第13話 西へ西へ、そして、ドワーフの村

ラグナス王国を目指す長い旅の途中、三人は深い山あいの道を進んでいた。空気は澄み、朝露に濡れた葉が太陽の光を受けてきらめいている。


 先頭を歩いていたのは、青髪に銀縁の眼鏡をかけた青年、ダリル=ベルトレインだった。ローブの裾を気にしながら慎重に足を運ぶ彼は、時折周囲を見回しつつ、低く呟いた。


「……このあたりだったはず。拙者が以前、療養していたドワーフの村。今でも歓迎してくれるかどうか……少々不安ですな」


「ボクが一緒なんだから、心配することないって」


 金色の髪を風になびかせて微笑むのは、アリスター。整った顔立ちに自信満々の笑みを浮かべ、自称・元王子の魔法使いである。


「だね! 温泉とかあると嬉しいなぁ~」


 軽やかな声でそう答えたのは、桃色の髪を揺らすエリーゼ=アルセリア。その右腕は金色に輝き、左足は銀の光を宿している。彼女は剣聖であり、異世界からの転生者という秘密を抱えていた。


 三人はそれぞれが冤罪により祖国を追放された過去を持ち、今は冒険者として旅を続けていた。ダリルの提案により、この山中のドワーフの村に立ち寄ることにしたのだ。


 やがて、岩肌に抱かれたような石造りの村が姿を現す。頑丈な門と煙を上げる煙突、鉄と土の香りが混じるその風景に、エリーゼが目を輝かせる。


「すごい……まるで鍛冶屋の街みたい!」


「ドワーフたちは鍛冶と鉱山の民ですからな。拙者が聖教国から追放された直後、世話になった場所です。ここを起点にいろいろと聖教国の情報を収集していました」


 門の前に立つと、警備のドワーフが怪訝な目を向けたが、ダリルが名乗ると表情が一変した。


「……お前さん、ダリルじゃねえか! こりゃまた珍しい顔が来たもんだ。村長に通してやる」


 村の中は石畳が敷かれ、あちこちに炉や作業場が並んでいた。鍛冶場では火花が舞い、武器や鎧が次々と打ち上げられている。


 村長の家で出迎えたのは、腰まで伸びた白髭を蓄えた老ドワーフだった。


「久しいな、ダリル。お前さん、生きとったか」


「おかげさまで。今回は、旅の途中で立ち寄らせてもらいました。情報収集も兼ねて、少々休息を……」


 村長は頷いた後、ちらりとアリスターとエリーゼを見た。「同行者たちも、なかなかの面構えじゃな。安心せい、今宵は酒と食を用意してやろう」


 宿舎に案内された三人は、久しぶりの温かい寝床に安堵の息をついた。夕餉の席では、焼き肉と麦酒が振る舞われ、エリーゼはすっかり打ち解けていた。


「うん、このお肉、すっごくおいしい!」


「ボクの舌も満足してるよ。珍しいね、ここまで調味が整ってるのは」


「拙者は……あまり酒には強くありませんが……」


 そんなやり取りが笑い声と共に続く中、村長が真顔で口を開いた。


「すまんが、一つ頼みがある。最近、採掘場に“蛇の魔物”が現れてな。作業が止まってしまっている」


 ダリルは険しい表情になった。

「それは……もしかして、“地底のサーペント”では?」


「そうだ。お前さん、知っておるのか」


「拙者がいた頃も、その名は噂で聞いたことがあります。ですが、実際に現れるとは……」


 アリスターが立ち上がる。

「ボクたちが片付けてあげるよ。でないと旅の途中で困るからね」


「わたしも、全力で斬るよ!」

 ダリルが頷きながら、不安そうな顔を浮かべる村長に向けて頷いた。


「村長、エリーゼ殿は、剣聖のスキル持ちでござる、安心されよ」

「お嬢ちゃん、剣聖の称号持ちなのか、なら、討伐のお礼として剣聖の装備を渡そう」

 そう言って村長は、席を立つと、すぐにエリーゼのための装備を持って戻ってきた。


 かくして、三人は翌朝、村を救うために再び鉱山の奥深くへと足を踏み入れるのだった。


【エリーゼ=アルセリア】


レベル:26


HP:405


MP:217


攻撃:483【258+剣225】


防御:667【242+上下425】


早さ:612【402+脚210】


幸運:100MAX


スキル:──剣聖──フェンリルの加護 金龍の加護


装備:武器 テオドリック帝国 王家の剣 

   防具 上半身 剣聖のドレスチェスト

      下半身 剣聖のレッドプリーツ

      脚   剣聖のブレイズブーツ

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