第21話 そして『誰か/世界』を救うため

 ―――三日後、こわいまものがたくさんやってくるよ。女の人のこえがわたしに、そうおしえてくれたの。


 幼い少女クレアのその言葉は、彼女の世界を一変させた。


 幸い、彼女の村を襲った魔物の群れは冒険者たちに無事討伐された。クレアの両親や村の人々は皆無事だった。とはいえ、クレアの言葉が気がかりだった両親はクレアのことを村の教会の神父に相談する。


 ……うちの娘は魔物の襲来を予期したんだ。

 両親のそんな話は神父に伝わり、大きな町の神父に伝わり、やがて大聖堂の司教に伝わった。


 彼女の運命はそこで決定的に捻じ曲がることになる。

 


 

 クレアは両親の元から離され、サンクアリア大聖堂に連れていかれた。


 そこにクレア自身の意志は関係ない。当然彼女は泣いて嫌がったが、両親は満面の笑みで「これは名誉なことなんだよ」と喜び、クレアを送り出した。クレアが8歳の誕生日の翌日のことだった。それ以来、両親の顔は見ていない。クレア自身も最早家族に会いたいとは思わない。


 ―――悲劇は、彼女は特別な存在であっても、唯一の存在ではなかったということだろう。


 同じように女神の声を聞いたという『聖女候補』は、幾人もいた。


 クレアと同じように魔物を襲撃を予期した者。

 村の地面に眠る神器を掘り当てた者。

 近しい誰かの死を予知した者。


 少女たちは皆「女の人の声を聞いた」と嘯いていた。


 同じような歳の頃の同じような境遇の少女たちが大聖堂に集められる。


 一体誰が本物の聖女なのか。一体誰が本当に女神の声を聞いているのか。

 ……誰が世界を救うのか。


 大聖堂の司教たちは悩んだ。

 悩んで、悩んで、仕方がないから『選別』することにした。


「――――これは必要なことなんだよ」


 司教たちは何処までも清らかな笑顔で鞭を振り上げた。

 その度にクレアの背に赤い傷が増えていく。


「伝承によると聖女はね。その清らかな光で人々の傷を癒したそうだ。君たちの誰かが本当に聖女なら、同じ力に目覚める筈さ。そうに違いない。さあ、まずは自分の傷を癒してごらん」


 司教たちは聖女候補たちに鞭を叩きつける。

 世の為ならどんな狂気も許される。サンクアリア大聖堂とはそんな場所だった。


 鞭の痛みも嫌だったが、もっと耐え難かったのは、彼女の内から湧き上がってくる『渇き』であった。


 ―――魔物を、魔族を殺さねば。魔王を滅せねば。


 内側から湧き上がってくる、自分のものとは別のモノの思い。己が作り替えられる感覚。これが『聖女』になるということなのか。ただ、ただ恐ろしかった。


 大聖堂に連れられて、3年後、クレアはそこから逃げ出した。

 11歳の秋である。


 ――――もう何もかもが嫌になった。


 大聖堂を抜け出し丘を下り、王都エルダの街並みにまぎれこむ。しかし彼女は王都には何の縁もなければ、土地勘もない。大聖堂の外に出たのも初めてだった。


「おなか、へった……」

 

 路地にへたり込む少女を、大人たちは誰も助けようとはしない。魔族に世界が脅かされて数十年、皆自分のことで精一杯で、他人を助ける余裕なんてなかった。


「―――おねえさん、どうしたの? もしかしてお腹へってるの?」


 けれど、そこに一人の少年が声をかける。


 クレアよりも2,3歳年下だろう、くすんだ金髪の髪の男の子だった。彼は白い歯を見せにっこりと笑いながら、手に持ったリンゴをクレアに差し出す。

  

