王室教室物語〜プリンセス、授業のお時間です〜

七執亜郎

第1話 「フィナンシェでもいかが?」

姫さま〜!!!ひ〜め〜さ〜まぁ〜!!!

どちらにおられますか〜!!!!


男の大きな声が響く。

ドタバタ、ドタバタ、ドタバタと足跡が聞こえる


姫さまぁ〜!!!!


バンッ!!


「姫様!!ハァハァ…此方にいらしたんですね…」


男は少女を見つけるとホッとした顔でそう言った。


「まぁレオナルド、そんなに息を荒らげてどうかしたの?ショートブレッドでも食べる?それともフィナンシェがよろしいかしら?」


少女は男の焦りなんてなんのその、

少女は腕に産まれたばかりの竜種の赤子を抱いて優しく微笑む。


それも聖母マリアの如く慈愛に満ちた表情で。


「それどころじゃないんです!姫様!

王室教室に転校生が来るんですって!!」

「まぁ面白そうね、どんな人?ゴースト?ゴブリン?エルフの方かしら!まって、言わないで、当てたいの、えっと…そうね、鶏人間ね!きっと!!」

「姫様、全部違います。あと鶏人間なんて存在しません。」


少女は饒舌になり己の空想話を広げ始める。

それをいつもの様にレオナルドと呼ばれる男が呆れた表情でため息を1つついた。


おっと、紹介が遅れた。


この不思議な少女の名はミラ・アゼルブルー

ブルースカイ王国の次期女王候補であり、

高潔なる純血のプリンセスである。

趣味は竜種と戯れることとレオナルドを揶揄うこと


アゼルブルー王国は竜種と共に過ごしてきた

この大陸で最も歴史の長い王国である。

それ故か古い価値観が根付いており、

男尊女卑的思考や新しいものを毛嫌いする者が多い


前国王夫妻が亡くなってから情勢が不安定になりつつある王国だ。


解説が少し長くなってしまったな、話を戻そう。


「鶏人間が居ないならあなたが鶏人間になればいいって話だったかしら?」

「違います、姫様。あと私は鶏人間になりません」

「まぁつまらないわ。 フィオナなら作ってくれるのに…」

「確かに隣国のフィオナ姫なら作れそうではありますが…ではなく!明日の授業の準備は済ませたのですか?明日は歴史の小テストでしょう?

これ以上成績を下げてたらお昼のフィナンシェもジュースも禁止ですからね!」


少女ミラはまぁイジワルね、と一言。

これも幾度となく繰り返された会話で、

ミラにとってはこれも日常の一幕に過ぎない。


「お母上とお父上が知ればなんて言うか…」

「……!そ、そのことは関係ないでしょう!」


いきなり大声を出したことで腕の中で眠っていた竜種の赤子が目を覚ましたようだ。


グアァ、グアァ、グアアァ!


「ご、ごめんなさい。驚いたわよね。」


ミラが頭を優しく撫でると竜種の赤子は先程の落ち着きを取り戻す。


「とにかく、明日のテストはきちんと受けてくださいね。姫様はやればできる子なんですから。」


「……そうね。明日は行くわ。ちゃんと。」



少し暗い表情を見せながらも頷いた。



五つの王冠が一同に決する時、

世界は有り得ざる奇跡を引き起こす。

それは祝福か、はたまた呪いか…



見届けるは1人の少年。さぁ…運命はどちらに?
















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