第3話|謎のメモとスーパーのチラシ

 昼前に目が覚めて、ちゃぶ台に向かう。

 特に予定はない。特にやる気もない。

 でも今日はなんとなく、何かを作って食べようかな、と思った。


 すると、ちゃぶ台の上にメモがあった。


 『今夜はカレーが安い』


 ふにゃっとした字で書かれていて、下には例のまんまる足跡スタンプ。

 あのモフの仕業だというのは、もう疑う余地もない。


 「……誰に向けた情報なんだよ」


 言いつつも、そのメモの下に、きっちりスーパーのチラシが添えられていた。

 それも今朝の日付のやつ。いつの間に持ってきたんだ。


 まさかと思いつつチラシをめくると、そこには


 > 『本日限定!国産カレールウ各種 78円(税抜)』


 と、しっかり赤マジックで囲まれていた。


 「……マジかよ」


 ついでに、じゃがいも・にんじん・玉ねぎも、ほぼ揃って特売。

 買うしかない。まんまと乗せられている気がするけど、買うしかない。


 ――その日の夜。

 久しぶりに包丁を握り、台所に立った。


 具は少し多めに切っておいた。どうせ明日も食べるし。

 煮込みながら、ちょっとだけ鼻歌なんか出たりして。


 そして、夕食。


 「……うまっ」


 思わず声に出てた。


 レトルトとは違う、ちゃんとした味。

 たったそれだけのことで、少しだけ満たされた。


 ふと、ちゃぶ台の端を見ると、モフモフのしっぽがひょいと消えた。


 ――ありがとう、くらいは言っても良い気がしたけど。


 代わりにもう一本、うまい棒(サラミ味)を置いておいた。

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