「だったらこのリンゴを食べなよ! ん? だいじょうぶ! ぼくはさっき食べたから!」

「え、でも……」


「いいから、いいから!」

「あ、ありがとう…!」


 夢中になってリンゴを食べ終わった時、ぐう、と少年のお腹から音が鳴った。


「へへ、お腹なっちゃった。ごめん、実はさっきのうそなんだ。それがぼくの昼ごはんだった」

「ご、ごめんなさい……! わたし」

「いいんだよ、おねえさんがお腹いっぱいになったんだから!」


 少年は本当に気にしてなさそうだった。クレアが笑顔になったから、それで満足お腹いっぱいだとでもいうような笑み。


「ぼく、ジーク・・・! ジーク・ヴァルライド! ジークって呼んで! おねえさんの名前は?」


「わ、わたしクレア! クレア・ティアリアナ! わたしのことは…ティアリアナって呼んで…!」


 もう誰も呼んでくれなくなったティアリアナという性を名乗る。大聖堂に足を踏み入れた瞬間、両親の子供の証でもあるティアリアナという性は捨てさせられた。今の彼女はただの『聖女候補クレア』だ。


 そこから始まるのはたった3日間の物語。

 地獄のような毎日に、ほんの少しだけ挟まった、幸せで残酷な3ページ。

 

「ぼくはそこの空き家に一人で住んでるんだ。毎日、教会の仕事を手伝って、お駄賃にゴールドとご飯を貰ってる。ティアリアナ、もしかしてきみ、行くところがないの?」

「う、うん……」


「だったら教会においでよ! 教会の掃除をしたり、荷物を運んだりするとスープやリンゴをくれるんだよ! 神父さまもやさしいし、同じ歳の子供たちも何人かいるよ! 」

「ごめんなさい…。わたし、教会に行くわけにはいかないの…。理由は、言えないけど…」


「そうなんだ、残念…。わけは気になるけど…きみが言いたくないなら聞かないよ!」

「ありがとう…」


「君、寝るところとかあるの? あと、ご飯のあては?」

「な、ない……」


「そっかぁ。じゃあ僕のところにきなよ! ぼくしか住んでないけど、毛布もちゃんと2枚あるよ! ごはんも、ぼくのごはんを2人でわけあえば大丈夫!」


「い、いいの?」

「いいのいいの。神父様が言ってた! たすけあいが大事だって! ね、行こうティアリアナ!」


 ジークは王都の片隅の空き家を改造した彼だけの秘密基地に彼女を招待した。ジークは昼間、教会に仕事をしに行き、報酬として少しの賃金と食事を貰ってくる。


 食事と共にたわない話を交わす。


 将来何になりたいか。

 どこに行きたいか。

 そんな叶うことのない夢を話しているとき、クレアは自分の過去とこれからの未来を忘れられた。


 クレアが夜の闇が怖いと言えば、少年と少女は同じ毛布の中で肩を寄せ合って眠った。少女にとって、貧しく、先行きの見えない、だけど暖かな夜だった。


 

 ジークのいない時間。

 クレアは何となく家の周りを散歩した。それがいけなかった。


「お嬢ちゃん、一人でどうしたのかな?」


 一人のひげ面の男がクレアに声をかけてくる。

 下卑た笑いを浮かべながら、男は言う。


「お父さんやお母さんはいないのかい? いないのかい、そうかそうか」

「さあ、おじさんについてくるんだ。いいから早く来い!」

「お前は明日から奴隷だ! どっかの変態貴族に売られるんだよ!」

「はは、だけどその前に俺が先に楽しませてもらおうかな!」


 人の悪意が少女を襲う。

 

