第4話
「グゥルルル…」
真っ暗で何も見えないホールに、けもののうめき声のようなものがひびきました。
ホワイトタイガーはその声にびっくりして、全身の毛がさか立ちます。
「だ、だ、誰なのっ?」
「まさかこんな風にチャンスが巡ってくるとはな」
「その声は… エメルダ?」
その声のあるじは、エメルダと呼ばれた黒ひょうでした。
黒ひょうはくっくっ、とあやしく笑いながら、ホワイトタイガーにゆっくり近づきます。
そして、ギラリとキバをのぞかせると…
ホワイトタイガーのしっぽに、がぶりっ!とかみつきました。
「いったーーい!!!」
しっぽを思い切りかみつかれ、ホワイトタイガーは思わずその場から飛び上がりました。
「さあ、しっぽをかみちぎられたくなければ、次の王様の座を俺にゆずると言え!」
黒ひょうとホワイトタイガーは、この王宮の後継者の2人でした。
ホワイトタイガーはそんなことに興味はありませんでしたが、黒ひょうはじっくり、それを狙っていたのです。
ホワイトタイガーは、目に涙をためて、助けを求めました。
「誰かー、助けてーっ!」
黒ひょうはしっぽにかみついたまま、言いました。
「誰も助けるハズがないだろ!お前はいつもひとりよがりで、やりたいことしかしない。そんなヤツのことを、誰かが助けるわけがない。王は国民の「しじ」がないとなれないんだ。お前が大事なのは、自分の「歌詞」だろう」
ホワイトタイガーは、このまましっぽがなくなってしまうくらいなら、降参しようかと思いました。
その時でした。
パアッ、と天井の照明が付いて、部屋の明かりが元にもどりました。
ホワイトタイガーは明るくなって、ようやく、体が自由に動くようになりました。
黒ひょうにパンチをおみまいすると、大きな体がのけぞります。
「何で明かりが元に… クソッ」
体つきはホワイトタイガーの方が一回り大きく、せいせいどうどう戦えば、黒ひょうに勝ち目はありません。
黒ひょうは、あと一歩のところでホワイトタイガーに負け、とぼとぼとどこかへいなくなりました。
「ダイジョーブ〜?」
ヒューン、と風を切って緑のセキセイインコが現れてます。
そして、ホワイトタイガーの肩にとまりました。
「いてて、しっぽが… これは、手当しないとなぁ」
ホワイトタイガーのしっぽは赤くはれてしまい、まだズキズキします。
それでも、黒ひょうがいなくなって、ホッとしたみたいです。
「でも、助かったぁ〜。この明かりはインコ、お前が戻したのか?」
「違う違う、マーチだヨ。コアラのさッ」
「コアラ?コアラが俺を助けてくれたのか」
セキセイインコがホワイトタイガーのピンチを知らせて、コアラがこの王宮にかけつけたのです。
コアラはオーバーヒートして落ちてしまった「黒いスイッチ」を下から上に上げて、照明を再び点灯させました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます