第3話
倉庫から大名行列のように、バッファローやらシカやらウマなんかがスピーカーを運び出します。
ちょっと坂になっているので、ライオンの王宮までの道のりは大変です。
バッファローが文句を言います。
「おい、一体、これをなんに使うんだ?」
シカが、さあ、と首をかしげます。
「白いタイガー様の考えてることは、私らにはさっぱり見当もつきません」
そうして運び出した20個のスピーカーを、さあ、どこに設置するのでしょう?
みんながホワイトタイガーを待っていますが、一向に現れません。
しかたなく、バッファローが呼びに行きます。
「お〜い、リアム、どうやって置けばいいんだ〜」
すると、奥の部屋からムーンウォークでホワイトタイガーが現れました。
手にはメモ帳、頭にはヘッドホンを付けて、完全に自分の世界に入り込んでいます。
「イェ、今、ナイスなインスピレーションがわいてきたとこだ。忘れない内に、メモメモ」
手帳には、「ガォウ」とか、「ギィッ」とか、「グォー」とか、ライオン語で何やら色々書かれています。
しかし、この歌詞の価値が分かるのは、この世界でこのホワイトタイガー以外にいないでしょう。
バッファローが困っていると、チンパンジーが現れました。
「ごらんの通り、リアムは私らのことは見えてません。僕が指示を出します」
チンパンジーの指示にしたがい、ホールにスピーカーを設置します。
20個もあるスピーカーを全部設置するには、コンセントの数が足りません。
そこで、チンパンジーはえんちょうケーブルを何本か倉庫から取ってきて、そこにスピーカーを設置しました。
ホールにズラリ、と20個ものスピーカーが並びます。
さあ、仕事も終わったし、そろそろ帰ろうかと思った時、ようやくホワイトタイガーがこちらに気付きました。
「やあやあ、みんな。どうしたのさ、こんなに集まって」
「全部、お前のためにやったんだよ」
バッファローが、低い声でホワイトタイガーをにらみつけます。
「そうなんだ。チンパニーが指示したのか?よっしゃ、これからちょっとリハーサルしようか。みんな、残って聞いてくれ」
ところが全員、しらけた顔でホールから出ていきます。
ホワイトタイガーは頭の上に「?」が出ましたが、みんながいなくなっても別に気にしませんでした。
それより、さっき思いついた歌詞の方が大事だったのです。
「この歌詞はスゲェぞ!どんなごちそうより価「かち」がある」
ホワイトタイガーは、頭の中から取り出した「お宝」にこうふんしています。
さっそく、マイクをスピーカーにつないで、一人でリハーサルを始めました。
思いっきり、息を吸い込んで…
「ガァ、ギィーッ、グゥ!」
バァン!
突然、周りが真っ暗になりました。
「わああっ、なんだなんだっ、誰か、助けてよーっ!」
一体、何が起きたのでしょう?
どうやら、「電気」の使いすぎで電源がオーバーヒートしてしまったようです。
ホワイトタイガーは、暗闇が一番の苦手。
両手で目をふさぎ、その場から動けなくなってしまいました。
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