「た、たすけて!! だれかたすけてえええええ!!!」


 だけど、その時。


 ―――声が路地裏に響いた。


「おまえ! そこまでだ! ティアリアナを傷つけるやつはぼくがゆるさないぞ!」


 少女の悲鳴を聞きつけ、駆けつけたのはジークだった。

 彼は棒きれを手に握りしめ、悪漢に立ち向かう。


「なんだぁお前! どけ! 殴り殺されてぇのか!」


 少年の目には涙が浮かんでいるのをクレアは見た。

 彼だってクレアと同様に、怖いのだ。だけど、クレアの為に戦っているのだ。


 少年の細く非力な体では大人に勝てるわけがない。

 結果は分かりきっていた。それでも彼は必死に棒切れを振り回す。どんなに殴られても、蹴られても。


 棒切れが悪漢の頭に偶然あたり、悪漢は気を失った。

 だけど、少年の身体はボロボロだった。体の至る所から血が流れ、骨も折れている。


「ジーク! ジーク!! しっかりして! お願い! 死なないで!」


 意識を失ったジークにクレアは縋りつく。

 暖かな緑色の光が彼の身体を包み、その傷をゆっくりと癒していく。クレアは『聖女』の力に目覚めたのだ。






「―――――クレア様。探しましたよ。こんなところにおられてたのですか。さあ、大聖堂に戻りま……その力っ!? ……貴方が真の聖女だったのですね…!」


 結局、クレアは大聖堂に戻ることになった。

 彼女の帰るところは、やはりそこにしかない。


「……聖女様が共に数日過ごしたという少年。ようやく目を覚ましましたよ。命には別条ありません。聖女様の癒しの奇跡の賜物でしょう。しかし大怪我の後遺症か、ここ一月ほどの記憶は混濁しているようです。貴女様の顔も覚えているかどうか……」


 一連の記憶を失った少年は、やがて教会の運営する孤児院に贈られた。

 結局、クレアの行動は、彼女自身の首輪を増やしただけかもしれない。


 

 それでも彼女は覚えている。

 それでも彼女はっている。



 ジーク・ヴァライドは勇者なのだと。

 あの日間違いなく少女を救った、彼女だけの勇者なのだと。




 彼こそが、勇者にふさわしい人なのだと。





 そして現在―――。

 聖女クレア・ティアリアナはラーラに言いきった。

 聖教の頂点に座し、万象を見通す怪物に。



「ラーラ様! 貴方は何もわかっていない! 確かにジーク様はまだ何の力もない少年にすぎなのでしょう! まだ、何も為せていない只人ないのでしょう! 力もなければ、知識もない! ですが、ですがっ!!」



 ―――10日ほど前。


 魔物を討伐し、近くの町に帰った何でもない日、クレアはジークと再び出会った。向こうはこちらのことを何も覚えていなかったけど、貧しくも穏やかに生活する彼を見て、クレアは心底安堵したのだ。


 だけど。

 運命は彼を選んでしまった。本当の勇者はジークだった。


 聖女として覚醒して以降彼女の中に産まれた「魔族と殺せ」という渇き。

 それが、真実を偽ることを許さない。そもそもクレア一人で永遠に隠し通せることではない。


 だからこそ、クレアはアレインを先んじて亡き者にしようとした。アレインだって偽物ではあるが、一応聖剣を台座から抜き握ることができたのだ。勇者の素養は、ジークには遥かに劣るが微かにその身にあるのだろう。


 もしかしたら、ラーラはジークを殺し、アレインに勇者を続けさせるかもしれない。その万が一の可能性にクレアは先に行きついていた。


 どんなことをしても、どんなに手を汚しても、ジークを守ると誓ったのだ。今度は私が彼を『たすける』と決めたのだ。その決意は、ラーラの前ではほとんど意味を為さなかったかもしれないけれど。


 今の彼女にできるのは、ラーラに本心から訴えかけることしかない。

 

「魔族を滅し、魔王を倒し、遍く万人を救うのはジーク様です!! あの方は決して諦めない!! 逃げない!! それを私は識っています!!」


 だって、少女は本気で信じてもいるのだ。

 いつの日か必ず―――。


「今は弱くとも―――彼は必ず皆を救う勇者になります!! 聖女クレア勇者ジークがそれを為します!」 





 




