第15話 ばあちゃんの知恵?田舎の陰陽師

数年前、陰陽師を主人公にした物語が流行った。

その内容を見ながら思ったのが、母方の祖母の逸話の数々だった。

(私が生まれた時には、既に喜界に入っていたので

祖母に合った事は無い。)


祖母かつ子は、実の親との縁の薄い人であった。

自身の母方の祖母に、嫁入り前まで育てられたそうだ。


私の、曾祖母に当たる方は(江戸時代生まれ)女で一つで

一地方の芸妓で身を立てながら、

自身の娘の子の、かつ子を高等女学校まで出した。

当時、女性の識字率は低かった。

「女の子に知識を着けさせたら、ろくな事にならん。」

と、言われていた時代だ。


かつ子は、本を読み、詩を書き、文筆もしていたようだ。


この、かつ子さん。

色々なモノが見えた人だった。

誰に教わったのかは、わからないが、憑き物を払ったり

”悪いモノ”を寄せつけない”おまじない”だったり

”悪いモノが寄らない”お札などを

自分の家族にだけ、施していた。


小さい子供の”かんしゃく”は

”かんしゃくの蟲”が体内に湧くから、”出して”やらないといけない。

そこで、その”蟲”を出す、”まじない”を

母が小さい頃に、よくされたそうだ。


手のひらを広げて、爪を上に向ける。

そして”まじない”を唱えながら、指の一本一本を根元から

しごくように、爪に向かって順送りに、優しく何度もさすってやる。


すると、爪の隙間から、細い細い糸のような”蟲”が

するすると出て来て、空へ空へと、登って消えていく。


蟲が出て来なくなるまで、指をさすってやると、

かんしゃくが暫く治まるのだ。


私には、その”蟲”は見えないけれど。

自分の子供のかんしゃくに手を焼いた時は

その”おまじない”をやった。


確かに、効いた!


口伝で教わったに過ぎない、

そんな田舎の、民間療法のような”おまじない”は

「痛いの、痛いの、飛んでいけ~。」

みたいに、今でもしっかりと、効果を発揮していると思う。


「痛いの、痛いの、飛んでいけ~。」

で、飛んで行った”痛いの”は

どこの行くと思いますか?


それは

お月さまが、食べるんです。

”痛いの”を沢山食べて、お月さまは太り、少ないと痩せるのですって。

祖母から、母がそう聞いたそうです。

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