第29話 降臨!ゴリラ神!!
「みんな、無事かい!?」
エルン村を後にしたグラン・ノーラたちは森の外へ向かって走っていた。
「全員無事だ。しかし、本当に大丈夫なのか?」
「ミリアンナ様が心配じゃ……」
村人たちが不安げに見上げる視線の先に、禍々しい紫のオーラを纏った幻影のドラゴンがいる。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」
森の木々よりも巨大な神の化身。
その咆哮は、森の木々を震わせ、地を這うように広がった。
「森が……炎が揺らいでいる」
ドラゴンという存在。
その圧倒的なオーラ。
百戦錬磨の戦士であるグラン・ノーラも初めて見る光景だった。
「ミリアンナ……」
グラン・ノーラはミリアンナを信じた。
ミリアンナが信じた男を信じると決めた。
だが不安がないワケではなかった。
「グガァアアアッ!?」
「デーモン!? あの咆哮に呼び寄せられたのか!?」
森の外から、大量のデーモンが現れた。
デーモンたちは森の中心……エルン村に向かって一目散に駆けていく。
普段なら人間をみかけたら必ず襲うと言われているデーモンが、今は人間には目も向けない。
「うわっ!?」
唐突なその混乱の中、一人の老人がデーモンに虚を突かれた。
デーモンは人間を狙って現れたわけではなく、ただエルン村に向かうのに邪魔だという理由だった。
横から突進するように、老人に激突する。
邪魔されたことに苛立つように牙を剥く。
「おじいちゃん!!」
リーファの悲鳴が森に響いた。
その瞬間、リーファの片目が淡い緑色の光を放ち、デーモンの動きがピタリと止まった。
一瞬だけ、まるで時が止まったかのようにデーモンはその場で硬直し、バタリと倒れた。
「い、今です! 逃げてください!」
リーファの声に老人は我に返り、立ち上がり走り出した。
「リーファ……!? あんた、その目は……!!」
「……っ!」
グラン・ノーラはその光景を横目で捉え、目を見開いていた。
リーファがバツが悪そうに眼を伏せる。
その口元が微かに動きかけたが、すぐにそれを堪え、リーファの手を強く引いた。
「……リーファ、今は逃げるのが先決だよ! なぁ? あたしらは何も見ていない」
「あぁ、助かったぜ! お嬢ちゃん!」
「は、はい!」
「みんなも逃げるよ! デーモンに気をつけな!!」
グラン・ノーラたちが森の出口に辿り着いたころ、森をこれまでとは全く違うオーラが駆け抜けた。
「この気配は……!?」
振り返れば、森は異様な光景に包まれていた。
巨大な紫色の禍々しい幻影竜が、その身をうねらせながらけたたましい咆哮を上げている。
そして、そんなドラゴンに立ち向かうように、眩い銀色のオーラが立ち上がっていた。
巨大で逞しい肉体を象ったオーラの巨人。
それはドラゴンすらをも圧倒するほどの輝きを放っていた。
「お、おぉ……!」
その光景をみたグラン・ノーラは息を呑んだ。
老いた瞳が驚愕に揺れる。
「あれは……まさしくエルンの龍脈の力……! 龍脈の真の輝き……!!」
グラン・ノーラの声は震えていた。
それは単なる力の覚醒ではない。
エルン村、ひいてはこの地の運命すら左右するような……神聖な力の顕現である。
グラン・ノーラは森の奥で繰り広げられるであろう戦いが、神話の領域に足を踏み入れる激戦となることを予感して震えた。
「ミリアンナ、ついにあの力を目覚めさせたんだね……!!」
◆ ◆ ◆
「力が……溢れてきます……!!」
紫色の瘴気を吹き飛ばし、幻影のドラゴンすらも揺らがせるほどに圧倒的な輝きを放つ銀色のオーラ。
その中心にミリアはいた。
ミリアが腕を振り上げると、銀色の巨人も同じように巨大な腕を振り上げる。
「これで、どうだぁーーーーっ!!!!」
ミリアにシンクロして、オーラの巨人が拳を振るう。
――ボッッッッ!!!!!!!!
俺たちには捉えられなかった幻影の体を、オーラの拳が捉えた。
ドラゴンの体がグラリと揺らぐ。
「よしっ、効いてる……! いけるっ!!」
「ギャオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」
ドラゴンが抗うように叫ぶ。
すると周囲の森からデーモンたちが現れた。
「こいつら、まだこんなに残党が居やがったのか!?」
ドラゴンが幻影で操ったのだ。
デーモンたちは一直線にミリアに向かっていた。
オーラではなく、その足元にいるミリア本体を狙っている。
「くっ……」
足元を薙ぎ払おうとしたミリアの動きが止まる。
巨人の力を地上に振るえば、エルン村を破壊することになる。
その一瞬の戸惑いが敵の狙いなのだろう。
「ギシャアアアアッ!!!!」
デーモンたちがミリアに襲いかかる。
――バチィ!!
そのデーモンを電撃が貫いた。
「ミリア! 雑魚は任せろ!!」
「ご主人様っ!!」
俺はデーモンを蹴散らすように羽を放った。
電撃は最大出力だ。
人間相手じゃないから手加減も必要ない。
羽も全て攻撃用に展開させる。
「散りやがれっ!!」
――バチバチバチバチィ!!!!
強烈な音と眩い電光が、ミリアを取り囲むデーモンたちを一瞬にして焼き尽くした。
野太い悲鳴を上げる暇もなく、デーモンたちの体がパチパチと音を立てて炭化し、黒い灰となって霧散していく。
雷撃が地面を焦がし、あたりには焦げ付いた匂いが充満した。
「ミリア、あのドラゴンをぶっ飛ばせ!!」
「はいっ、ご主人様っ!!」
ミリアの周囲からデーモンが消え去り、その視界が開ける。
ミリアの瞳は澄み渡り、そこには迷いも恐怖もなかった。
ただ純粋な決意と、目の前の敵を打ち砕く強い覚悟だけが宿っている。
「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
「ギャオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」
ミリアが咆哮を上げると、その声は村中に満ちる邪気を浄化するかのように力強く響き、幻影竜の轟音すらもかき消した。
その姿はまるで……闇に抗い光をもたらす聖なる守護者ようだった。
ドラゴンが蛇のように姿を変え、ミリアのオーラにまとわりついた。
拳を振るわせまいと締め上げようとする。
巨大な口を開け、鋭い牙を突き立てようとする。
――グシャァッ!!
ミリアのオーラはそんなドラゴンの顎を掴み、握りつぶした。
「この村を……っ!!」
――グシャァッ!!
まとわりつく体を掴み、握りつぶした。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオン!?!?」
幻影のドラゴンが悲鳴を上げる。
その顔面に、ミリアが拳を叩きこむ。
「返せぇぇぇぇええええええええ!!!!!!!!」
――ドッゴォォォォン!!!!
ドラゴンの顔面が砕け散り、吹き飛んだ。
崩壊した部分からオーラが溢れ、幻影が形を失っていく。
オーラと共に森の炎も消えて霧散していく。
残ったのは静かな森と、ボロボロに破壊された本来のエルン村の姿だった。
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