 ジークは逃げだ。逃げ出した。



 涙ながらに、悲鳴を上げながら、少年は魔族から逃げることを選んだのだ。

 ジーク・ヴァルライドは何処まで行っても只の少年でしかなかった。



 教会の床を蹴り、出口を目指す。

 そして。

 足をもつれさせ無様に床に転がった。



 一人の少女がジークを見ているのに気付いたから。


 ユリウスの攻撃の余波で崩落した天井に巻き込まれたのだろう。彼女は下半身を瓦礫に固定され、身動きがとれないようだった。


 今の今までジークはその存在に気付かなかった。ユリウスとの戦いとその後の拷問の最中で、周囲に気を割く余裕なんてあるわけがない。



「はははははははははははは!! 逃げることもできないのか、お前は!」


 ユリウスの嘲りも今は耳に入らない。

 

 見たこともない顔だった。

 当たり前だ。少女もジークを見るの初めてだろう。


 下半身を瓦礫に圧迫され意識は朦朧としているのか、その眼の焦点は虚ろだ。


(き、気にするな。何をやってるんだ、ぼくは。早く逃げろ。早く逃げろ……! 逃げるんだよっ!)


 ジークは心の内で「逃げろ逃げろ」と繰り返す。


 なのに、

 なのに、


 彼が確かに聞いてしまったのだ。

 少女の余りにもか細く消え入りそうな、小さなその呟きを。

 どこまでも純粋で、縋るようなその声を。











「――――――――たす、けて―――――――」











 少年は、

「あ」


 小さなうめき声を漏らす。

 

「あああああああああああああ」


 徐々にそれは大きくなる。

 少年は叫んだ。 

 


「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!ああああああああああああああぁぁぁ!!!」


 

 魂を吐き出すように、恐怖という感情を絞り出すように、彼は吠える。



 いつか、どこかで。


 『たすけて』、と誰かが言った。

 『たすけて』、と誰かが言った。


 『たすけて』、と誰かが言ったのだ。


 人は魔物と魔族の脅威に晒されて。皆他人のことなんてどうでも良くて。痛みと苦しみばっかりの、このくそったれな世界で。誰かは救いを求めたのだ。


 それは幼き日に出会った名前も顔も朧げな少女であり、それは孤児院にいた頃に隣の教会を訪ねてきた名もなき人々であり、それは勇者になってから自分に希望を託そうとした民衆であり―――今ここで、瓦礫に足を潰され自分に助けを求めるあの子だった。


 彼らは『たすけて』と確かに言ったのだ。


 ―――こんなぼくに、何もできない、クソガキに。

    魔族相手に、逃げ出そうとした自分に。


(……い、嫌だ)



 傷つくのは嫌だ。



(嫌、だ)


 死ぬのは嫌だ。



(嫌、なんだ)


 怖い。怖い。怖い。怖い―――!!


 でも、それでも―――!。


「ぼくが、逃げてっ……誰かが傷つくのは……もっと、もっと嫌だ……怖いんだよ…」


 自分が傷つくより、死ぬより、もっともっと恐ろしい。

 少年は、その感情を自覚した。思い知ってしまった。


『……大丈夫だよ少年。君は強くなれる。いつか誰かを救えるくらい』


 無敵に見えたあの人は、そんな優しい言葉を自分にかけてくれた。自分の命を優先していいのだと。ゆっくり、成長していいのだと、慰めてくれた。剣をとるのは、まだ自分たちにまかせておけと、そう言ってくれたのだ。


 だけど―――。


(いつかって、いつだよ!?)


 だけど―――!!


(ぼくは、今、ここで!!! 目の前のあの子を守りたいんだ―――!!)


 

