第15作 【三題噺 #114】「自然」「渦」「身分」

 生活保護受給者呂律ろれつは、就労支援を担当するアドバイザー部久べくに就職活動の報告をしていた。


 部久べくは金髪にツインテール、ゴスロリ風魔法少女風の服装でかわいらしさを意識した職員だった。後ろ姿だけならアイドルと言われても信じてしまいそうな見た目だが、アイドルというには一つ難点がある。年齢が52歳ということだ。


「あなたの自然体だと不合格になっちゃったのかしらね?」

「嘘をついてでも、面接の対策をした方がいいのでしょうか?」


「いえ、面接官も定型句でウソを言えば見抜いてくるし、仮にそれで就職できても、働き始めてからの方がしんどいわよ」

「しかし、早く無職という身分を返上したいので」


「そうさね……」


 部久べくは、裏紙に何かを書き始めた。ただの渦巻きのように見える。


呂律ろれつさん、この絵見て、何に見える?」


「え? うず……蚊取り線香でしょうか?」

「それがあんたの直感だよ! さあ、蚊取り線香の会社の求人情報を探すよ! 困ったときは直感こそが頼りだよ!」


「な……なんか、直感で行けば成功しそうな気がしました!」

「あったよ、ちょうど営業職を募集している! でも呂律さんは車の免許を持っていないんだったね……」


「はい。持ってません」

「しかし、勢いだよ! 直感を信じるんだよ!!」


「はい! 行けそうな気がしてきました!」



 * * *



『弊社の採用面接にお越しいただき、ありがとうございました。

 慎重に選考を進めさせていただいた結果、誠に残念ながら今回は選考を見送らせていただくことになりました。

 貴殿の益々のご活躍をお祈り申し上げます。』

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