第26話 おばちゃん聖女、初体験する
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お盆週間終了です!ありがとうございました!
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「そのうち起きるでしょう」
背の高いタンスの上から、白虎の姿に戻ったタカオが飛び降りて来る。
「タカオ」
「何ですか和代様」
「今日一日あんた猫な」
「何故です?!」
「ミラちゃんの事雑に扱ったからや。あと可愛かったし。猫の姿」
「う……わかりました……」
アルターリングを使い、再び白猫の姿になるタカオ。
和代に有無を言わさず抱きあげられ、スリスリされている。
「和代ちゃん……猫を抱っこしたかっただけじゃろ……」
「エリちゃん黙って」
「こほん……さて、次は和代ちゃんの装備じゃが……」
「はい!いります!ありがとうございます!」
すぐさまタカオを放り出し、エリディセラルナの元へ近寄る和代。放り出されたタカオは足音もなく、見事な着地を決めている。
エリディセラルナが、改めて取り出したのはミラの時と似たような袋。
「その中にうちの装備が?!」
「そうじゃ!期待してええぞ!」
「期待してるでエリちゃん!!」
そうしてエリディセラルナが取り出したのは、くすんだ白いローブとブーツ。
「これは?」
「これは認識阻害のローブじゃ。ミラのと色違いじゃな。ブーツは遮音のブーツじゃぞ。ミラとお揃いじゃ」
「うちもかくれんぼの達人の仲間入りやな!」
「うむ」
「ほんで?」
「うむ?」
「これだけ?」
「うむ。スパイダーシルクの下着類ならあるぞ」
「そうやなくて」
「うむ?」
「何やカッコいいジャケットとか、シュッとしたスカートとか無いん?」
「うむ」
「うむしか言わへんやん!」
「いや、和代ちゃん。正直お主の着とる服な?その派手な花柄の」
「このカッパか?」
「うむ。それの性能が良すぎてじゃな…」
「そうなん?!これ商店街の福引で当たったやつやで?!五等や!!!」
「う、うむ…。それでじゃな、今のところ、その上にこのローブを羽織るのが、一番強いんじゃ……」
「そうなんや……」
「じゃ、じゃがな?!」
「なになに?!」
「一つ、用意した」
「なになになにっ?!」
「その昔、神獣と縁を結んだ人間たちは、特別な戦い方をしたんじゃ。のう、タカオ殿?」
「ええ。霊装ですね」
「何それ!」
「神獣と、神獣と縁を結んだ人間たちは、それぞれの相手と合体して限界を超える力を引き出したのですよ……」
「えぇー?!何それ!うちとタカオが合体してまうって事ぉ?!!!」
「……まぁ、そういう事ですね……」
「ひゃー!!うちが可愛なってまうやんかー!!!知らんけどー!!!」
「可愛くはなりません!かっこよくはなります!」
「ごめんごめん!言い直すわ!……こほん……ひゃー!!うちがかっこよなってまうやんかー!!!知らんけどー!!!」
「……何の時間じゃ?これ……」
「そういう時、わりとありますよね……」
「うわぁ!!ミラ!起きとったんか?!老骨を驚かすでない!!」
「あははは、すみません……。まぁ、エリちゃん見た目幼女ですけど……」
「言うでない!……こほん。和代!それでじゃ!」
「はいっ!」
「霊装具……というものがあるんじゃが……」
「邪神との戦いの中で失われてしまいました……」
「……そうなのじゃ……。じゃから、ワシがちょっと再現してみた!」
「なんと!」
「そんなん出来んの?!」
「うむ。まだ不完全じゃが……良ければ一度使って貰いたいんじゃ……」
エリディセラルナが和代に差し出したのは一対のピアス。
「これはの、さっきピッケに渡したリンクチャームと同じ原理なのじゃが、お互いの思いを通じ合わせて力に変えると言うアイテムなのじゃ。霊装具が失われた今、何を媒介にすれば良いのか悩んだのじゃが……」
「想いの力……ですか」
「そうじゃ。タカオ殿。……しかしこれには欠点もあっての……」
「なになに?」
「うむ……基本になっている素材がの、今ある中では最適なんじゃが……どうにも不安定でな……。平静で居られる普段なら良いのじゃが、戦闘で気持ちが昂っている時だと特にな……」
「どうなんの?」
「信頼の欠如が大きな痛手となる……。つまり、相手を信じられなくなっている時に戦闘やら緊張が続く状況になるとじゃな……」
「なると……?」
「どちらかが暴走する」
「は?」
「……じゃから、暴走じゃ」
「どう言う事?」
「うむ。最悪、目に見えるもの全てに攻撃をしかけ、蹂躙する化け物になってしまう」
「へ?!」
「それは……!!」
「やめましょう!……ダメですよ!そんなリスク負う必要はありません!」
唇を噛み締めながら訴えるミラ。
「ミラちゃん……」
「ミラ……」
「ピ……」
「……そうやな。それはあかんやつや……。やけど、一応貰っとくわ!エリちゃん、頑張って作ってくれたんやろ?うちとタカオが仲良かったら問題ないんやろ?なぁ!タカオ!……うちのこと、信用出来んか?!」
ふわりとタカオが和代の側に来る。
「そんな事、あるわけ無いでしょう」
「ふふ、せやな。……エリちゃん、その装備、貰っとくわ!」
「和代ちゃん、タカオ殿……」
「うちらの事、ナメたらあかんで」
「よし。……その覚悟、受け取った。こちらへ来い。ピアスを付けてやろう」
「和代ちゃん!エリちゃん!!」
「ミラ、大丈夫じゃ。もしあかんかった時は、お主が助けてやれ」
「……ふぇ?!……私が……ですか。……あは、あはは……覚悟、決めろって事ですね。……わかりました。皆さんがそうおっしゃるなら、どこまでもついて行きますよ」
「ピィ……」
「よぉし、和代、ピアス付けるぞー!」
「あ、ちょっと待って?あれ、ピアスて耳に穴空けるやつやんな?!あれ?そうやんな?え?穴空けるやつ?!ちょちょちょちょ」
「どうした?」
「いや、耳に穴空けるとかあれやん。親に貰った身体に?!穴空ける?!え?!いや、あれ?!」
「もう終わったぞ?」
「ふぇっ?!!!あれ?!痛く無い?!」
「うむ。魔法でやったからの。痛くはないぞ?」
「え、そんなもん?!」
「うむ。どうじゃ、見てみては」
「へぇっ?!!」
渡された手鏡を恐る恐る覗き込む和代。右耳にキラリと深い青緑色のピアスが光る。
「え、うち、ピアス初体験やけど、意外と良いやん」
和代が色んな角度から見ていると左耳に同じピアスを付けたタカオが和代の膝に飛び乗って来る。
「うわ!」
構わず和代にスリスリするタカオ。
「びっくりしたやんか。……タカオもピアス付けてんな。これで、一緒に頑張ろな?」
タカオを抱きしめて告げる。
「我は和代様と共に……です」
「……私も……ですよ」
「ピィィィィ!!」
「あはは、嬉しいなぁもう!」
「ふふふ。良い仲間じゃのう!!!」
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