 ゆっくりと、ゆっくりと、彼は、立ち上がる。


 後ろを、振り返る。

 戦うべき、敵を見据える。


 そこには魔族がいた。

 今のジークよりも遥かに強く、人を弄ぶ醜悪な魔族がいた。


 ジークの決意もユリウスには何かの見世物に見えているのだろう。心底可笑しそうに言う。


「おいおい突然叫んでどうした? まだ震えて泣いているじゃないか?」


「……ああ、そうだ……。怖いよ……逃げたいさ…でも、やっぱりそれは嫌なんだ…」


 ぼたぼたと涙を流しながら。ガタガタと体を震わせながら。


 ―――それでも少年は一歩を踏み出す。

 自分を見つめる少女を庇うように。その『たすけて』を現実とするために。


「ぼくは、ジーク・ヴァルライドっ!!、ここで《・・・》、誰かを救う勇者だっ……! いくぞっ! 魔族っ!!」


 やはりそれは小さな小さな一歩でしかない。

 距離にして、たった30センチ。


 その儚く、何処までも大きな歩みを、人々はこう呼ぶのだろう。


  ――――『勇気』と。


  だから。


  人々はそれを抱いて戦う者をこう呼ぶのだろう。

  憧れと、希望と、願いを込めながら。


  ――――――――『勇者』と。


 こうして。


 ジーク・ヴァルライドは、『勇者』として、初めて剣をとったのだ。





 黒騎士のハルベスタはロンドの南門の前にいた。


 門の前に衛兵たちはいない。黒騎士たちを討伐にいったのか、或いは建物の倒壊に巻き込まれた住民を救助しているのか。どちらにせよ、ハルベスタの思惑通りだ。


 都市は現在、大混乱している。

 たった一人、門から町の外に出ても誰も気づかないだろう。


(いい町だったんだがな。まあ、仕方ない)


 次はどの国のどの町に潜もうか。

 

(数年暮らした町だ。流石に名残惜しくはあるな。去る前に、たっぷりと命を奪っていきたいところだが…)


 あいにく、他の黒騎士たちがどれ程命を奪えているか分からない。流石にあらゆる場所に数十体も同時に黒騎士を展開すると、一体一体との意志の疎通は難しくなるし、視界の共有もできなくなる。


(ふむ。まあ、良い。さらばだ、城壁都市。ロンド)


 そして、ロンドを門に向けて足を再び踏み出した、その時―――。


「……蝶?」


 仄かな紫の光を放つ蝶がハルベスタの視界を舞った。


「これは……使い魔?」


 最初は1匹だけだったが、気付けばハルベスタを取り囲むように、何匹もの蝶の使い魔が彼の周囲を舞う。




 コツンと、足音が鳴った。


「―――見つけたぞ」


 瞬間、ハルベルタは背後を振り返った。


 闇の中。

 無数の蝶を引き連れて、



 ―――――1人の少年が立っていた。



 黒髪に灰色の瞳。背は高いが際立って巨漢と言う訳でもない。

 見た目は何処にでもいるただの少年。


 だというのに、ハルベスタの喉が緊張でごくりと鳴る。

 背筋がちりちりと焼けつくよう感覚が彼を襲う。



 少年の腕には一人の少女が抱かれていた。 

 鼻や口からは流れる赤い血液が、蝶の放つ淡い放り光で照らされる。



「ありがとうシンデリカ。お前のお陰だ…」


 少年は、腕に抱く少女に呟く。

 そして、灰色の瞳をハルベスタに、向けた。


 コツン、と彼はまた一歩を踏み出す。

 悠然と魔族に向かって歩いていく。


 ロンドを恐怖のどん底に陥れ、300人もの黒騎士を従えるハルベスタに向かって、何の戸惑いもなく距離を詰める。まるで恐れも何もないとでもいうように。



 ……ジーク・ヴァルライドを勇者と呼ぶのなら、やはりその少年は勇者には成りえないのだろう。


 誰よりも強い少年は、恐怖も恐れも分からない。

 勇気が恐怖や恐れを乗り越えた先にあるならば、彼がその本質を理解することは決してこない。



「き、貴様はなんだ?」


 でも、だからこそ、


「アレイン。……ただの最強で、いつか世界を救う男だ。お前の全部を壊しにきた…!」


 ――――最強アレインは全ての悲劇を壊せるのだ。

 


 世界を救って、といつかどこかで誰かが言った。

 力しかない少年は力の意味を約束に求めた。


 だから。

 だから―――。

 



 剣をとれ。

 そして誰かを救うために。


 拳を握れ。

 そして世界を救うために。 

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