第3話雑用係、毒を盛られる

 朝日の日の光が部屋に差し込んできて、私は目が覚めた。

目を覚めてやることは一つ。

昨日、処理しきれなかった書類を朝のうちに片付けることだ。

片付けないと、日中には昨日と同じ量の書類が私の部屋に届く。


朝から憂鬱な気分になってしまう。

毎日毎日書類が追加されていくと……


「はぁ……」


ため息を付いて心の中の感情を殺して書類の処理に励む。

普通の人だったら朝起きたら顔などを洗いに行き目を覚ますが、わたしの場合だと顔を洗いに行く時間すらなかった。


ー1時間後ー


大体一時間ほどで昨日残った書類を片付けることができている。

最初の方はもっと時間がかかっていたが今はだいぶ早くなったほうだ。

私は椅子に座りながら背伸びをした。

なんだか、昨日の疲れが取れてないのか今日の疲れがもう出てしまったのかわからなかった。

体を少し動かすと関節の節ぐしがボキボキなった。

この音は、体にどのような影響を与えているのだろうと私は毎回鳴らすたびに思っていた。


ドアノブに手をかけた瞬間、ドアが勢いよく開いて——

「痛っ!」

鼻を押さえて座り込む私の前には見覚えの無い男が立っていた。


「ごめんなさい。ドア近くに人がいるとは思わなくて……」


「それは、私もよ」


鼻を押さえながら言った。

一番ダメージを受けたのは鼻だった。

人生で感じたこともない痛みに襲われていた。


「で?どちら様ですか?」


「あぁ!すみません。私アルペリカ団長の部下のキシタといいます。ちょっとお話があるので訪問したのですが……もしかしてこれからお出かけですか?」


私の置かれている立場を知らないような言い方をした。


この雑用係がお出かけなんてできるはず無いじゃないですか!……お出かけしたいものなら今からでも行きたいですよと思いながら言った。


「そうですか、お話ですか。でお話とは?」


「王から命令された黒竜についてです」


「あぁ、そういえばそんな話もありましたね」


キシタは驚いたような顔をした。

どこに驚く要素があったのだろうかと思っているとキシタは言った。


「とりあえず、アルペリカ団長からの伝言を簡潔に言いますね。『フラン殿、私の部下と他の神域メンバーは黒竜の討伐に不参加の予定だ』ということだそうです」


口の中に、苦いものが広がった。唇を噛み締め、視線を落とす。

「……わかりました。」

声が震えてなかったのが奇跡だと思った。


「いや待ってください。中で個人的に話したいことがあるんですよ」


「お話ですか……では、飲み物を持ってきていただけますか?その条件を呑むなら話し合いをしましょう」


「もちろんです!」


キシタは、子供のように素直な笑顔を浮かべて駆け出していった。

その背中を見送りながら、少しだけ——ほんのお少しだけ、心が軽くなった気がした。


私は部屋の中に戻り、キシタが来るまで書類を片付けようと椅子に座った。


数分後ー


ドアがノックされた。

私は「どうぞ」と言った。

キシタは少し高そうなティーカップを持ってきた。

思わず聞いた。

「そのティーカップどこから持ってきたの?」

「これはですね……私コレクションのひとつなんですよ。こんな見た目をして可愛いものを集めるのが好きなもので……」

「そう……」


確かに、キシタは見た目は筋肉がムキムキでできれば近寄りたくない見た目をしているが、こんなかわいいものを集める趣味があるのは意外な点だった。


キシタは真剣な眼差しになって言った。

「お話と言うのは『黒竜』についてです」

「……なんですか?私に有利な情報でも与えるつもりですか?」

「はい。黒竜の特性について教えようかと思いまして」

「特性?」


私は今まで勉強してきた中で黒竜に特性などあるなど聞いたことがなかった。

だから、キシタの話を半信半疑で聞こうと思った。

「繁殖期になると黒竜は攻撃的になるという噂を聞いたことはありませんか?」

「無いわね」

私は即答した。

「そうですか……聞いたこと無い。結構国中で有名な噂だと思うんですがね」


キシタは続けて言った。


「さぁ、紅茶お飲みになってください。最近手に入れた良い紅茶ですから」

「あら……そうなの?いただこうかしら」

私は、目の前に出された紅茶を手に取り口に運んだ。


……口に含んだ瞬間、舌の奥にピリピリとした痺れが走った。

咄嗟に置こうとしたカップは、手の震えで滑り落ちる。

視界が揺れて、脚に力が入らなくなった。

「っ……なに、これ……?」


「あーあ……僕のお気に入りのティーカップが」

キシタが落ちたカップを眺めながらため息をつく。

その顔は、さっきまでの朗らかさとは違う、冷たい笑みだった。


「これは、猛毒を紅茶に混ぜたんですよ。すべて、団長の指示でね」


意識が薄れていく中、私は確信した。

……これは追放なんかじゃない。処分だ。


――やっぱり、私は最初からいらなかったんだ。


あとがき


今回もお読みいただきありがとうございます。

三話目はもっと展開を早めて書こうかなと思いましたが、少し一段落置いてからのほうが良いなと思い次回はついに「黒竜』との戦いを書こうと思いますが……非常に書き方が難しいと思っています。

どんな展開に持っていこうか少し悩みどころではありますが、次回もお楽しみにしていてください。


次回からの更新は金曜日の21時以降に固定しようかなと考えています。

金曜までに間に合わない場合は、事前にお知らせいたします。


では、また会いましょう。  by天使の羽衣

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