやついつもしてるよね」
「ポテト神に祈りを捧げ、魔力を高めるための儀式」
「堂々と私の前で他の神様を取り上げないで欲しいのですが~」
「堅い事いいっこなしでいいじゃん。ポテトゴーレム強いんだし!」
「ポーテム。私のゴーレムはまだあと2回の変身を残している」
マジョ子が指を鳴らします。
ごろごろごろ、彼女のマントの下からジャガイモがたくさん転がり落ちてきました。
それらが集まって、大きな人型になっていきます。
『フレッシュ・ポテト・ゴーレム! ポテイト-ON!』
『ベイクド・ポテト・ゴーレム! ポテイト-ON!』
「どや」
電子音声を発するポテトゴーレム。
ゴーレムにはこんな種類もあるんですね。
突然現れた二体のゴーレムたちがポーズを取りながら、マジョ子の椅子を掲げます。
他のテーブルにいる魔術系のみなさんが真っ青な顔になっていますね。
どうやらとても高度な魔術式のようです。
「あんたのゴーレムにも助けられたわ。はーもう、今回私はいい所なしね」
「んん~、わたしは~」
小樽ジョッキを傾けていたクスリバ子が、白髭を作りながら今日の冒険の振り返っているようです。
良いことがあったんでしょうか。
満足そうに、ふんわりと笑っています。
「今日も運がよかったですね~これも神のご加護のおかげですとも、ええ」
「運要素なんてあったっけ?」
「足をくじきそうになったけど、地面がたまたま柔らかかったり。私も危うく舟板を踏み抜きそうでしたし」
「ふんふん」
「敵の攻撃ミスが連発してましたね~。魔物の吐いた毒液が、私のものだけ空中で急に軌道を変えたりとか~」
「ふんふん、ふん?」
「あとなんといっても宝箱の中身! 今日もたっくさん稼げたわ~!」
「うーん、豪運! ありがたやありがたや」
「私のポテト魔術はまだ運命操作は出来ないが、そのうち出来るようになる」
「そうです。私、ステータスは運にた~くさん、振ってますから」
「は?」
タテ子に電流走る。
一瞬の沈黙がテーブルに下ります。
「えっ、聞き間違い? 信仰心とか知恵とかじゃなく、運!? え、まじで!?」
「はい、だって、運が良ければ死なないんですよ? 当たり所がよければ苦しませずに一発ですし~」
「それ僧侶のセリフとしてはどうなの」
「それにステータスで信仰心を上げるなんて、信仰に対する冒とくだと思いません?」
「僧侶としてまっとうなセリフだ……いや、ちょ、待って待って。ちょ待てよ。確認させて? 全員ギルドカード提出」
タテ子の号令でテーブルの上に全員のギルドカードが出されます。
カードの端を押し続けて、ステータスが投影されました。
とってもハイテクですね。
「ソド子はちから全振り、じゃない!? 魔力!? なんで魔力!?」
「力こそパワー! 魔力とは力という字が使われておる! だから実質力全振りだよね!」
「いやいやいや、やめて? 私のわかる言葉で会話をして?」
「魔力と筋力があわさって、1たす1が2の力じゃあなくなる! 私のパワーは1たす1で200! 10べぇだぞ10べぇ!」
「純剣士が魔力を上げるなああ! あんた前衛でしょうが! せめてちから特化か、私みたいにバランス振りでしょ!?」
「すばやさも上がる個体値なので! 当たらなければどうということはなァいのだ!」
「当たってんだよなー! もういい! 次! マジョ子! あんたはなんですばやさ上げてるの!?」
「はやくちになる」
「魔術のクイックキャスト、理にかなってる、のか!?」
「となりの客はよく芋食う客だ」
「いや騙されるな私! パーティの自主性に任せた私がンググググ!」
苦悶の声をあげるタテ子です。
レベルアップに伴うボーナスポイントを、各ステータスに割り振ることをステ振りといいます。
一度振ったらもう戻らない、取り返しのつかない要素。
パーティメンバーのみんなは、タテ子の考えに沿わない割り振り方をしてしまったようですね。
タテ子は不満はあれど飲み込んだようです。
パーティの決定権を奪わない、自主性を重んじるすばらしいリーダーですね。
「そんな悩まなくってもいいって~! ステータスってある日突然伸びたりしない? なんか昨日よりちょっと速く剣が振れた気がする日とか」
「あるわけないでしょそんなもん……」
「えー! でも力なんて毎日剣振ってたらモリモリあがってくじゃん!」
「いや、魔物みたいな存在が格上の相手とやりあうのはステータスの加護あってのものでしょ……人間の地力なんて微々たるものでしょうに」
「レベルが低くてもマッチョな人はパワーあるじゃん! あれと一緒だよね! うちのじっちゃとか若い頃は片手で飛びトカゲの首を固結びにしてたとか言っててさあ」
「ご年配の方の武勇伝は話半分に聞いておきなさい」
タテ子は眉間にシワを寄せながら、グラスの水をくいっと飲み干します。
魔物……この世界の上位存在。
そんな存在が世界の支配者になっていないのは、ひとえに冒険者たちの働きのおかげ。
彼女たち冒険者の手によって、この世界は守られているのです。
「知恵は己で身に着けるもの」
「信仰もそうよ~」
「剣の道に近道なんてないんだってじっちゃも言ってた」
「急にまともなこと言い出すのやめてくれない!? もういいわよ!」
ステ振りは性格が出るのね、と思考停止することに決めたタテ子でした。
先行き不安、それでもきっと明日も楽しい一日になることに違いありません。
明日の冒険のために、飲んで、食べて、英気を養う。
女冒険者たちの冒険は、帰ってからが本番です。
それゆけ女冒険者!
いざゆけ女冒険者!
彼女たちの「お話」は、今日のところは、これでおしまい。
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